第7話 厄介者は此処で放置が一番
「この真珠夫婦物語、私も読んだわ。これは確かに凄い物語ね。これで王侯貴族達も見方が変わったなんて話しを聞くわ」
「まぁ、よく出来た作品だ。俺には文才がない分ここまでよく仕上げたよ。見事だ」
その本を見ると、昨日のように言い合いながらも完成させた本。
「その様子では何か知ってる感じね」
「作者と知り合いだ。サクラ商会の職人の一人。
俺はあらすじ程度を言っただけ。中の話しはシノノンの才能。
本当は共同でって事だったが、俺の名前もシノノンの名前も当時出せなかったから。ペンネームでシノノメにしたんだ」
「この作品にあなたも1枚噛んでいたのね。では他の作品も?」
「何品かはな。タダ俺には作品に出来る才能は、なかった。多少こんな話ならいいな〜的に言っただけさ」
サクラ商会の子供達は勉強で得る事の重要性を理解している。簡単な計算と最低限読み書きは必要。この先己の才能を発揮しようと努力を積んで来たからこそ、このような作品が出来たのだ。
他の国は貴族や騎士、教会や豪商にあたる子供達だけの専売特許みたいだが、この地だけは計算と文字の習得率は八割近くいる。
五年前からこの地をユートピア計画時に、一から人材を育てた。即戦力となる者が欲しいのはどこも一緒だ。限られる者だけでは限界が来る。
なので一番先に読み書きや計算が出来る環境=学舎を建設した。
職員は知り合いやツテやコネをフルに使って、知識を持った者、教鞭をとれる者を迎え築いた。
「他にいろんな才能を持っている者達がサクラ商会にはいるし、これから出てくるだろう」
アーブミル王国ではまだまだ発展余裕があるが、貴族達は未だに理解してない。
向かいの道路にオープンテラスの飲食店があった。
「あそこで休憩しよ」
「え? あぁ……うん」
空いた席に二人向かい座った。アメリアの短い髪型にちょっと見惚れてた。
(俺ってショートカット女性ってタイプだっけ?)
「なによその気の抜けた顔は。髪の長い女が好きだったの?」
「いや、そうじゃなくて可愛く見えただけ。ショートの方が似合うな〜っと思って」
ゲームのビジュアルにショートカットはないアメリア。俺の記憶にはなかったのだから、やはりこの世界を自分が変えた影響が出ている。
「それにしても気の抜けた顔は酷くね?」
その言葉で肩が下がった。、
「だってそう見えたの。何を考えているか、私にはリオンの事がわからないだもの」
「何を考えてって? そりゃ、ボケ~って、のんべんだらり出来る日々が一番だと思ってるんだがね」
何事も無くただ平和に、あ〜今日も良い天気だ! って空を見上げならが無心な日々が欲しいと思ってる。
飲食店の定員が注文を取りに来た。
「お冷です。ご注文がお決まりになりましたら、お声を」
俺の水が入ったグラスの下、コースターの下から1枚の紙が見える。
この定員サクラ商会の手の物で、胸のバッチの色が紫。コクの部下だった。
『#№§€}>¶»×©√』(緊急案件)
これだけでは誰が見てもわからない暗号。
他の人には見えないように細工してある。
「私はジャスミンティー」を頼むアメリア。
「俺はオレンジジュース」を頼んでハンドサインでコクの部下に返した。
「アメリア。わりぃ、手洗いの行ってくるわ」
「うん」
席を離れてアメリアに見えないように、関係者専用の通路で、コクの部下から手紙を渡された。
『実家の反抗。地下牢に捕縛している。至急返答』
「あはは、やっぱりか。だろうな〜と思ったよ」
実家の反抗は予測済。素直に従うとは思えない。俺を嫌っている実家の連中が何もしないわけない。
「至急返答をと」コクの部下が言う。
「もちろん、そのまま地下牢に拘束かな」
そもそも領民からも嫌われている連中だ。
数日居なくなっても、怪しまれる事も、心配される事もない。
「代役いるよね?」
「はい。」
「なら、そのままで」
至急との事だったようだが、俺には何一つ気にもならない事だった。
どうでもいい連中。血の繋がった家族だろうが、地下牢で一生幽閉して貰うかな。
「まあ、率直に言えば地下牢で生きようが死のうが全く関心が無い。領地の方も代役がいれば安心だし、死んだら多少の罪悪感はあるだろうが地下牢で人生を反省するにはちょうどいいだろう」
「では、生かさず殺さず地下牢のままと言う事で」言うとコクの部下は去った。
テーブルに戻りアメリアと向かい席でお茶を楽しんだ。
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