103話

「おーい、史人〜! 女子が呼んでるぞ〜!」

…山本さんかな? それにしてもあんな大声で呼ぶことないだろ。

「はーい」

ん? 誰…?


「あ、あの…」

「うん」

「えっと…」

告白かな。うーん、すごく緊張してるみたいだし好意はありがたいけど…長いなぁ。

「すみません、呼び出したりして…!」

おぉ、やっとしゃべったなぁ。昼飯食えるかな? いや、失礼だな。ちゃんと聞こう。

「いえ、何でしょうか?」

「えっと、私…好きで」

うん。やっぱ告白か〜。

「私、智さんのことが好きで…! これ手紙なんですけど、渡してもらえますか…!!」

おぉっと、俺じゃなかったー! うん、智ね。智。あ、でも智彼女さんいるしなぁ。いつも智に手紙断ってもらってるし…俺も断ってやるかな。

「えっと、智は」

あれ、彼女いるって言っていいのか? でも、断り方って…。

「だめ…でしょうか?」

おぉ、女子の必殺技“上目遣い”…。まぁ俺にはさくらのしか効かないけど。

「うーん。智は彼女いるから受け取れないや」

「え…。彼女いらっしゃるんですか」

おぉ、落ち込ませてしまった。でも、事実だし仕方ないな。

「うん、だから…」

「彼女いてもいいので渡してください!」

おいおいおい、強気にも程があるだろ!

「え、えぇー。俺はちょっと無理かな〜」

「渡してくれないと泣きます」

怖すぎかよ。

「んー。渡すだけね? 智彼女いるからね?」

「ありがとうございます! よろしくお願いします!!」

あー、行っちゃったよ。ごめんな、智。


「…ってなわけで、はい。これその女の子から」

「えー! 俺もモテることあるのかー! そんなやばい子だったなら受け取っちゃって正解だって、怖かったよな〜。何かごめんなー」

「いや、断れなくてわりぃ」

「いいって〜。せっかくだし読むわ!」

“初めまして、1年2組の斎藤雅です。突然ですが、智さんのことが好きです! 私とお付き合いして下さい! お返事頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。”

「おぉ、めっちゃドストレートだわ。放課後にでも返事してくるか!」

「マジ? え…フるよね?」

「まぁな。でも、傷つけないようにするわ☆」

「…流されて浮気とかやめとけよ?」

「なんで俺そんな信用されてないの!」

「ってか傷つけずにフるとか無理だろ」

相手は俺を脅すほど智のことが好きなわけだし。

「んー、できるだけ傷つけないよ。あと、俺が先輩を悲しませることするわけないだろ?☆」

「…おー、じゃあ頑張れよ」

「雑に扱うなよ〜」

「はいはい、頑張って頑張ってー」


さっきの子…えっと、斎藤さん。フラれたら辛いんだろうな、あんなに大好きそうだったもんなぁ。フラれてでも告白する勇気ってどこから出てくるんだろ…。俺も見習わなきゃなぁ。(脅したりはしませんよ?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る