第5話 教科書運びは重労働
教室に向かう途中…
「いやー、高校に入っても同じクラスになれて良かったなー」
龍が嬉しそうに言う。
「あぁ、そうだな…でもここまで一緒だと恐怖を感じるな」
俺がそう言うと理沙が
「また龍と同じクラスとかうるさくてしょうがない」
そう言うと、理沙は早歩きで教室に向かっていた。
何故か理沙は龍に対して冷たい。
まぁ、理沙がこう言うのも解らなくもない、俺達は中学校三年間同じクラスで小学校でも五、六年と一緒のクラスだったのだ。
「て言うか、結局何でお前は斎条美優と知り合いなんだよ」
龍が再度問い掛けてくる。
「さっきも言っただろ家が近いだけだよ、それと昨日の帰りに偶々話しかけられただけ」
「いや、何で話しかけられるんだよ、あの人学校一の美人で有名なんだぞ!!」
龍が声を荒らげる
成る程通りで今朝はあんなに視線を感じたのか。
「今朝、妙に視線を感じたのは、先輩への視線だったのか」
俺がそう言うと
「いや、あれはお前への、厳密に言うとお前と斎条美優への視線だよ」
と、龍が訂正する。
「何でだ?」
俺が疑問に思っていると、さらに龍が訂正し、
「あの人、人気者だけど他人と話さないんだよ、だから珍しがってたんだろうな」
と言う。
そ、そうなのか。
そうこうしていると、一年三組、俺達の教室に着いた。
黒板には「「好きな席に座ってねー」」とだけ書いてあった。
窓側の一番後ろの席が空いているのでそこに座ると龍も俺の隣の席に座る、
既に席を選んだ理沙だけ離れた席になってしまったが…
すると、チャイムが鳴り教室前方から先生が入ってくる、
この人は天音一葉、俺達の担任で美術教師だ。
「おーい、ホームルームを始めるぞー」
ホームルームが終わりかけたとき先生が俺と龍の方を向きこう言った。
「赤塚と和泉、ホームルームが終わったら先生の所に来てくれ」
「俺!?何で!?」
と、声を上げる龍とそれを離れた所からバカにするかの様に見ている理沙がいた…
ホームルームが終わり先生の所に行く
「せんせ~何ですか~?」
そう龍が聞くと、
「あー、職員室から教科書を運ぶのを手伝ってくれ」
先生はそう言った。
一年の教室が有る校舎と職員室の有る校舎はかなり距離があるのだ。
て言うか、まぁた何か頼まれるの俺?
職員室から教科書を運ぶ途中…
「て言うか、何で俺達が運ばなくちゃいけないんですか?」
俺がそう聞くと先生は、
「えー、先生こんなの重くて持てなーい」
と、か弱そうに言っている。
「そうじゃなくて、何で俺達何ですか?って事ですよ」
再度そう聞くと、先生は
「ん?何となくだな」
と、答える。
何となくでこんな面倒臭い事をさせられてんのか俺達は…
そんなことを思っていると、教室に着いた。
「教科書は教卓の上に置いてくれ」
そう言われ、俺と龍が教科書を教卓に置き、席に戻ろうとすると先生から絶望の言葉が発せられた。
「あと、三周だな!」
そして…
全ての教科書を運び終えた頃、手足をパンパンにして疲れはてた俺と龍を離れた所からザマァ見ろと言わんばかりに嘲笑う理沙を見てしまったのだった。
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