第419話

お姉ちゃんは私の人生を小説より奇なりだと言うけど、私からしたらお姉ちゃんの武勇伝の方が凄い。女王様前では何者もひれ伏す。



①幼稚園でも女王様だったお姉ちゃんには鞄持ちがいた(お姉ちゃんは命令はしていない。ドMの男の子が率先してやっていた)


②小学1年の時、毎日飴玉をプレゼントしてくる男の子がおり、その飴を私は毎日楽しみしていた(お姉ちゃんがくれるから)


③小学3年生の時、初めてお姉ちゃんはお菓子を作る。見た目は完璧、味は塩味のマドレーヌを味見担当の私は食べ悶絶する。



ここで、お姉ちゃんが私の話を遮り「武勇伝でもないし!」と怒るが続ける。これまでの私の人生も聞いてほしいからだ。



④小学4年生時、クラスで喧嘩が起きた。腹痛で遅れて登校したお姉ちゃんがドアを開けた瞬間喧嘩が収まる。


⑤小学5年生時、クラス替えで新しいクラスになったとき他のクラスのいじめっ子と同じクラスになった。お姉ちゃんはそのいじめっ子を30秒で大人しくさせる。

その子は卒業するまで真面目な生徒としてお姉ちゃんの忠実な僕(しもべ)となる。


⑥中学1年の時、初めてバレンタインチョコを作る。見た目は完璧、味は塩辛いチョコレートを味見担当の私は食べ悶絶する。


⑦中学2年の時、ナルシストで有名な男の子から告白され断る。その際、暴言を吐かれお姉ちゃんは100倍の正論で相手を自信喪失にさせ地味な男の子に変貌させた。


⑧中学2年の頃、初めて家族でキャンプに行きお姉ちゃんはカレーを作る担当になり危うく火事になりかけた。そして、味見担当の私はとても甘いカレーを食べ悶絶する。


⑨中学3年生の時、学校でお姉ちゃんにみんながひれ伏す女王様になる。私はその女王様の妹として有名になり居心地が悪かった。


⑩中学3年の卒業の日、大量の花束とお菓子を後輩から貰う。そして、お母さんがなぜかド派手な格好をしてきて、誰よりも目立っていた。私はお菓子を貰う条件で荷物持ちになり、恥ずかしさもプラスされ大量の汗を流す。



「まだまだありますが、とりあえずお姉ちゃんの武勇伝は以上です」


「流石…菜穂。想像以上だわ」


「だよね。私達って凄い人と友達なんだって知ったよ」



きっとお姉ちゃん同様、普通ではない人生を送ってきたであろう佐藤先輩と早川先輩がお姉ちゃんの武勇伝に驚いている。



「それにしても、ははは!菜穂の料理で水希、悶絶しすぎでしょ」


「お姉ちゃんの料理で何度も大変な目にあいました」


「優希、笑いすぎ!砂糖と塩を間違えただけでしょ!」



お姉ちゃんは完璧主義者で全てが完璧だけど、料理が実は苦手だ。キャンプで火事になりかけお母さんにしばらく料理を禁止された。

計量スプーンできっちり分量を量り、手際もいいのに途中とんでないミスをする。


高一の時、彼氏のためにケーキを作ろうとした。この時は砂糖と塩は間違えなかったけど途中余計なことをする。

スポンジの間に挟むクリームに大量のレモン汁をいれる。甘い物があまり得意ではない彼氏のために酸味をプラスするつもりがとてつもなく酸っぱいクリームが出来上がった。


この時、私は過去の経験から味見担当を辞退していた。その時、味見担当をしたのがお父さんでお父さんは酸っぱいのを分かっていながら何も言わなかった(娘を持つ父の気持ちは何となく分かるよ)

でも、お姉ちゃんも自分で味見したらいいのにと思う。被害者を出さないために。



「菜穂ってもしかして料理下手?」


「下手ではないわよ!多分…」


「今度、恵梨香にお菓子の作り方を教えて貰ったら?」


「えー…恵梨香、スパルタだし。それに、望も料理下手じゃん」


「失礼ね。カレーは流石に作れるわよ」



私は2人のやりとりに含み笑いをする。私が唯一、お姉ちゃんに勝てるのは料理と絵のセンスだ。私は芽衣のために料理の腕を磨き、お菓子も食べる派だけど作る事も出来る。



「凄いなー」


「妹の私はお姉ちゃんのせいで大変な目に遭うことが多くて大変だよ」


「2人とも凄いよ」


「えー、私は普通だよー」


「水希ちゃんは鈍感だよね。でも、ずっと変わらないでほしい」



優香ちゃんに鈍感と言われ、変わらないでと言われ戸惑うけど優香ちゃんが笑顔で楽しそうだからいいかと受け入れる。



「あっ、従姉妹からLINEが来た」


「同じ高校の従姉妹さん?」


「水希ちゃんと同じ高校の従姉妹だよ。あっ…ごめん。水希ちゃんと同じ高校にいる友達って従姉妹のことなんだ。見栄を張りたくて嘘ついちゃった」


「何で?従姉妹さんだけど友達でもあるなら嘘にはならないよ」


「そっか…うん!大事な友達なの。あっ、あとねLINEに水希ちゃん達と一緒に撮った写真を送ったら従姉妹から凄い!発狂する!ってLINEの返事がきたけど、やっぱりみんな有名なんだね。変なスタンプ連発だし」


「お姉ちゃん達は有名だけど、私は普通だよ。従姉妹さんって私達と同じ歳だっけ?」


「うん、部活は放送部だったかな」


「放送部…もしかして、眼鏡かけてる?」


「そうだよ。従姉妹を知ってるの?」


「まぁね…」



去年の体育祭の時から放送部で活躍している眼鏡ちゃんとは一度も普通に話したことはないけど、ステージ裏で何度も興奮気味に「ぐふふ」と見つめられた。



「真夏にね、水希ちゃんが歌ってる姿がカッコいいからHP見てと言われたの」


「えー、恥ずかしい」


「めちゃくちゃカッコよかったよ。水希ちゃんが人気あるの分かるし、生徒会長ときいて憧れたもん」


「宮田さん、水希の罠に引っかかっちゃダメよ。散々謙遜して、甘い歌声を聞かせるナンパ師の手口よ。妹はインキュバスと一緒よ」


「お姉ちゃん、酷いよ!(それに、インキュバスって何!?)」


「よく水希は私が一番モテるとか言うけど、絶対水希が一番モテるよね」


「そうだと思う。それに優希は憧れ的な感じで、水希への想いはガチ感が強いよね」



佐藤先輩の方が絶対にモテるのに…何で早川先輩まで乗っかっちゃうの。お姉ちゃんと先輩達が優香ちゃんを私から守る会を作ろうなんて言ってるし酷すぎる。

散々の言われようだけど、お姉ちゃんにもその傾向はあると知ってもらいたいよ。

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