第420話
これは何度でも言いたい。私は生まれて一度もモテたことがない。ひかるや晴菜さんに好きって言われたことが本当に稀なことでもう二度と誰にも告白なんてされないだろう。
なのに、お姉ちゃん達が私は学校一モテると言うから困った。本気で優香ちゃんが真に受けてるし、勘弁してほしい。
「あっ、そう言えば先生の話が途中で終わってた。水希、先生と映画を見た後は何をしたの!?」
「だから、何もしてないです。映画を見た後は普通に寝ました」
「先生と一つのベッドで一緒に寝たんだ」
「佐藤先輩…勘弁してくださいよ」
本当に先生とは何もないし、お泊まりも一度きりだった。だけど、何もないって言っても先輩達が解放してくれない。
「じゃ、先生とはお泊まりをした後も普通に図書室で会っていたの?」
「はい、主に世間話してました」
「恋バナは?」
「まぁ…しましたけど」
早川先輩がニヤニヤしながら私に質問をして、また変な方向へ誘導されていく。
「先生に水希みたいな恋人が欲しいって言われなかった?」
「それは…」
「やっぱり、水希が気付いてないパターンだね。まぁ、気付いていたら大変なことになってそうだけど」
「大人の先生が中学生相手に本気になりませんよ。私は女だし…」
「望、そろそろ水希が可哀想だから勘弁してあげて。本当に何も起きなかったみたいだし。でも、姉として一言言わせてもらうわ。水希、優香ちゃんに手を出したら恐ろしいことが待ってるからね」
「絶対にないから!いい加減信じてよ」
お姉ちゃんも私をずっとナンパ師みたいな扱いをするから流石にイラついてきた。
私は普通にしているのに何が他の人と違うのか分からないからどうしようもないし。
「むぅ、、私ばっかり責められる」
「それは水希の日頃の行いのせいよ」
「私、何もしてないもん。あっ、私のこと女の子にモテるとか言うけどお姉ちゃんもよく女の子から手紙貰ってたじゃん!」
「あれは…ただのお手紙よ」
「嘘だね。絶対ラブレターでしょ」
私の言葉に先輩達がすぐに反応する。ずるいお姉ちゃんは私のことは沢山話すのに自分のことは殆ど語らない。
でも、私はお姉ちゃんが昔から女の子にモテてきたことを知っている。
「水希、詳・し・く・教えて」
「ちょっと優希!」
「菜穂、シャラップ!」
「望まで…はぁ、、」
お姉ちゃんは昔から正義感が強く、いじめっ子は勿論、納得できないことがあると自分とは関係なくても口を挟む。
もし、知らない子がいじめられてるのを見たらカツカツと歩いていき仁王立ちで言葉責めをするタイプだ。
そんなお姉ちゃんが小学4年生の時、道端で泣いている小さい女の子を見つけ、おんぶしその女の子を家まで送り届けた。
私はお姉ちゃんのランドセルと女の子の鞄持ちをし後ろから僕のように歩いていた。
その際、お姉ちゃんは女の子から初めてのお手紙(ラブレター)を貰うことになる。
中学1年生になったお姉ちゃんは隣のクラスで起きていたいじめに口を挟む。
たまたま階段を歩いていた時、隅でいじめっ子達(女の子)が一人の女の子の肩を押し酷い言葉を投げかけていた。
悲しいけど普通だったらみんな見ないふりをする。でもお姉ちゃんは違う。堂々とした仁王立ちで「何をしてるの?」と言い放つ。
この話をなぜ妹の私が知っているのか?それはお姉ちゃんの生ける伝説は学校に受け継がれているからだ。
お姉ちゃんは勿論、そのいじめっ子と対峙することになる。でも、眼力や言葉遣い、語彙力などでお姉ちゃんに敵う人はいない。どれだけギャーギャー言っても通じない。
ど正論を言われムカついたいじめっ子がお姉ちゃんの肩を押した時、お姉ちゃんは壁を殴り威圧する。そして、後ろにいたお姉ちゃんのクラスメイトも加勢をして取り囲んだ。
お姉ちゃんのクラスメイトは全員お姉ちゃんの仲間(味方)だ。ちゃんと筋が通ったことをするからみんな協力をする。
ここからがお姉ちゃんの凄いところだ。お姉ちゃんは1年生ながら権力をつけていく。
助けた子のお姉ちゃんが学校一人気のある先輩と分かり、お礼として頭を下げられた。
いじめっ子達は学校一の人気者に呼び出され学校中の生徒の敵になり大人しくなる。
ここで、お姉ちゃんは二度目の手紙を貰う。いじめから救った子から手紙を貰い、私はその現場を見ていた。
友達と遊んだ帰り、公園でお姉ちゃんと女の子がおり手紙を渡されていた現場を見た。
ウブだった私は理解力がなくスルーしたけど、あれはきっとラブレターのはずだ。
そして、まだ他にも話はあるけど長くなるならダイジェストみたいな感じでお送りする。
①私が中学1年生になり、お姉ちゃんの妹だと伝わると知らない先輩からお姉ちゃんに手紙を渡して欲しいと頼まれる。
②お姉ちゃんと2人で家まで帰っていると酒に酔ったおっさんに絡まれた同じ制服の女の子を助ける。後日、校門前で助けた女の子から声を掛けられ猛烈なアプローチを受ける。
③これは言い逃れが絶対にできないはずだ。中学3年の時、大量のバレンタインチョコと一緒にラブレターを貰っていた。お姉ちゃんに食べきれないからと貰ったチョコの中にお手紙が入っており私はこの目で読み、驚いて大事なチョコを吹いてしまった。
「お姉ちゃん、モテモテだね」
「バカ…」
「さすが高瀬姉妹だわ。血は争えないね」
「これは確かめないといけないわね。今年のバレンタインでーが楽しみ。優希、どっちが多くチョコを貰うと思う?」
「うわー、悩むって。菜穂は今年卒業だし、水希はきっと恐ろしいぐらいのチョコを貰うと思うし」
「あの…水希ちゃんてそんなにバレンタインチョコを貰っているんですか?」
「去年は32個で中学の時は12個よ。宮田さん、妹に餌付けしちゃダメだからね」
「酷い言い方ー!」
お姉ちゃんは本当のファンから貰っていると思うけど、私は…餌付け!うん、優しい人達が餌付けで私にチョコをくれているだけだ。
だから、お姉ちゃんに敵うはずがない。芽衣が怖いし、めちゃくちゃ怖いし…本気で怖いし、お腹にあざができるかもしれない。
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