第2話 あまり関わりたくありません

「・・・・・」


予感が全て的中した。それも悪い予感ばかりだ。


「・・・引っ越す予定はあるか?」


「い、いきなりですか? 失礼ですね」


「他に言うことあるでしょ?」


「お隣さんよろしく!とかね」


正直に言おう。すごくめんどくさい。なんで新居がよりによってこいつらの隣の部屋なんだ? 宝くじ当てるより可能性は低いだろ。


「そういえばまだ名前聞いてないよ?」


「ああ! 私も!」


「ああ。そういやそうだったな」


こいつは・・・ 玲菜だっけ? あの時名前を言わなかったんだな。あと・・・ 陽菜だっけ? こいつにも言ってないか。


「まあ・・・ お前らに言うつもりはない。あんまり俺に関わるなよ? しゃあな」


俺にしては長話をしてしまった。もはや疲れた。帰って寝ることにしよう。


「え〜⁉︎ な、名前は⁉︎」


「もう帰るのですか?」


「もっと話そうよ〜!」


「・・・・・」


俺は無視して部屋に戻った。俺は人と関わるのが苦手だ。失敗をしないためにも必要最低限の関わりしかもたないことにしている。


「なんとも落ち着かない環境だなぁ」


新居は早々にも荒波の中を突っ走っている。


■◆◇


プルルルル・・・ プルルルル・・・


「ふわぁ〜 おはよう」


目覚まし時計の音で俺は起きる。


「ああ・・・ 誰もいねえか・・・」


そういや今日から1人暮らしだった。朝、誰もいないというのは嬉しくも悲しい・・・


ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。


さっきからインターホンが鳴りっぱなしだ。無視していたらいずれ鳴らなくなると思ったのだが。考えが甘かったか。


「お〜い! お〜い! 起きてる?」


この声は・・・ 誰だ? 全然わかんねえ。


「はぁ〜 起きてますけど・・・」


「あっ! やっと出たじゃん! 玲菜? 優菜? 出たよ〜!」


うるせ〜・・・ こりゃあ選ぶ部屋を間違えたな。


「おお〜! 起きたね〜!」


「おはようございます。加賀くん」


「・・・・・」


うるさいのが1人いるだけで大変なのに3人とは・・・


「あれ? 加賀っていうの?」


「へぇ〜 優菜よく知ってるね」


「まあ一応席が横ですから・・・」


そういやこいつは席が横だったっけか? 記憶から消したいくらいだな。


「へぇ〜 運命だね」


「ば、ばかなこと言わないで下さい!」


「照れちゃって〜 まったく〜」


「こら! 玲奈? あんまり優菜をいじめないの!」


「ふふふ。お姉ちゃんの優しさよ❤️」


「いや、三つ子なんだから・・・」


「と、とにかくこの話はやめましょう!」


うん。俺部屋の中に戻ろう。


「あ〜・・・ わざわざ挨拶どうも。じゃあ・・・」


「もう帰っちゃうの〜? 相変わらずせっかちだね?」


「加賀くんにはコミュニケーション能力がないのですか?」


「もっと話そうよ〜!」


「・・・勝手に言ってろ」


俺はドアを閉めた。週末の朝から波はおさまりそうもないだろう。



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