第399話

今日は部活がない日で芽衣の家でゆっくり過ごす予定で私はウキウキしていたのに真里ちゃんに体育館に連れてこられため息を吐く。

可愛いがっている真里ちゃんに戦いを挑まれ、私と真里ちゃんは体育館で対峙する。そして、ギャラリーがガヤガヤとうるさい。



「高瀬先輩、負けませんからね!」


「えー、、負けでいいよ」


「こらー、水希!ちゃんとやりなさい」



くそ、お姉ちゃんめ。訳もわからず対決を申し込まれ、やりたくもない対決を今からしないといけないのにギャラリーは楽しそうに私と真里ちゃんを応援している。

受験生のお姉ちゃん、恭子先輩、松村先輩やいつものメンバーが楽しそうに私達を見て笑いムカついてきた。唯一、心配そうな顔をしているのが朱音ちゃんだけだった。



「互いに得意分野の競技以外のスポーツで勝負です!3回勝負で2回勝った方が勝ちでいいですか」


「分かった…早く帰りたいから早くやろう」


「それではまず卓球からです!」



卓球台が重い。誰も手伝ってくれないから真里ちゃんと2人で倉庫から卓球台をだしラケットと球を用意した。私は使い慣れているシェークハンドのラケットを選んだ。

真里ちゃんは私の真似をして同じ握り方をしているけど、選んだラケットはペンハンドで握りにくそうだ。だから、教えようとしたけど「始めましょう!」言われ言えなかった。



「10点マッチの勝負です!」


「はーい」



実は私は卓球を昔から好きだ。とりあえず私は、まずサーブにカット(球に回転をかける)をかけ真里ちゃんの実力を見る。

ラケットの持ち方で初心者とは分かっているけど真里ちゃんの実力次第では私も本気で挑まないといけない。



「えっ、、あっ、、」


「真里ちゃんー、水希はカットかけてるからちゃんとした打ち返ししないと返せないよ」


「えっ、カット、、?」


「やったー、まずは一点」



お姉ちゃんが真里ちゃんにアドバイスしているけど真里ちゃんは卓球の知識がないみたいで戸惑っている。私はこれは勝負であり、わざと負けるのよくないと全力を出した。

実は私とお姉ちゃんは卓球が得意だ。お父さんが学生の時、卓球部であり家に小さいけど卓球台があり幼い頃からやっていた。


真里ちゃんが打つヘロヘロの球をスマッシュで打ち返し、私はコテンパンに真里ちゃんを負かした。これは勝負だし仕方ない。

だけど、ギャラリーからブーイングがくる。特にさわちんが「水希、内緒の得意分野で勝負するなんて先輩として酷いぞー」って言いがかりを言ってきた。



「田村先輩…大丈夫です。次は勝ちます」


「次はどのスポーツでするの?」


「次はバトミントンです!」


「バトミントン?あっ、でも…」


「先輩、逃げるのはなしですよ!」



逃げはしないけど、私はチラッとお姉ちゃんを見る。幼い頃、お姉ちゃんはバトミントンにハマり私はいつも対戦相手をしていた。

そのお陰で、、私の目の前には床に打ちひしがれる真里ちゃんがおり「負けた…」と絶望感に襲われている真里ちゃんに心が痛い。



「真里ちゃん…あのね、この勝負無効にしない?2つとも私がよくやっていたスポーツだったし」


「でも…」


「そもそもさ、何で私に対決を挑んできたの?私、真里ちゃんに何かした?」



そもそもの話なのだ。私はなぜ真里ちゃんに戦いを挑まれたのか分からない。



「朱音は、、渡しませんから!」


「えっ…何でそんなことになってるの」


「高瀬先輩のこと、今までタラシなんて思ったことなかったですが…朱音に対する態度を見て、やっと先輩のタラシぶりが分かりました」


「私は何もしてないよー」



ギャラリーもやっとこの決闘の意味を知り、一斉にため息を吐く。「またか…」と誰かが言い、私に対する暴言まで出てきた。

でも、こんな時に張り切るのがお姉ちゃんだ。3番勝負だからと言い、ラストの勝負で私が負けたら真里ちゃんに謝ることになり、ぐぬぬ…となったけど受け入れた。


何もしていないのになんて、いつものことで、私の不運な人生は変えられない。

だったら私は勝負に絶対に勝つ。次の勝負が何か分からないけど悔しいから勝つと決めた。みんなは面白がっているけど私は何もしていないのに謝らないといけない。


そんな私の心の中の決意にお姉ちゃんはいつも水を差す。勝手に3番目の競技を決め、真里ちゃんが得意な必ず私が負けるであろうバレーで勝負と言ってきた。

酷い、お姉ちゃんは私に無罪なのに謝らせるつもりだ。いくらお姉ちゃんでも酷すぎる。



「お姉ちゃん!バレーなんて私に不利だよ」


「だから、2対2で勝負よ。佐々木さんは松村さんと水希は私とペアよ」


「それだったら…」



ギャラリーは私とお姉ちゃんがペアを組んでも流石にバレー部の真里ちゃんと朱音ちゃんには勝てないだろうと思っているはずだ。

私も自信はないけどもしかしてと思っている。それはなぜか…私とお姉ちゃんは小さい頃からお母さんに連れられ、夜な夜なママさんバレーで鍛えられたからだ。


私とお姉ちゃんがバレーを部活でやらなかったのはお母さんに無理やり指導されていたからであり、あまりのハードさに部活でなんてバレーをしたくなかった。

お母さんのお陰で体力はついたけどあれは…キツかった。でも、その反動でお姉ちゃんに無理やりやらされたけど自由にできるバトミントンが楽しかったのかもしれない。



「水希、ミスしたら許さないからね」


「お姉ちゃんもね」



こうやってお姉ちゃんとバレーをやるのは久しぶりだ。コートに入ると自然と体が動く。

真里ちゃんのサーブをお姉ちゃんが受け、私はお姉ちゃんにトスをする。

これがいつものフォーメーション。ママさんバレーで鍛えられた動きと勘は鈍っていない。



「えっ…」


「よっし、まずは一点!」


「お姉ちゃん、ナイス!」



お姉ちゃんはアタックが得意で、アタックが苦手だった私はサーブを強化するため、お母さんにがむしゃらに練習させられた。

あの頃のやり方を思い出しながら私は得意なサーブを打つ。この感覚、懐かしい。そして、サーブ点が入りガッツポーズする。

私とお姉ちゃんは試合に夢中になり、ママさんバレーで培ったバレー力を発揮する。

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