一章 吸血鬼が血を吸うこと
1
俺は鵜飼羽鳥という旧姓を持つ、鏡見鳥野という名を持っている。高校に通っているが、カウンセラーのような仕事をしている。
『獏』というのは、カウンセラーをしている時のエイリアスとして利用している。
そして俺はいわゆる吸血鬼である。
今日も学校が始まる。
「ヨッス、獏君」
校門で学生ではない女の子に話しかけられる。勿論知り合いであるが…。
「お前はそんな呼び方を学校でするなって何度言ったらわかるのか?」
「だっていいじゃん。獏なんだから」
この通り、プライバシーもない発言をしてくる。彼女は『兎跳』という本名を持つ俺の『師匠』である。面白いからという理由で学校にまで用事もないのに来て俺をからかっている。
「俺はまだ、学校に通いたいんだ。その名前を使ったら、学校に行けなくなるかもしれないじゃないか」
「死んだ人間がそんなこと言ってんじゃないよ」
と、無駄口を叩いてはやし立ててくる。
「おいおい、俺を殺したのは誰だ?」
「いや、それはごめん。悪気はなかったって言ってんじゃん」
そう言いながら、兎は笑顔でボディーブローを本気で放ってくる。それをスルーしながらいなす。俺は文字通り、彼女に殺されたのである。
「今日も街中の人を食いに行くのか?」
学校には来ないように、これだけは毎日聞いている。
「そうだなー。今日は若手のサラリーマンとかにしとくか、新鮮でうまいぞ。生きる気力が血にまでみなぎっている感じだ」
なんかガッツポーズを決めながら、喜んでいる。
「そういって、新たな犠牲者を出すなよ。俺みたいなのの二の舞は、お前もいやだろ」
そういうと、本当に嫌そうな顔をする。
「そうだね、めんどいよね。こんな性格のやつがもう一匹生まれたらめんどくさ過ぎて、お前に託してここを去るわ」
唐突にとんでもないことを言ってくる。
「それはマジでやめてね?」
「うん、うん、そうしとく。じゃあ、帰りに迎えに来るね」
「その言い方さ、俺に大人な彼女がいるってうざく男子が絡んでうざいからやめてくれん?」
と苦い顔で答える。すると、一ミリも悪びれることなく論点のズレた反論をする。
「じゃあ、学校に行くのやめたら?もう私の習慣になって、やめられそうにない」
とりあえず、こいつの目標は俺をこの学校を辞めさせることなのだろう。
「いや、さすがにそれで学校辞めないから」
と言うと、
「残念だな」
とうつむき本当に可哀そうに思っていると分かる健気な表情を見せてくる。
「さみしがるなよ」
「優しいんだね」
そういって兎は肩に頭をのせてくる
「そんなんじゃないし」
こっちを向かないでほしい、顔が近い。純粋にウザい。
「もう、はずかしがって…。じゃあ、待ってるから」
俺は別に返事もしない。すると颯爽と立ち去っていく。
「冷たいんだから」と消えるように発言をその場に残して。
そしてそこには人影はなかったように時間が過ぎていく。
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