第415話
優香ちゃんの一言目に私の心臓が痛くなる。
「芽衣…私のこと嫌いだよね」
私はすぐに否定をしたかった。でも、芽衣の態度が頭に過り否定できなかった自分が悔しい。優香ちゃんの悲しい顔なんて見たくなかったのに。
「ごめんね、こんなこと聞いて…」
「優香ちゃん…」
落ち込む優香ちゃんに何も言ってあげられない自分が情けなくて苦しい。
「そんなことないよ」と言えたらいいのに、優香ちゃんが一番苦しいはずなのに私も胸が痛くて私まで泣きそうだ。
友達と思っていた人が自分のことを友達と思っていなかったと分かった時の苦しさを自分に投影したらとてつもない苦しみがくる。
嫌だな、こんな感情。芽衣の気持ちをきちんと聞いてないし芽衣の苦しみも分かってるのに優香ちゃん寄りになっている。
どっちかになんて傾いたらダメだ。それに私は芽衣の恋人だ。そんな時、昔見たあるドラマの言葉を思い出した。
好きな人の言っていることを信じなくてどーすんだって!あんなに共感した言葉なのに私は揺れてしまった。
きっと私が弱いせいだね。ダメな恋人だよ。
「優香ちゃん、芽衣の気持ちは私には分からない。芽衣が言っていたのは…中学時代のことが過ったみたいで怖いって言ってた。私を優香ちゃんに奪われるのが怖いって」
「水希ちゃんを?」
「私と芽衣は付き合ってるから」
「えっ、そうなの?」
「うん。ごめんね、彼氏がいるって嘘ついた。本当は芽衣と付き合ってる」
私の言葉に優香ちゃんが驚いた顔をしている。そして、優香ちゃんがまた落ち込んでしまった。
「私…またやっちゃった。芽衣からしたら私は不安になる存在だよね」
「そうみたい。でも、ちゃんと優香ちゃんの中身を知ったら大丈夫だと思う」
「芽衣は唯一の友達だったの。中学の時、私と話してくれた大事な友達で…だから、久しぶりに会ったとき嬉しくて、それに水希ちゃんと初めて会った時、笑顔が優しくて水希ちゃんとも仲良くなれたらと欲張っちゃった」
芽衣、やっぱり優香ちゃんは良い子だよ。
「今度、3人で遊ぼうよ」
「でも…」
「大丈夫。私がいるとカラフルなお花畑になるみたいだから、みんなで笑い合おう」
優香ちゃんが泣いている。こんな時、ドラマだったら優香ちゃんを私が抱きしめるシーンだ。だけど、私の側にはお姉ちゃんという規律を守る元生徒会長がいる。
ドアがいきなり開き「脳内では素敵なBGMが流れていると思うけど、私がドラマみたいな展開にはさせないからね」と言い放つ。
「そんなことしないし(危なかった…)」
「宮田さん、水希の姉として注意事項を伝えるわね。妹の水希は要注意人物よ。最強の天然のタラシだから気をつけて。優しい→いい人だな→安心する→この人が恋人だったらって誘導するナンパ師だから」
「お姉ちゃん、酷いよ!」
「本当のことよ。幼稚園の頃から何人の女の子をたぶらかしてきたと思ってるの。いつか被害者の会ができて訴えられるわよ」
「嘘はやめてよー」
「はぁ?私がどれだけ水希の尻拭いしてきたと思ってるの!これは最後まで秘密にしておこうと思っていたけど話すしかないわね」
怖い、怖い、怖い。腰に手を置き、とんでもないことを話し出そうとしている。
「あの…とりあえず部屋に入らない?」
「うん、廊下で騒いだら下に響くし」
佐藤先輩と早川先輩に苦笑いされながら背中を押され、私は怯えながら部屋に入る。
お姉ちゃんのせいで芽衣への電話をまた中断された。後日談はのちのち分かるけど、確定事項を書いておく。私は芽衣に沢山怒られる。
携帯が芽衣と繋がっていたことで優香ちゃんへの嫌悪感を取ることになった。
でも、今から話すお姉ちゃんが秘密にしていた話で私は芽衣からお仕置きをされる。
何で私はこんな役回りばかりなんだ。私は平々凡々の人生を送ってきた。
なのに、いつも私の知らない所で色んなことが起きている。おかしい、非常におかしい。私こそが被害者だと言いたい。
お姉ちゃんは私の勉強椅子に座り、先輩達と優香ちゃんはベッドに座り、私は床に正座をする。ラグを敷いているから私の脛への負担は少ないけどこの構図に納得がいかない。
「宮田さん、今から話すことは事実よ。水希が如何に要注意人物かを知ってほしい」
「お姉ちゃん、やめてよー」
「宮田ちゃん、このサイトを後で見て。菜穂が水希のこれまでの人生を書いてるから」
「佐藤先輩まで酷いですー。みんながそのエッセイを読んで私を罵倒するからどんなことが書いてあるか怖くて、、それに芽衣にめちゃくちゃ怒られたんですから」
「芽衣ちゃんは偉いよね。水希はめちゃくちゃ優しいけど、天然で天性のタラシだから水希がやらかす度にいつも水希にお仕置きしないといけないし感心するわ」
早川先輩まで参戦してきて、2人の言葉を聞いた優香ちゃんは目を大きくして驚いている。優香ちゃんにも苦笑いされるなんて、せっかくのお正月なのに地獄すぎる。
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