第43話 嫉妬 (秋視点)




 この話は、秋の視点となっています。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー





 神と人は何が違うのだろうか。

 神は人間よりも上、では神から何を引いたら人間になるのだろうか。

 神に何を付加価値として与えたら、人間になるのだろうか。

 よく考えたら、人間同士だって遺伝子レベルで異なっている。

 自分から他人になるために必要なものはわかりづらい。

 でも、他人が自分になるために必要なものは、前者よりは分かりやすい。

 神と人間もそうだ。

 だからこそ、あの人間のことが理解し難い。

 恋心とは、互いに理解し合うことらしい。

 だとすると、神とは孤独な存在なのだろうか。

 今日も、曇天の空に手を伸ばす。


「狐の嫁入り……。迷信ほど信じ難いものじゃな」




 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 あれは、1ヶ月ほど前のことじゃ。

 別に回想シーンに入るほどでもない。

 いつものメンバーで旅行に行った時の2日目。

 わらわ達は色々あったせいで(主に梓と渚のせい)渚と梓とわらわの三人で行動していた。

 何となくじゃ。

 本当に何となくじゃが、梓と渚の二人の様子がおかしい気がした。

 結殿の話では、祭の事件の時かららしい。

 わらわは何だか惨めな気持ちになってしまった。

 よく考えたら、梓は渚から告白されたが、わらわはどうだ?。

 そんなことを考えていたら、悲しくて辛くなった。


 梓とわらわの二人のどこが違うのか。

 それは神か人かである。

 渚はもしわらわが人間であったら、わらわの告白を受けいれただろうか。

 惨めじゃった。




 それから数週間引きこもってた。

 しかし、最近町の者から結婚の儀をしたいと言われた。

 だから、今日は町の今度結婚をするものの顔を見に行って、久しぶりに喫茶店に行って帰ろうと……。

 そう思っていた。


「いらっしゃいませ……あっ」

「間違えましたのじゃ! 」

「何と!? 」


 バタンッ


 扉の閉まる音を最後まで聞くことなく、わらわは走って逃げた。

 我ながら中々のスピードだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 またまた飛んで、わらわが喫茶店から逃げ出して二日後。

 それが今に至る。

 逃げ出したと言っても食い逃げじゃない。

 元々あの店にお金なんて払ったことない。

 それは置いといて、やっぱりあんな感じにで逃げてしまったのが引っかかってるのかどうかわからないけど、わらわは町へと来ていた。

 久しぶりに学校にでも、遊びにいこうかの……。

 学校へついて、渚達のいる教室へと入る。

 授業中かもしれんが、わらわには関係ない。

 どうやら、授業中ではなかったようじゃった。


「あら、秋様久しぶり」

「結殿か、渚はどこじゃ? 」

「渚君、今日お休みらしいんだよね」

「そうじゃったか……」

「風邪をひいたらしいわ」

「最近何かに躍起になってたみたいだし心配だね」

「今日みんなで勉強会をする予定だったんだがな」

「渚さん、心配ですわね」

「じゃ、じゃあさ、みんなでお見舞いしにいかないか?」


 咲斗が皆に提案する。


「平み……咲斗にしてはいい意見ね」

「梓さん!? 裏では俺のこと平民って呼んでるんですか!? 」

「そんなことないわ。荷物持ちくらいの地位はあると思ってるわ」

「酷い! 」


 咲斗は声を大にした。


「頭の上に荷物のせとけばいいんじゃないかしら」

「結、それは俺の頭が軽いって言いたいのか? 」

「あら、重たいつもりだったの? 」

「うわーん、秋様みんながいじめてくるよ!」

「まぁ、渚っていうサンドバックがいないからの」

「我々に人権は!? 」

「神が人間にひれ伏すものか」

「そうでしたねえ、えぇ」

「渚みたいなことを言う」


 渚か……。

 こうして意識してしまうと歯がゆい気持ちになる。


「そういえばですが、渚君の家はわかるのですか? 」


「「そこは大丈夫」」


 わらわと梓の声がシンクロした。


「頼もしいような、不安なような……」

「神様じゃからの」

「もうひとかたいるんですがそれは」

「あやつももう、神様みたいなもんじゃろ。武神とか死神とか」

「よし、じゃあ。今日は渚のお見舞いするってことで! 」


 いつものように咲斗の掛け声で今後の方針が決まった。

 その台詞はいつもの今井咲斗のもの、ここまでの流れだっていつもの皆の台詞じゃった。

 だけども……。

 そういえば、わらわ達は渚について何も知らない。


 まだ隠された闇は、残ってるらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る