第93話

「3人めっちゃ仲良くなったよな〜」

「そうだな、楽しそう」

智の言ってる3人とはさくらとゆみさん、山本さんのことです。

「山本さんもあんな無邪気に笑うんだな、かわいい」

「あー、そうだな」

「お、史人もそう思うか?」

「お前…彼女いるんだから、狙うとか言うなよ?」

「かわいいと思うのは自由だろ〜! 俺は先輩一筋だから心配すんな」

「ならいいけど」

「なになに史人くん、花ちゃんに心変わり?」

「は? 10年の片想いなめんなよ?」

「おぉ」

「そんな簡単に変わるかよ」

「おぉ…」

「アホ智」

「いや、ごめんね! ノリで言っただけだから! でも、ごめんね!?」

「俺は嫌いだ」

「うぉぉ! たくいたの? いつから!?」

「何か“3人めっちゃ仲良くなったよな〜”のとこから」

「最初からいたのね、俺のモノマネに悪意を感じるよ?」

「たく、嫌いって何が?」

「あの女子」

「え? 山本さん?」

「なんで〜、花ちゃんいい子だぞ?」

「ゆみが最近あの子の話ばっかり」

たく…女子にもやきもち妬くのか…。

「お、おぉ。仲良くていいじゃん!」

「今日なんて帰りに女子会って…。一緒に帰れない」

「1日ぐらい我慢しろよ〜」

うん。今日は智のほうがまともだな。

「我慢する。でも、あの女子は嫌いだ」

「山本さんも楽しい人だよ? 仲良くなれば楽しいって! その方がゆみさんも喜ぶんじゃない?」

「そうだよ、史人の言う通り!」

「…そうだな。でも、別に話すことないし」

「うん、皆で話すときでいいから」

「今度また花ちゃんの家お邪魔すればいいんじゃね? 皆で!」

「勝手に決めたら悪いだろ〜」

「あの女子がいいって言ったら行く」

「おぅ、言ってみるな? あと、たく。あの女子じゃなくて山本さんな?」

「わかった」

めっちゃ拗ねてるなぁ。そんなゆみさんと帰りたかったんだな。まぁ俺もさくらと帰る方が断然楽しい…ん?

「あれ? 今日ってさくら達3人で女子会?」

「あぁ、そうだ」

俺も1人で帰宅やん! いや、いいけどね。うん、いいのよ?

「史人もさくらさんとは帰れないぞ」

「うん、そうだね」

「史人〜、強がんなって」

「いや、1日くらい…」

「まぁ俺はバイトなんで先輩に会ってくるけどな☆」

「…智、むかつく」

「ごめんえ!? たくに言われると怖いよ!」

1日くらいさくらと帰れなくてもいいけど(俺彼氏でもないし)、智の言い方は俺もむかついたぞ。

「史人が黙ってんのもこえぇ! ごめんって2人とも!」

「あ、昼休み終わるわ。智席戻れば?」

「そうだぞ、授業真面目に受けろよ」

「ごめんってー、怖いよ〜」

「あはは、ふざけただけだよ。席戻れって」

「ちょっとむかついたのは本当だ。まぁ俺もふざけただけだ」

「も〜、怖かったわ。ってか次の授業も怖いわ! 智、席戻りまーす!」

たくのむかついたは割と本気っぽかったけどな…?

「帰りどっか寄ろうぜ。史人もさくらさんいなくて暇だろ」

たくからのお誘いレアすぎないか!?

「お、おぉ。行こう」

「映画、行こう」

映画…? 帰りに?

「帰りに映画行くの?」

「今日授業早く終わる日だろ」

「あー、忘れてたわ! なるほど…もしかしてゆみさんと?」

「うん。伝えないでサプライズ的に行こうとした」

「かっけぇな、たく」

「でも、失敗した。かっこわりぃ」

それであんなに山本さんを…。いや、山本さんは悪くないけどね。

「まぁ、暇だし。行くか!」

「よし。恋愛映画だけど、面白いらしいから行こう」

「お、おぉ。了解、行こうな!」

「うん、ありがとう」

「おぅ」


たくは怖いけど、モテる理由もゆみさんとラブラブな理由もなんとなく分かる気がするわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る