第33話 ドキドキ!問題児だらけの温泉回!( 結編 渚視点 )
*お知らせ
この28話から続く第3章は、
この33話と次の34話は、主人公の
分かりずらかったら、ごめんなさい!
い、いや!
温泉回だから主人公視点が良かったとか、そういうのじゃないから!
本当だから!
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……何やら心の叫びを聞いた気がするけども、とりあえず僕も今は叫びたい気分だった。
「やーだぁー!! 」
暖簾の近くの柱にしがみついて泣き叫ぶ一人の少年がいた。
叫びたい気分というか、叫んでいた。
サブタイトルに引かれてやってきた紳士の皆には悪いけれど、僕はこんな現実望んでないんだ。
梓が指を指す。
のれんが赤い。
その方向は女湯だった。
「僕は男湯に入るんだーー」
「……普通は逆ですよね」
「本来は。だけど、今回ばかりは渚君の気持ちが少し分かる気がする」
「えっと……ジョロウグモの巣に引っかかる蝶々? 」
「概ねは」
言い方は置いといたとしても、例えが的確過ぎて泣けてくる。
「渚、お前は何が不満なんだよ」
咲斗がそう言う。
嫉妬の目をしていた。
「女湯に24時間いつでも入れるんだぞ! しかも身体まで洗ってくれるサービスつき、こんなの世界中にある星のマークが入った玉を七つ集めても、叶うかどうか怪しいお願いだっていうのによ」
「身体くらい自分で洗いたいんです」
「もう一度」
「身体を洗う順番すら忘れそうなのですが」
「だらっしゃい! 」
頭を叩かれた。
風呂に入る前から、のぼせた気分だ。
「文句を言うくせにやる事やってるじゃないか! 」
「僕に拒否権なんて存在しない! 」
「胸張って言うことかそれ」
「とにかく嫌だ! 僕は咲斗とじゃなきゃ嫌だ! 」
叫んだ。
「えっ」
梓の顔が緩んだ。
いや、……僕以外全員だった。
「そう、……だったのか」
梓は何やら変な報告に目を逸らす。
「なら……ねぇ」
「どうして目を逸らすのでしょうか、女性の皆様」
「お二人の邪魔をするのもあれですし……」
「わらわも心は広いから衆道も受けいれてやるさね」
「何ですかその言葉」
答えは……聞きたくない。
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「……渚」
裸になった咲斗が、僕の肩を叩く。
「……初めてだから、優しくしてくれよな」
「違う! 」
「まぁ、これは冗談だが、いやー、渚がそんなにも頼むからなぁ、そこまで頼まれちゃなぁ……仕方ないよなぁ」
脱衣場で腰のタオルを調整しながらそう言った咲斗は死ぬほど嬉しそうだった。
僕は服を脱ぎ終わり、タオルを腰に巻く。
秘密の花園……なんて言うけれど、ちょっとドライヤーや鏡が多いくらいで、女湯も余り男湯と変わらなかった。
「今日も地獄。明日もまた生き地獄」
「どうしてくらい顔をしてるんだよ。どう見ても天国だろ」
「天国過ぎて地獄なんだよ」
よく見ると、結構ガタイが良く筋肉質な身体だった。
「咲斗って身体鍛えたりしてるのか? 」
「まぁ、昔色々あってそれからトレーニングしてるんだ」
「へぇ」
「……そんなジロジロ身体を見るなよ。ま、まさか……」
「いい身体してるね」
「お前……」
「頬を赤らめないで、冗談だから」
「咲斗かなしい! 」
気持ち悪かった。
大浴場の中へと入る。
皆の声が反響するのと、シャワーの音が聞こえた。
しかし、ここからが問題だった。
僕と咲斗が身体を洗おうと、各自一つの椅子とシャワーを陣取る。
すると、僕の方へ二人の彼女がやってきた。
「ふふん、色々言っときながらも、やはり欲望には抗えないらしいのさ」
「そうね、渚……」
秋と梓はそう言う。
二人とも、大きなバスタオルを巻いてはいるが、少しでも触れてしまえばバスタオル取れてしまいそうなくらい甘い隠し方だった。
「お客さん、ハジメテ? 」
梓はわざとらしく片言でそう言って、何やら怪しいボトルとエアーマットを持っている。
「手に持っているボトルは何なのでしょうか……」
「ヌルヌ―」
「飛んでいけ! 」
僕は梓の手から、なんなのか分からないボトルをぶんどって投げた。
「高かったのだけど……」
「聞かなかったことにします」
危機を回避した僕は心の中で小さな勝利に喜んだ。
「お風呂にします」
梓がめげずに、エアーマットを置く。
「ここがお風呂でしょうに」
「やはり、私の貧相な身体では満足出来ないと……」
「そう言うことじゃないから! だから薙刀をかまえないで……ってかどっから出したの!? 」
「愛の力よ」
そう言って梓は薙刀を振りかざす、僕の背後の鏡に亀裂が入った。
「あらあら、私の女子力に耐えられず破壊してしまったわ」
「暴力でしょうに! 」
「まぁまぁ、ほら、わらわに洗わせるがよい」
「いえ、私よ! 」
そう言って二人が僕に襲いかかる……、
すると、
もみくちゃにされたせいで、僕の腰に巻いてたタオルが……、
「あ」
「「あ」」
「いやーーーーーーーーーーー!!」
叫んだ。
僕が。
「もうお婿にいけない……」
ちなみに梓は失神して倒れた。
「男は泣くものじゃないぞ」
「心は乙女なんです」
「うるさい」
「どうしてセクハラした本人が、偉そうなんですか」
「神が人間にひれ伏すものか」
「そうでしたねぇ、ええ」
「分かった分かった。好きなだけわらわの背中で涙を流すがいい。そしたら、わらわが渚の背中を流してやるからの」
「綺麗にまとめられても……」
そんなに上手くも無かった。
「ほらほら、洗わせるがいい」
「自分で洗えます!」
「背中とか洗いずらいじゃろ? 」
「分かった分かった。じゃあ、咲斗に洗ってもらうから! 」
…………。
「「え? 」」
先に湯船に浸かっていた結と水瀬さん、そして蚊帳の外だと思って先に身体を洗っていた咲斗が、そんな声をあげた。
「そ、そうか……じゃあ……うん」
もう僕は何も言いたくなかった。
ただ、地味に水瀬さんが人一倍の興奮していたのと、梓の死体……じゃなかった失神して倒れているのを普通に秋が踏んで言ったことに、ツッコミを入れるか迷っている時点で、僕はこのカルマから逃げ出せ無いのだなと思った。
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