第17話 一時の休息と胸騒ぎ
彼が会場で倒れた後、
「んー中々見応えのある試合だったね。間近で見てどうだった?アル」
隣に座る少女に問いかける。彼女の表情筋は相変わらず動かないが、彼から見れば興奮しているのが丸わかりだった。
「凄かった、2世の名は伊達じゃなかった」
「うん、そうだね……」
眼を輝かせて感想を述べるアルベントに、
彼は
───うーん、あいつにこれ直接言わないと良いけど……
会場ではまだ試合は始まっておらず、準備中。観客席では、未だあの試合の熱が治まらずに感想会が行われていた。映像を残していた者はそれを見返し、ノートに書き込んだ者はそれを見て、自分に落とし込もうと黙読をする。かくいう
この巻の小説の内容は、一軒の館で起きた殺人事件を名探偵と呼ばれるシュテームが解決する、といった物。この事件での犯人の動機は、ネットで行われた全国的なチェスの大会で、決勝戦にて負けたことが事の発端、要は逆恨み。正直、しょうもない話ではあるが、大会自体はかなり大規模でもある為に起こってしまった様だ。シュテームは華麗に推理をし、事件の真相を暴いて完。それがこの小説の一連の流れ。
大体半分くらいまで読み終えた所で、両チームの準備が整った様で、会場には四人の女子が準備運動をしていた。両チーム共バランスの取れた組み方で、それぞれ
「両者、構え!!」
男性教員の言葉にそれぞれ武器を構える。
「始めえぇ!!」
試合開始の合図と共に、両者の魔女は詠唱をして魔法を放つ。粒上の炎魔法と土魔法が雨の様に降り注ぐ。互いにそれがぶつかり合い、相殺される。耳を劈く様な不規則な爆発音が鳴り響き、その音を合図に二人の剣士は床を蹴る。剣身は鮮やかな煌めきを放って、互いに刃を交わらせる。魔力因子が火花と共に散り、激しさは次第に増していく。まさに業の応酬。一種のショーの様にも感じる。魔法が飛び交い、ぶつかり合う度に花火の様に散り行き、二人の剣士を彩る。
その光景に会場は歓声に包まれ、その想いが空気中のエーテルを伝い、四人の戦士へと送られる。彼彼女らもそれを肌で感じ取り、更に業の精度を高め攻撃を繰り出してく。
「?どうしたの、
アルベントは眼を細めながら辺りを見回す
───あそこにいた四人は何処に行った?
四人、とは、
「ああ、
───ただトイレに行ってるだけ……ってこともあるだろうけど、本当にそうだろうか。もし、もし
そこで考えを止めて
「ねえ、これ考えてること、同じだよね?」
「うん、もし当たってたらあいつが危ない」
二人は頷いて各々武器を手に持ち、席を後にする。二人の顔には焦りと緊張が現れ、冷や汗が頬を伝う。演習場に響く炸裂音が、気色の悪いBGMにすら聴こえて、不安を煽る。杞憂であったことを願いながら、
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