2020年5月21日
ダザイとホウサイが死亡した頃、時を同じくしてタカギモドキも姿をくらましてしまった。こう言っては何だが、私にとってタカギモドキなどという尻のデカイ蜘蛛の事など、ダザイとホウサイの死亡事案に比べたら取るに足らない些細な事なのだ。最後の日記を書いてから約三週間。半ば私は、もう二度とこの日記を開く事はないだろうと思いながら、よくわからない喪失感に満ちた日々を今日まで過ごしていた。帰宅しては部屋の中に新しいダザイの姿を探し、水槽の蓋を開けては黒く変色していくダザイの亡骸を見つめ、この日記を更新できない罪悪感に
昨夜、私はベッドに入るなり、耳元から聴こえたブンブンという不快な翅音で半身を起こし、慌てて電気をつけて音の正体を確認してみた。蜜蜂である。一体どこから迷い込んだのかは知らないが、何と多くの昆虫が出現する部屋なのだ。窓だって開けてはいないというのに。私は無意味な殺生はしない性質である。因果応報、一寸の虫にも五分の魂、カオス理論などなど。そういったものを少なからず信じているというのもあるが、まず蜜蜂というのは生態系にとって、つまり我々人類にとっても重要な生き物である事を私が知っており、その蜜蜂のコロニーが年々減少しているという事実を知っているがために命を救ったというのもあるのだ。ともかく、命を弄ぶのは良くない。毎回ダザイを捕獲しては水槽に放っている私が言えた義理ではないのだが。
昼過ぎの時間に自作小説の宣伝ツイートを放っても、ほとんど反応が無いため無意味である事を二日前に身を持って証明したはずなのだが、何をトチ狂ったのかついつい三サイトともの宣伝をし終えて一息つこうと思った時であった。机の上を這っているダザイを見つけたのだ。幻覚ではない。最近、急激に右目だけ視力が落ちて物がブレて見えるようになったが、間違いない。本物のダザイである。ヤツは三週間の沈黙を破って再び我が部屋に降臨した。もちろん、嬉しくなった私がダザイを水槽にブチ込んだのは言うまでもない。
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