第18話 迸る鮮血
未だ意識は回復せず、病床に伏せたままの
防音効果も相まって、モニターから流れる音だけが響くこの病室は少し不気味に見える。
試合も終盤に差し掛かった頃、掛け布団がモゾモゾと動き少年がゆっくりと体を起こす。体の節々が悲鳴を上げ、筋肉痛以外にも頭痛や目眩が彼の体を襲っていた。痛みを堪えながらゆっくりと首を右に動かしてモニターを見つめる。
「…………身体が怠い。欠乏症になってるのか?何で……」
当然の疑問を自分へ投げ掛けるが、答えが返ってくるわけもなく、空しく機械的音声に掻き消される。考えを巡らせていくうちに、段々と頭が冴えていき、模擬戦の時の様子が鮮明に映し出されていく。
「あの技式とは別に術式を組み込ませて、意図的にこれを引き起こすように仕向けたってことか?」
彼自信も納得はいっていないようだが、状況から見るに、これしかなかった。とは言え彼のエーテル回路もまだ完全とは言えない為、そうだとは決めつけられない。
「あーめんどい。考えるのはやめだ」
彼らは
「見舞い……って訳じゃなさそうだな。何か用か?」
「用、と言えばそうかもしれないですね。先程の勝敗に納得できなくてね」
左側に立つ、小柄で学のありそうな顔立ちの少年が薄ら笑いをして、あくまで礼儀を尽くすような口調で答える。
「少々此方も苛立っていてね。たとえ、
「納得いかないと言われてもな。結果は結果だ。つーか、ただの練習試合だろ。大会だのならまだしも、こんなことで逆恨みされる筋合いはないが?」
───おいおい勘弁してくれよ。こちとら怪我人なんだけど!?ここで術式なんて発動させたら、こいつら軽症なんてもんじゃすまねぇ……
左から振りかざさせる刃を避けるようにして、右側へ寝返りをうって、右側から来る刃を相手の手首を掴みその状態から
ベッドの左右に残った二人の男女が
「───ッグ!?」
眉間に
その場で倒れていた二人が技式の煌めきと共に、瞬時に
「アァァァ!!」
言葉一つ一つに濁点がついている様な悲鳴を発し、黒い剣と共にその場に崩れる。腹部からは刃の形に沿った傷口が出来、鮮血が我先にと溢れ出る。
小柄な男がうずくまる彼の前に立ち、剣を逆手に持ち変えて
「死にはしないでしょう。少量の血を流したくらいでみっともない」
憎悪に染まった赤い瞳を彼に向けて告げる。
剣を大きく振りかぶった───その時。ダンッと勢いよく医務室の扉が開けられ、複数の鎖が彼らを縛り上げる。
「=
左手を付き出して業命を呼ぶ、金色の髪の少年。彼の背後に顕れた魔法陣から無数の鎖が伸び、四人の生徒を拘束した。魔法陣をその場に固定させて、ギギギギギッと音を立てながら縛る力を強めていく。その時には彼ら四人に意識はなかった。
───くっそ、間に合わなかったか!!
「
魔法を準備しながら淡々と
治癒魔法が完成し、彼へ施した時には、既に
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