第33話

「君が好きだ 大好きだ」

俺はラブソングを聴くのが好きだ。この歌詞ストレートだけど刺さる。今聴いていたのは、初恋の女の子に告白する男の子を描いたベタベタのラブソング。ストーリー性のあるラブソングは物語を読んでいるみたいで楽しい。感情移入しながら聞いたりもする。いやー、どの曲もいいねぇ。

「…くん! ふーくん! お待たせ!!」

ハッ! 俺としたことが、用事のあったさくらを待っていたのに曲に浸り続けてしまった!

「何聴いてるの?」

「ん? あー、最近ハマってるやつ」

昔から好きなベタベタのラブソングとは言えません。

「えー! 私も聴きたい!」

「いや! いやー、帰るか!」

「聴かせてよ〜、じゃあ曲名! 曲名教えて!!」

「自分だけが知ってるってのも醍醐味な訳ですよ。教えてあげません!」

「ケチだなぁ。いいもん! 私もオススメの曲とか教えないようにしよ〜」

乗り切った。でも、さくらの聴く曲とか知りたかったな…。

「隙あり!!」

「うわ!」

おいおいおい! スマホ取られた!!

「へぇ〜、ふーくんもこんなかわいい曲聴くんだね〜」

「い、いいだろ。うるせぇ、返せ!」

「あはは、ごめんごめん! 悪いなんて言ってないじゃん! その曲いいよね、私も好き!」

私も好き(曲が)。私も好きだってよ!(曲が)嬉しいわぁ。これ聴いててよかった。

「へぇ、俺も好きなんだよね」

俺も好きなんだよね(曲が)。俺は好きなんだよねぇ(さくらが)。言えるわけねぇけど。

「ふーくんと好きな曲とか、歌手の話したことなかったかも〜! 今日はその話して帰ろ!」

「おぉ、面白そうだな」

「よーし、帰ろー!!」

「はは、帰ろうな」


ラブソングみたいに簡単に好きって言えたらいいのにな、あれ? 何かこれも歌詞っぽいわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る