第400話

Erika(Matsumura).side



私は指の爪をぎりぎりと噛む。こんな逸材が近くにいたなんて、取りこぼしていたなんてめちゃくちゃ悔しくて堪らない。

私は高瀬姉妹の運動神経を舐めていた。水希はバレーの試合を見るのが好きとは言っていたけどこんなにも出来るならなぜバレー部に入らないのと怒りたい。


菜穂も菜穂だ。なぜ、こんなアタックが打てるのに陸上部に入るかな。菜穂とはクラスが違い体育が一緒ではないからこんなにもバレーが上手いと知らなかった。

もし、この2人がバレー部に入っていたらと考えると悔しい!悔しすぎる!

そして、現役バリバリで新エースになるであろう真里と朱音が高瀬姉妹に押されている。



「真里!朱音!負けると許さないからね!」


「「はい!」」



私は立ち上がり2人に檄を飛ばす。バレー部が陸上部に負けるなんて許されないし、私が許さない。それに、ここで2人が負けてしまったら自信喪失になり凹む可能性がある。



「水希、ブロック!」


「分かった!」



高瀬姉妹のコンビネーションが良すぎて、真里のアタックがブロックされる。2人とも身長が高いし…あー!悔しい!

私以外のギャラリーはみんな唖然としながら息を呑みながら応援をしている。


それほど…悔しいけど接戦で高瀬姉妹のコンビネーションが良く上手すぎるのだ。

そして、私は絶句する。水希ってこんなこともできるの?嘘でしょ!何で陸上部で短距離なんてしてるのよ!菜穂が無理やり入れたからだけど、ムカつきすぎてイライラする。


高瀬姉妹に絶好のアタックチャンスがきて、真里と朱音は菜穂のアタックに備えて構えていた。でも、水希はトスをすると思わせてツーアタックをする。

みんなポカーンとしている。真里と朱音も全く動けずボールはコートに落ちた。高瀬姉妹はハイタッチをし「同点〜」と喜んでいる。


菜穂は水希のツーアタックに驚いていなかったから水希は何度もやったことがあるのだろう。水希もスムーズにやっていた。

ちゃんと相手コートを見ることもできており、セッターとして身長もあるし最高だ。

私は地団駄を踏む。イライラしすぎて隣にいる芽衣ちゃんが怯えている。



「タイム!タイム!タイム!」



私は無理やりタイムを宣言し、真里と朱音の呼び寄せる。これだけのギャラリーがいる中でバレー部が負けるなんて絶対にダメだ。



「真里、水希の動きをちゃんと見て!あと、朱音!ブロックが遅い!菜穂に追いついてないじゃん!」


「すみません…」


「ごめんなさい…」



私は2人に喝を入れながら高瀬姉妹を見る。水希が…水希がムカつく!何が見る専門だー!バレーできるじゃん!

ギャラリーから尊敬の眼差しを送られる高瀬姉妹。未来ちゃんとひかるちゃんなんてずっと菜穂がアタックを決めるたびに歓喜しているし、真里と朱音の息が荒いのに高瀬姉妹は…平然としていていて悔しすぎる!



「水希のバカー!」


「えー、松村先輩、、酷いですー」



私はつい水希への強い思いを言葉にしてしまった。でも、高瀬姉妹がバレー部だったら3年に菜穂と私がいて、2年に水希、1年に真里と朱音。最高のメンバーが揃う。

悔しくて、悔しくて、ムカつきが最高潮になった私は水希に襲いかかる。



「ぎゃー、松村先輩、やめてー!」


「水希!何でバレー部に入らないのよ!何がバレーは見る専門だ!こんなにも上手いならバレー部に入りなさいよ!」


「ちょっと、、恵梨香。落ち着いてよ」


「菜穂もよ!あー、高瀬姉妹がムカつく」



私のせいで場外乱闘という一番最悪な試合になる。真里と朱音は呆然とし、私はずっと水希を羽交締めにした。



「恵梨香、試合が出来なくなるから」


「うぅ、、ごめん…」


「あっ、、ごめん。試合はこれで終わりね。家庭教師の晴菜さん来ちゃうから!」



えっ、菜穂が時計を見て慌てて帰ろうとする。まだ試合は途中で止めようとしたけど、鞄を持っていなくなってしまった。

確かに既に2時間以上経っており、、でも、まだ試合は終わっていない。



「あの、私も帰っていいですか…」


「水希はダメ!」


「でも、お姉ちゃん…帰っちゃったし」


「うぅ、、分かったわよ…ねぇ、何で高瀬姉妹はこんなにもバレーが上手いの?」


「お母さんに小さい頃からママさんバレーに連れて行かれて一緒に試合してました」


「何年ぐらい…?」


「えっと…小学1年の頃から中学2年までなので8年ですね」



8年って私よりバレー歴が長い…私は中学から始めたからまだ6年だ。朱音と真里も同じ中学からだから4年目で…ため息がでる。



「高瀬先輩…負けました」


「えっ、同点だから真里ちゃんは負けてないよー」


「いえ、負けです…でも、絶対に強くなります!次は負けませんから!」



高瀬姉妹には悔しい思いをさせられたけど真里の顔を見て良かったと思えた。きっと、真里も朱音も今まで以上に強くなる。2人とも悔しそうな顔をしている。


でも、最後に水希を叩きたくなるのは水希のせいだ。試合が終わった途端、芽衣ちゃんに甘える水希が最高にムカつく。

芽衣ちゃんに褒められデレデレした顔にみんな呆れてる。水希らしいけど。



今日の試合で私は卒業するまで真里と朱音を猛特訓すると決めた。私は専門学校に行く予定で受験はない。

冬休み、みっちり指導しなきゃ。私は早速、真里と朱音に明日からの指導のスケジュールを伝えた。2人がイヤーっと雄叫びをあげたけど知らない。陸上部に負けないから!

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