第46話 始まってしまった (咲斗視点)



 この話は咲斗の視点となっています。



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「俺に付き人として出て欲しい? 」


 放課後、食堂でご飯を食べようと思っていた俺は、そこにやってきた秋様にそう言われた。


「そうじゃ」


 俺は、さっき買ったパンの袋を開ける。


「どうして放課後に、食堂にいるんじゃ? 」

「お昼にいつものようにわちゃわちゃしてたら食べれなかったんだよ」

「いつも通りじゃの」

「付き人ってのは? 」

「結婚の儀式での付き添いじゃ」

「あぁ」


 うちの町では、誰かが結婚する時に神社で秋様による儀式を行う。

 その時、町の子供……というか、年頃の男女が付き添いとして出て祝福をうける。

 しかし、その男女には一つ問題がある……。


「俺が出たとして、もう一人はどうする? 付き添いとして出た男女は……」


 俺は言葉に詰まる。


「結ばれる……のじゃ」

「そうだ……」


 儀式の付き添いとしてでた男女は、結ばれる。

 だから、毎回交際をしている男女が選ばれるのだが……。


「俺にそんな相手はいないんだが」

「そんなことは、無いじゃろ」


 秋様はそう言って、俺の目の前に置かれたパンを取って食べる。


「それは……? 」

「それは……ーーーじゃ」



 秋様が口にだした名前は、誰にも……俺だってすぐに、すでに分かっていた名前だった。



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「渚、ちょっときてくれないか? 」


 次の日、俺は渚に声をかけた。

 人に頼るのが早いなんて言われてしまうかもしれないが、一人でウジウジして考えことするのが嫌いなんだ。


「……いいよ」


 渚は俺の顔を少し見つめた後、そう言った。


「男同士二人の会話なんて、絶対いやらしいよ」

「私も結さんに同意いたしますわ」

「雪さん!? 」

「渚……お尻には気をつけるのよ」

「梓様!? 」


 おい!

 神様!?


「どうして俺がやる側になってるんだ」

「渚は受けでしょう」

「いえ、咲斗が誘い受けという可能性もありますよ」

「雪!? 」


 前からちょっと思ってたけど、雪はそっち路線だよな。



「今日は梓っちは引き留めないのね」


 確かにいつもなら渚がもうボコボコにされてる時期だ。


「時には許すのが妻の度量だ」


 やさしいじゃないかと思ったが、梓の右手には熟年夫婦特集がされた月刊紙があった。


 俺は優しさで見逃した。


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「それで、話ってのは? 」


 俺達は屋上へとやってきた。

 とりあえず適当な所に腰掛ける。


「いきなり本題かよ」

「こういう時ってどんな話題からはいればいいんんだろ」

「……いい天気だね。とか? 」

「流石に天気デッキは……」


 …………。


 気まずくなった。


「本題に入ろうか」

「そうだね」

「って言っても渚ならもう分かってそうだがな」

「僕はそんな万能じゃない」

「選ばれたんだ」


 俺は言った。


「選ばれたって? 」

「結婚の儀式の付き添い人だ」

「それが問題? 」

「いや、付き添い人は男女各1名必要なんだ」

「何、女の子を誘えないとか? 」

「それならお前に聞いてない」

「酷い! 」


 俺は目の前の渚を見てて思う。

 二股かけてるのに根が陰の者なんだよな。


「相手は決まってるんだよ」

「……それは咲斗が決めたの? 」

「いや、秋様だ」

「相手ってのは? 」

「渚は知らないかもしれないけど、その男女ってのは普通結ばれる男女がやるもんなんだ」

「それは……知らなかった」


 何だか渚は悔しそうな表情をする。


「そうか、それで相手なんだが……」


 俺は一度上を向く。

 そして渚の方を向いて答える。



「相手は、ーー結だ」



「そっか……」


 渚はそう言う。


「もしかして知ってたか? 」

「え、いや……」

「でも、それならアタックすればいいんじゃない? 咲斗ならいけるよ」

「違う……知ってるんだ」


 俺は下を向きながらそう言う。


「え? 」

「俺は知ってるんだ」

「知ってるって? 」


 問題はそこじゃない。


 そう、



「俺は……結が俺のことを好きなことを知ってるんだ」

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