第2話ご都合主義は突然に

しばらく彼女の洋服選びに付き合わされ、

かれこれ二時間は経ったのだろうか?店にある時計は夕方の六時を指していた。


「そろそろ切り上げましょう」

彼女は俺にそう告げた。

やっと終わるのか、そう思うと妙に落ち着いた気持ちになる。

結局、彼女が喜んでくれたのは最初の一着だけで、後はセンスが無いだの、ダサいだの、可愛く無いだの、罵詈雑言の嵐だった。


て言うか、それって言い方変えてるだけで、全部同じ意味ですよね先輩?


しかし、この言い方だと俺が彼女を喜ばしたかったかのように聞こえるかもしれないが、断じてそんな事は無い!


勘違いしないでよねっ!


そんな俺の両手には紙袋がぶら下がっていた。


「家まで送りますよ、もうすぐ暗くなりますし」

我ながら紳士的な発言だ

「ありがとう、どうせ家までの道も分からなかったし、それに自分で言うのもなんだけど

私、結構な方向音痴なの」

そう言うと彼女は安心しきった顔をしている

「家は何処にあるんですか?」

そう聞くと、

「ニューディールと言うマンションなんだけど」

彼女は答える。


何処かで聞いたことのあるマンションだと思ったら、驚いた事に俺の住むマンションと同じだったのだ。


「あー、そこなら僕と同じマンションですよ、此処からなら十分位ですね」

すると、彼女は一瞬驚いたような顔をしたが、微笑んで

「偶然ね」

そう言った。


夕焼けに染まった空を背に暗くなった道を歩く。


少しするとマンションに着いた。


「何号室ですか?」


俺が部屋番号を聞くと彼女はすんなりと答える


「113号室よ」

エントランスから比較的近い部屋だ

荷物があるので部屋の前まで同行する。


「ありがとう、助かったわ」

彼女は礼を言うとドアと向き合いドアノブに手を掛ける、

すると突然、何かを思い付いたかのように振り返りスマートフォンを差し出しこう言う。


「そうだ、LINEを交換しましょう」


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