第1話 お前は誰だ?
中学校。それは誰もがさけては通れない道。なぜ行かなければならないのか。なぜ勉強しないといけないのか。俺には到底理解不能だろう。
「義務教育? ふざけてんのか? 中学の何が楽しいんだ?」
なんてことを俺は小学校の頃、毎日口にしていた。そして入学式の日・・・
「え〜・・・ 1年1組! 加賀直斗!」
「は〜い」
ここは私立中学。なんでも理事長がやばいという評判の中学だ。
俺は昔から人と何か違う。かしこい? そんなものじゃない。天才だった。もちろんこの中学にもトップの成績で入っている。
「あ〜あ・・・ つまんねえの」
暇なことったらありゃしない。名前を呼ばれて舞台に上がる。それを永遠と繰り返すのに何の意味があるのか。
「ふふふ。せっかちな子だね?」
「あん?」
ふいにしゃべりかけてきた子がいる。背は中くらい。長い髪の整った顔。真っ直ぐな目。
「お前は誰だよ?」
名前も知らない。訳のわからない子にしゃべりかけられたもんだ。
「私? 私は桜玲菜。よろしくね」
「そうか。じゃあな」
俺は早々に立ち去ろうとした。
「え? い、いやいや。あなたの名前は?」
「ああ。わざわざ言う必要もねえだろ?」
「い、いや。普通言うでしょ・・・」
「ま。俺は普通じゃないんでね」
「そ、そうみたいだね・・・」
名前を聞いた。そう。それだけだ。なにも俺の名前を言うとは一言も言っていない。
「ちなみに・・・ 私も他とはちょっと違うんだよ?」
「そうか・・・」
俺は依然として興味がない。初対面で俺にこんなに話しかけてくるやつは初めてだ。むしろ対応に困る。
「私は玲菜だよ?玲菜。ちゃんと覚えといてね?」
「・・・・」
興味を示さない俺にこんなにしゃべりかけてくるとは。こいつはもはやプロだな。
「はぁ〜 やっぱり中学校は嫌いだ」
■◆◇
「え〜っと・・・ 俺が今日からこのクラスの担任だ。よろしく」
クラス分け。それはこれからの中学校生活を左右する大事な分かれ道だ。もちろん俺には何の関係もないことだが。席替えもその一つに入るだろう。
「へぇ〜 君は加賀くんというのですか。どうぞよろしくお願いします」
となりに来たのはなんともおしとやかそうな顔の礼儀正しい女の子。さっきのやつとは大違いだ。
「お前は・・・ 桜優菜か。よろしく」
なんとも偶然。さっきのやつと苗字が一緒。一瞬双子だなんて悪い妄想にかられた。まさかあんなやつとこの子が双子なわけがないな。
「優菜。優菜ですよ? 覚えといてくださいね?」
このフレーズ流行ってんのか?
■◆◇
下校の時間。帰り道はクラス替えだの席替えだの初めての中学校の話題で盛り上がる。もちろん俺は1人で帰る。そう。あえて1人で帰ることによって落ち着きと集中力を高めている(実際は友達がいないだけだが)。
「ふぅ〜 今日から一人暮らしかぁ・・・」
俺は中学生にも関わらず一人暮らしをすることになった。親が今から自立する練習をなんて馬鹿げたことを言いだしたせいだが。まあ一人暮らしもいささか都合がいい。好きなようにできるしな。
「あれ? お隣さんですか?」
そう。一人暮らしではお隣さんが重要な分かれ道になる。こればっかりは俺も重要視している。
「どうも。名前は?」
みたところ中学生。俺と同じ年代くらいか? すこし茶髪の混じった髪に凛々しい顔。元気良さそうな感じだな。
「私は桜陽菜! 陽菜だよ? よろしく〜!」
苗字が桜。さすがにこれは・・・
「もしかして姉妹います?」
聞きたくなってしまった。俺はなるべく人と関わることを避けているんだが。
「ふふ〜ん。当たりだね!」
「よくわかりましたね?」
後ろから声がした。
「そう私たちは・・・」
声を揃えて言う。
『3人で一つ! 三つ子です!』
「・・・・・」
マジか・・・
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