創作活動は終わらない!
わたしたちは共有している。
春の消えてしまいそうな薄い空の色。
人々を立ち止まらせる、白くて真綿のように優しく木を覆う桜。
大地の力をそのまま咲かせたような菜の花。
暖かくなっていく日々に浮き足立っている人々。
夏の力強い日差し。
青空に、ソフトクリームのように浮かぶ入道雲。
緑の隙間から溢れてくる木漏れ日。
日陰から日陰へと暑さから逃げるように泳ぐ。
秋の鮮やかな原色。
並木道は黄色に染まって、家の庭にはハナミズキの赤い実が転がる。
木枯らしが、落ち葉と踊る。
寒さに体を寄せ合う冬。
厚着をして、早足に道を行く人々。
墨色の空から、舞い降りてくる羽のような雪。
暗い夜空に反射しそうな、煌びやかなイルミネーション。
君はいつもわたしの右にいて、君と見るものはいつも一緒。
とはいえ、君の顔すら知らない。
わたしたちは、ただ存在がわかるだけだ。
「くっ」
ある日、君の痛みが伝わった。
「大丈夫? どうかしたの?」
声をかけると、君は「ああ」と返事をくれた。
けれど、まだ痛いのか、小さなうめき声が聞こえる。
景色もぐにゃりと歪んだ。
もう一度声をかける。
「大丈夫?」
「大丈夫だ。
「ああ、もう。心配させないで」
そう、わたしたちは二人で一つ。
『君は右目、わたしは左目』
「ってどうよ!」
「いや、どうよってなに」
「右目と左目のラブロマンス! いけるくね?」
「いけねーよ、どんな頭してるんだお前」
さっきから手厳しい彼女はわたしの
二人でSNSにラブコメを中心にした四コマ漫画を投稿している。
二人で活動を始めてから、はや二ヶ月。今や二千いいねは当たり前の、ちょっと注目されつつあるコンビでもあるのだ。
今日も夜な夜なテレビ通話で、次の話について打ち合わせ中である。
「サイコパスな妄想してないで、早く次のプロット書けよ」
「サイコパス……ひどい……」
「お前のヘタクソなプロットから絵を起こすのに一日かかるんだからな。今投稿期間空けたら人気なくなるぞ」
「うう……サイコパス……。あ、閃いた。じゃあ『右手と左手』のラブロマンスは?」
「もうお前、人体から離れろ」
こうして今日も、面白い作品を作るため、わたし達の戦いは続くのであった。
おわり
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