第5話 今までの思うところ、これから思うところ
リト君はホテルの十三階の寮暮らし、同年代の男の子と一緒だ。このホテルは宿泊客部屋と従業員寮によって場所が分かれている。
研修生は外に出ない限り、安全だ。
外へ出る時は、団体行動で班長随伴なので、もしもの時も、連絡出来る状態になっている。
この先一ヶ月間は、ロイに任せた。
この都市はの一般旅行者や貴族向けの娯楽施設、観光名所と様々あり、ホテル、旅館、宿屋が数多く、存在している。
サクラ商会も安い宿や、一般的なホテルも経営している。
初めてのお客もこの地を訪れても、案内板や、観光ガイドがいるし、治安維持も高く、守兵達や各店とのネットワークも充実しているので、安心して観光が出来るよう配備されている。
旅行プランでお酒や料理、パーフォーマンスやショーの目的の方や、観光地目的で宿を決める人が多いが、どの宿もセキリティやは万全を期ししている。高級宿に泊まれば特典も用意してある。
各店の名品やお酒や料理、各自施設が異なるので、次も楽しめられるのだ。
さて、今日は観光(休み)が出来る状態ではないようだ。
リデアに連れられて、守兵達の訓練所に来た。
「ちょっと待て、何故訓練所?」
「残念ながら、リオンこれは避けてはいけない戦い。話し合いで決まった事よ」
リデアの考えがあって言うのだろう。
「まぁまぁ、落ち着け。きちんと説明すれば誤解は解けるはず?……決闘なんて大げさだ」
「無理ね。ここからは私の意地がある。負けれないの」
二人は辞めるつもりはない。
アメリアもリデアも剣を持って、戦闘態勢を取っている。
「私はこの国を、この先未来を守るために意地を通すわ」
「そう、それが貴方の意見ね。国のトップなんて誰でも変わらないわ。人を見てない。国とか体面とかでしかない、プライドの固執だけしか見てない。人々の安寧な生活を背負ってない」
アメリアは国の未来を賭けた決闘。
アデルは人々の安定した生活の為の決闘。
ああ、もう完全に駄目だ。自分信念を賭けてる。
誰か止めて。と、思う反面こうなる事は解っていた。
リデアの強さは、折り紙付き。
俺の理念や概念と知識の全てを教えたただ一人の弟子。
アメリアの素質は努力型だ。
なので愚直なまでに、基礎を徹底的に叩き込みんだ。努力を積んだ分だけ上がって来た。
戦闘の実力的には影の箱庭で第5番目位くらい。だが普通の令嬢よりも100倍は強い。
彼女の戦闘能力を測ると戦術センスが非常に高い。大半の武器を使いこなせるが、身体に魔力を纏わせ、無手で魔法と混合で闘う、魔導格闘術の使い手だ。
極力無駄を無くし、効率よく一撃必殺で速攻で終わらせるタイプ。
一方、アメリアは確かに普通の令嬢よりも数倍鍛えてる。体付きから戦闘能力は高い方だろう。
剣の構えからして、一流とは云えないが対人戦の経験があるのか、不明だが構えに隙がない。
だが、アメリアはまだ世界の強さを解ってない。自分より格上と本気でやり合い、限界まで戦った事がないに見える。公爵令嬢故にここまで強くなったのは、本人の資質と努力の賜物だろう。
でもリデアの圧勝だろう。止めるべきだろう。が止められないな。
「わかった。命の取り合いは無しだ。遺恨も無し。お互いに正々堂々と」
俺は中央に立ち審判に。いつでもアメリアを助けれるように、気を張った。
アメリアもリデアもお互いに、剣を構えて魔力を纏って戦闘態勢を取った。
魔力出力はリデアが高い。魔力密度も濃い。リデアの足場に設置型魔法陣と背後には放出型魔法陣を同時に展開している。
アメリア側からは足場の魔法陣は見えても、リデアの背後の魔法陣は見えてないはずだ。
魔法には幾つか系統があり、設置型、強化型、放出型、現象型、連続型、同時型、複合型、など様々があり、本人の資質と練習次第では会得出来る。
魔力を纏って身体強化だけのアメリアとは、比べると闘いのレベルが違う。一撃の重みも違う。
アメリアも気がついたようだ。
この時点で勝ち目が無いと。
それでも辞めない目をしていた。
強力な相手にも関わらず、剣を持って構えて思考していた。
「もう、いいかしら?」
その言葉で、もうアメリアの目の前だった。
速さの次元が違う。魔力強化の速さと足場の設置魔法と放出型魔法で加速させての速さ。
これが刹那の速さと言うべきだろう。まるで自分自身を弾丸のようにした突出した術式だ。
大したものである。俺が教えたとて、ここまで体得したのは十人もいない。
目の前にいるリデアに、剣を降る事も出来ないアメリア。無理も無い。
強さも技量も魔法力も圧倒的にリデアの方が上。
目の前で畏怖を感じてるアメリア。
リデアは影の箱庭で君臨するほどの実力を持っているのだ。
「ぐっ……」
構えたまま剣を振れないアメリア。
「ここまでね。約束通り影の箱庭は貴方の言う事は聞かないわ。例えリオンの妻になったとしてもね」
目の前に無防備のリデアがいても、そのまま剣を振り斬る事も出来ずのアメリア。
「両者ここまで」
ここで、止めないとアメリアが一撃を食らう。
例えアメリアが辞めないとしても、何度も身体だけでなく、心まで叩き折るだろう。
ここでアメリアの心を折られると何も出来ずに、この先何も出来ずに終わってしまう。
俺はリデアにアイ・コンタクトした。
(ここまでな)
(わかったわ)
リデアは無言のまま本店に帰ったようだ。
残された俺とアメリアは闘技場を後にした。
この後、アメリアは「ごめん、ちょっと寄る所あるから」と別れた。
アメリア視点
気に入らなかった。
最初彼女の事を聞かされて、彼と長い付き合いがあり、彼の信頼が一番であること。
確かに彼と結婚した、打算的な部分があったのは理解している。仕方がない。
それでもこれからの事を思っていた。でもまだ知らない世界があった事に恥じてしまう。
彼のキャンピングカーの中で、彼の影の力があれば国の皆が苦しまなくなる。私は手段とやれる事がかなり増えた気がした。
本店に着いた時には驚いた。まさか、ここまでの財力があり、こんな建物があったなんて知らなかった。
店長からも確かな身なりに教育が届いていた。
隠し通路から会議室へ、そこからリデアさんに会った。
リデアさんは最初から、私と二人で話すように準備していた。ならば単刀直入で言う。
「影の箱庭の力を貸して欲しい。これから先の国を救う為に」
彼の事より影の影響力で国を守る為に。
だが彼女は断った。
「いやね。例え彼と結婚しようが影の箱庭は力を貸さない。貴方自身で動かないで何かをして欲しいなんて、私達も甘く見られたわね」
「私も国の為に動くわ。でも力が足りないの」
「力が足りない?違うわ。貴方の実力不足でしょう。貴方一人で出来る事より私達の力を影響力を宛にしていた。先ず貴方自身に何が出来るの? 貴方自身が行動して何が出来るかしら?
公爵家に産まれた"だけ"のお嬢様には、無理な事よ」
"だけ"の言葉に馬鹿にされたと思った。
公爵家に産まれ、公爵令嬢としての教育、文武両道の教育、社交会の教育も、全部やって来た。
そこに一切手を抜かなかった。私の、私の一族の責務だと思ってやって来たのだ。
売り言葉に買い言葉で、カーっとなった私はリデアに挑戦をしかけた。
「"だけ"じゃないわ。私自身だってやれるわよ」
「わかった。勝負しましょう」
結果、圧倒的の敗北を味わった。
上には上がいる。それは知ってる。
今まで教わった事が無意味に感じた。長年鍛錬を積んだ。公爵家お抱えの騎士や剣士、様々な教えを受けた。
なのに、なのに、なのに、勝てなかった。
自分の力不足のはわかった。だがこんな闘い方がある事を知らなかった。世界を知らなかった事が悔しかった。
彼にもっと彼女の強さを聞いていれば… 勝てる方法を聞いていれば、いや聞いても無理だ。
格上、その先次元なのか、戦闘技術の世界が違った。
彼と闘技場を出て別れた。
私は一人になりたかった。誰も見られない場所で泣きたかった。
悔しかった。己の力の無さを。あの場で"だけ"の言葉で闘いに挑み破れた。
私の今までの誇りが、"だけ"で終わった瞬間、何かが砕け散った。
リオンなら受け入れてくれる。彼の胸で泣いてもいいと思った。
だけど無理だった。泣いて叫んで、彼をリオンを責めてしまいそうだった。
ふと、昔父上が言っていた。
「何かに責めるのあまりにも簡単だ。誰かのせいにすればいい。
己が非とせずを、己を守る為に、自分が正しいと免罪符を得る為に、誰かを一方的に責めるだけでいい。
誰かを責めてる最中は、誰もが自分本位で思考が止まっているだろうし、そして自分を正当化してしまうだろう。
だが本当に相手が悪いのか? 自分の悪い所は無かったか、手順や対応、配慮する部分が無かったか?
考えろ、責めた分だけ自分が足りなかったと知る者だけが己を成長させる。
他人、物に責めても、自分を責めても過去は覆らないのだ。
ここからが重要だ。失敗してもいい、敗北してもいい。挑戦し続けるなら、
"もう一度己を知る所から始めるんだ"」
父の言葉が、今わかった。
己を責めても、他人を責めても後悔しかない。未練がましいが、まだ私には足りない物があった。なら、これからどうすればいいだろう。
リトワール殿下と一緒に学ぶか?
リオンの元で世界を知るか?
もう一度己を知ろう。どこまで自分自身が動けるか。己の持っている物、知識、道具、人脈をどこまで使えるかを。
…………見えて来た。
私は今まで伸ばしていた髪を切った。
敗北のケジメか、今までの過去の決別を意味する為か、これからやることが決まった。
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