【番外編】智の恋


「ん?」


「私のお家に行きますか?」




あの言葉をきっかけに俺は美咲さんの家…いや、美咲さんのお兄さんとの戦いの場に向かうこととなった。


「智くん、緊張してる? 無理してない? デートの予定だったし、行かなくても大丈夫だよ?」

行かなくても大丈夫…。ここで引き返す…。いやいや、智。美咲さんが不安な状態でデートしたって嬉しくないだろ!


「緊張は…してる。でも、お兄さんに認めてもらえるよう頑張るよ」


「智くん…。ありがとう…!」

カッコつけたはいいものの、どうやって認めてもらおう。俺はお兄さんより顔面偏差値低いし、勉強の方の偏差値だって低いだろうし…。絶対ピリピリしてるはずだから笑いとか、明るさで乗り切れる気もしないんだよなぁ。


「美咲さん」


「ん?」


「ちょっとズルかもだけど。お兄さんが認めてくれそうな感じってどんなの?」


「うーん…」

質問が大きすぎるか、難しいよなぁ。


「…お兄ちゃんより優れてる人?」


「…」


「お兄ちゃんよりー…ってあれ? 智くん止まってる!」

いやいやいや、あのハイスペックそうなお兄さんより優れてるって立ち止まりたくもなりますって!!


「え…。お兄さんより優れてる人…とは?」


「うーん、詳しくはちょっとわかんないけど…。きっと自分を超える人を認めると思うんだよね」


「…俺、無理じゃないっすか?」

イケメンハイスペック兄を超える人材ってどんな人だよ! 何でもできるんでしょ!? よく知らないけど。モテるんでしょ!? 一回しか話したことないけど! …あ、前にあった時俺に微笑んでたのって…。あれは牽制だったのか?


「うふふ、私は無理だなんて思わないよ! 智くんが私の中で1番輝いてるから。お兄ちゃんに智くんを見て認めてほしいんだ!」

…嬉しいけど、複雑です!!!


「ほんとに大丈夫かな…」


「やめてもいいんだよ?」

迷ってきたなぁ。


「えっと、一応着いたけどね?」


「へ?」

どこ、家。


「ここ、私の家です」


「え」

お兄さんとの戦いの場は俺が想像していたよりも遥かに大きな場所のようです…。

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