第三章
第28話 恋愛相談 (結編)
タイムリミットは近づいていた。
いつかは決めなくちゃいけない。
ゲームなら直前でフラグが立たれて、セーブすればゆっくり考えられるのだろう。
現実も非現実も分からない。
聞いたところ、ゲームも今はリアルタイムで動くらしい。
二次元にも三次元でもリミットが近づいてくる。
逃げるのは簡単だ。
だからずっと、逃げてきた。
だけど、いつかは踏み込まないと……
大事なのは速さ。
動き出したら止めては行けない。
そして、伝えなくちゃいけない。
ーーそう、決めたから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「という事で、呼んできたぞ! 特別講師の
あたしの目の前で、何故かちょっとテンションの高い保険医の
あたしの名前は
高校一年生になったばっかり、ピチピチのJK!
じゃなくて……あたしは今日、放課後保健室に来ていた。
いや、別に怪我をしたとかじゃなくて……。
そう、この学校の保険医の風早さんはスクールカウンセラー的な事をしているのよ。
だから、相談したいことがあったのだけど……
「どうして、渚君を? 」
「小森君の悩みは恋の悩みなのだろう。だったら手っ取り早く、恋愛のプロに聞いた方がいいだろう」
「そのプロには見習っちゃ行けないと思うのだけど……」
そう、私の悩みは恋の悩みだった。
「……そういうことですか」
渚君は言う。
彼は直ぐに物事を理解してしまう。
いい事でもあるのは確かなんだけど……。
「小森君が、どうにかしたいからと私に声をかけてきたんじゃないか」
「それはそうですけど……こんな二股男に乙女心はわかりません! 」
「二股男って……」
渚君はちょっとしょんぼりしていた。
「でも、小森君の想い人も結構な鈍感だと思うのだが……」
「……僕もそう思います」
「え、ちょっと待って、二人共……あたしの好きな人知ってるの!? 」
「まぁ……、」
二人は私から目をそらす。
そんなに分かりやすかっただろうか。
恋は盲目……? なんて言ったら気取ってるかもしれないけどそういうなのだろうか。
「二人とも、悪い。これから会議があるんだ。渚君、頼んだぞ」
いきなり、風早さんはそう言っていなくなってしまった。
少しの沈黙の後、渚君が口を開いた。
「えっと、小森さん。どうしていきな……」
「結」
「へ? 」
「結って呼んで。何だか距離を感じるのは嫌だから」
「……分かった。……結」
「よし、それでオーケー」
「あぁ、」
渚君は照れたのか顔を逸らす。
意外と? 純情らしい。
「それで、あたしに何か言いたいことが合ったんじゃないの? 」
「あ、そうだ。いや、そのどうしていきなり踏み込む決心をしたのかなと……」
「……そうね」
あたしは上を向く。
これはあたしの癖だ。
何か深く考えたい時は上を向く。
普通なら下を向いて思案するのかもしれないけど、
『下を向いてちゃ下向きの考えしかでないよ。上を向かなきゃ』
と昔言われてから、こうするようにしている。
「あたしは、見たのよ」
「見たって? 」
「お祭りの日、あたしは咲斗と秋様とちょっと離れて一瞬だけ別行動をしたのよ。その時、神社の奥の広場へ行ったら……」
本当は、色々思うことがあって一人で考えたかった。
でも、もう上を向くのだけじゃ耐えきれなくなってて、高い所に登ろうと思った。
「あたしは見たの……梓があなたに……その、……キスしてる所を」
「あっ、」
「…………」
渚はやっちゃったかぁ〜みたいな顔をした後、頭を抑えた。
「あなた達三人は、あの距離をずっと保ってるのだと思ってた。だからあたしもこのままでいいと思ってた。だけど、踏み込まなくちゃいけないって知った」
「……踏み込むのは難しいんだ。梓は強い人間なんだ。だから、出来た」
渚はやっぱり、優しさをくれない。
こんなの、間接的にあたしは強くないって言われてるようなもんだ。
でも、
だからこそ、あたしの悩みを頼むには適しているかもしれない。
風早さんはそういう意味で選んだ……のかは分からないけど
「あたしは踏み込むわ。なんと言われようと、……決めたから。だから、渚君、手伝って欲しい」
「……どうして僕なんだ」
「近くにいたから」
「それだけ? 」
「嘘、梓や秋様がいい意見をくれると思う?」
「納得」
「それに、梓や秋様に相談したら渚君の話しかしないに決まってるし、あ、でも渚君に相談したら二人の話しかしないかぁ〜」
「いつから咲斗が好きなの? 」
あたし 撃沈。
渚君の最終兵器により、あたしの顔は真っ赤になって、思考が回らなくなってしまった。
「……話さなきゃ駄目? 」
あたしは言う。
「言いたくないならいいよ別に」
「実はね! 」
「やっぱり話すんだ」
「一番最初に好きって感じたのは、多分凄く昔。いつかは覚えてないの」
「……そんな昔からなら、それなりにチャンスもあったんじゃ? 」
「多分あった……。でも、関係を壊すのが怖かった」
「でも、それを壊そうと? 」
意地悪に質問をしてくる。
「うん」
「……それはどうして? 」
「渚君は二人と付き合ってるよね」
「あぁ、」
「だけど、喧嘩することはあっても、それで皆の仲が悪くなったりした? 」
「…………」
「壊れるかもしれない」
言いづらい事をそのまま言ってくる。
roleとしては優秀だが、友達としては手厳しいと感じる。
「分かってる。だけど、変えたい」
「どんな結果になっても? 」
「うん」
あたしは強く、答えた。
「じゃあ、どうすればいいと思う? 」
「そこが聞きたかったの」
「……うーん」
渚君は、カレンダーを見る。
そして、私も。
多分、同じ所に目が止まった。
「あと数日で夏休みだね」
「……分かった。協力する」
こうしてあたし、小森結は新たな1歩を踏み出した。
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