第416話

Nao side.01



今から話すことは水希が中学3年生の時の話だ。水希が15歳になったばかりで、今も変わらない鈍感さと天然のタラシのせいできっと被害者が出たであろう話を今からする。


水希は私と同じ高校を受験するため、私の指導のもと毎日勉強に励んでいた。私も水希のために心を鬼にし、水希がサボらないように勉強する水希の後ろに立ち見張っていた。


私は水希に対して厳しくしすぎたのかもしれない。勉強が嫌になり一度水希が逃走した。

その日は家に帰って来ず、お母さんに電話は掛けたみたいだけどどこにいるのかを言わず電話をきり、私の知らない空白の1日を過ごす。


後日、私はあの手この手で水希の情報を集めた。後輩を使い、水希の最近の近況や仲のいい人達の情報を聞き出しある情報を掴む。

水希は休み時間になると時々図書室に行っていた。図書室の隅に行き、窓際の椅子に座りある人と話をしていたみたいだ。


ここがポイント。その際、水希と一緒の時間を過ごしていたのは実は先生だった。

普通だったら学生が図書室で一緒に過ごす人といったらみんな生徒と思うだろう。でも、水希が一緒に過ごしていたのは女の先生。


そして、そして、もう一つのポイントはその先生はとても可愛い女性ということ。

流石としか言いようがない。水希の周りは常に可愛いくて美人がいる(常にハーレム状態で水希自身は分かっていない)


そんな先生とお昼休みに一緒に過ごし、仲良くなった水希は勉強が嫌で逃亡した日、先生の家に泊まった。



「お姉ちゃん…そこまで調べたの」


「当然よ、私に知らないことはないの」


「水希…先生にまで手を出したの?」


「そんなことしてないです!」



優希が呆れ顔で水希を問いかける。優香ちゃんは水希の話を聞いて口がずっと開いている。きっと、話が衝撃的なのだろう。



「水希、正直に言いなさい。その先生とは本当に何もなかったのよね?」


「だから、何もないって!」


「一緒のベッドにも寝てない?」


「それは、、でも!先生が一緒に寝ようって」


「水希、最低ー」


「早川先輩…そんなに引かないで下さい」



私の妹のタラシっぷりはずっと誰かが見張っていないと被害者を出し続ける恐れがある。

ずっと尻拭いをしてきたのが私だ。幼稚園の頃から水希を好きになり想いが伝わらなかった子達を慰めてきた(妹の悪口を添えて)



「先生とは本当に何もないから。ただ、勉強の相談に乗ってもらっていただけだよ…」


「何で、逃亡した日に先生の家に泊まったの?普通だったら友達の家でしょ」


「それは、たまたま先生と会って…事情を話したら家においでって言ってくれて」


「ふーん、偶然ね。一体その偶然の確率はどれくらいなんだろうね。凄い確率ね」


「お姉ちゃん、いい加減疑うのはやめてよ」



疑いたくなるのは当然だ。優希も望も優香ちゃんさえ頷いている。水希の人生は小説より奇なりすぎるんだ。



「はい、質問!先生とは一緒にお風呂に入りましたか?」



優希が突然恐ろしい質問をしてくる。顔がニヤけているからわざとだろう。きっと、場を盛り上げようとしてるのかもしれない。

だけど、我が妹は空気を読まず場を混乱させる。お陰でみんな後ろに倒れそうになった。



「入りましたけど…」


「はぁ?あり得ないから!」


「えっ、何で?だって、友達の家に泊まったりしたら必ず友達とお風呂に入っていたから普通だと…お姉ちゃんも友達と一緒にお風呂に入るでしょ?」


「友達と先生は違うわよ!」



なんて恐ろしい妹なの。私は水希を侮っていた。いくら友達とお風呂に入るからって、先生とも平気でお風呂に入るなんて…水希の頭はネジが10本以上飛んでるのかもしれない。



「水希ちゃん…あの、、その先生とはどんな風に仲良くなったの?先生とそこまで仲良くなるなんて凄すぎて(あり得ないし)」


「鐘村先生とは普通に仲良くなったよ」


「バカね、宮田さんが聞きたいのはきっかけを知りたいのよ」


「えー、きっかけって言われても分かんないよ。あっ、声を掛けたのがきっかけかも。図書室で先生が泣いていたの。たまたま、他の先生に頼まれて本を図書室に運ぶことになって、片付けまで手伝わされることになって動いていたら、図書室の隅の所の窓の近くに先生がいて泣いてたから目がゴミが入ったのかなって声を掛けた」



水希は無意識で行動することが多く困ったものだ。側からみたらナンパの行動と同じで、それに人は弱っている時に優しくされると心が大きく揺れやすい。水希の手口(タイミング)は最悪で本当に困ったものだ。


そして、水希の凄いところはまさに常識が通じないことだ。女の人が泣いている時、普通声を掛けることを躊躇する。でも、水希はなぜか違う解釈をし平気で声を掛ける。

空気が読めない感じでもあるけど、その空気の読めなさに助けられて人は多い。



「これが…天然のタラシなんですね」



私は宮田さんの言葉にハッとする。優希も望も宮田さんの言葉に同じようにハッとしていた。水希を知ってるからこそ、水希の行動をすぐに受け入れてしまったけど、水希の行為は天然のタラシそのものだ。

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