第30話 浮気調査 (結編)
放課後、あたしと渚君は調査を始めた。
あたしも、渚君も予定があるからと早く帰る振りをして、咲斗をストーキングすることにした。
咲斗はクラスメイトと雑談をしていた為、帰りの準備が遅れていたので、掃除当番が教室の掃除を初めていた。
クラスメイトの女子の箒が咲斗の近くに寄った時、
「あ、ごめん。今井君、少し掃除したいから道開けてもらってもいいかな」
「お、それくらいなら俺がやっとくよ」
「悪いよ……、掃除当番じゃないのにやらせちゃ」
「いいんだよ。ほら、別のとこいってきな」
「うん、ありがとう! 」
…………。
「あの……、結さん……? 」
「何かしら? 」
「いや、その……嫉妬の炎と言いますか……人間ってここまで発熱出来るんだなぁと思いまして……」
「それで? 」
「ひぃい! なんでもないです! 」
「ほら、咲斗が移動したわ。追いかけるわよ」
「サーイエッサ」
咲斗を追いかけていくと、の中へと入っていった。
ちなみに……うちの生徒会は会長書記含め、全て女性である。
「ま、まさか! 」
あたしは、部屋の窓から中の様子を伺う。
「それで、手伝いって何をすればいいんだ?」
「あら、咲斗君来てくれたのね。そこの書類よ」
「おーけー」
…………。
「あ、……あの結さん。地団駄が次元を越えて地震になっています!」
人間というものはここまで地球にダメージを与えられるものなのかと関心するほどの地ならしを起こしていた。
しかし、そのせいで……、
「きゃあっ! 」
生徒会長がバランスを崩した!
しかも……、それを咲斗が……抱き抱えて助けた。
…………。
「結軍曹! どうかお気を確かに! これ以上は……お身体が持ちません! 」
「は、離すんだ渚大佐! あたしは、あたしは! 」
「結軍曹ーーーー!!! 」
僕は全力で結を押さえつけるが、限界を迎えていた。
「……二人で何やってるさね」
後ろから寸劇を見ていたらしいのは、秋様だった。
かっこよくポーズを決めて、廊下にあった壁のでっぱりにバランスよく乗っている。
ズコッ、
あ、落ちた。
「うわーーん!! 」
…………。
渚君はやれやれと介抱しに行ったのを見て、全てがどうでも良くなってしまった。
「それで、秋様、いつからそこに? 」
「……いつからと聞かれたら最初からと答えるしかないさね」
どうやら立ち直ったらしい。
「……どうして? 」
「面白そうなことがこの町であったら、大体わらわはいるさの」
あと美味しいご飯ね。
「それで、何をしてるのさ? 」
「秋、今は立て込んでるんだ。とりあえず、一旦この場は見逃してくれないか……? 」
渚君はやんわり秋様に帰ることを提案する。
あたしのことを思っての行動だろうが、少し宥め方がおかしい気もする。
「いいのか渚! 教えてくれないというならの! いいのか!? 」
秋様は何をするというのだろうか。
「教えてくれないなら! わらわはここで泣く! いいのか!? わらわの泣きはそんじょそこらの泣きと違うのじゃぞ! 」
「違うとは? 」
「声量が通常の三倍じゃ! 」
「他は? 」
「……持久力が0.5倍」
「「…………」」
うちの町の土地神の精一杯の脅しが泣くぞ!というのに、悲しみすらも消え失せてしまった。
「……分かったよ。教えてあげる」
「……いいのか結? 」
「嗅ぎ回られるよりはいいんじゃない」
というわけで、あたしと渚君は秋様に事の経緯を伝えた。
「ふむふむ……なるほどのぉ……よし、分かった」
「……分かったって? 」
秋様はふふんと、鼻を鳴らす。
そして……、
「その恋路、わらわも手伝ってやろうでないか!」
…………。
こうして、町の土地神、秋様が仲間になった。
てれてれてれてれてててん。
みたいな曲が脳内で流れたのは置いといて、凄く不安である。
「大丈夫、わらわに任せるが良いぞ! さぁ、出発だ! 」
秋様はどこかも分からない目的地に出かけようとした。
そして……、
ステンッ、
「うわーーーん、渚ーー!! 」
再び転んだ秋様を介抱する渚君を見て、あたしの不安はもっと増していった。
これからどうなるのやら……。
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