第398話

朱音ちゃんの態度が変わってから私は毎日、ドキドキしながら学校に行っていた。

このドキドキは恋とかではない、ハラハラドキドキのドキドキだ。

神出鬼没の如く、甘い声で高瀬先輩と声を掛けられその度に私は「ひぃー」と声を出す。


そんな憂鬱な気持ちを抱きながら生徒会と守田さんと先生達とで交流会に向けて話し合う日がまた来た。

もうすぐ交流会の日が迫っており、体育館で東條大学について話す守田さんのサポートを生徒会はすることになっている。


私はこの日をハラハラドキドキしていた。朱音ちゃんのこともあるけど、また真里ちゃんが守田さんに対して「可愛い」と言わないか不安でさわちんとごんちゃんと不安視していたけど杞憂に終わった。

守田さんの前でも普通に接する真里ちゃんを見てホッとした。もしかしたら、守田さんにもう慣れたのかもしれない。


安心して打ち合わせを進め、後は本番の日を迎えるだけなんだけど真里ちゃんの私に対する態度がおかしい。

守田さんには普通なのに私に対して距離を作り、打ち合わせ中何度も視線を感じた。

でも、声を掛けようとすると距離を取られ、打ち合わせが終わったあと私は先生と一緒に玄関まで守田さんを見送った。


初めての真里ちゃんの態度に落ち着かない。でも、生徒会室に戻るとさわちんとごんちゃんしかおらずため息を吐くしかなかった。



「真里ちゃんと朱音ちゃん、帰ったんだね」


「真里ちゃんが用事があるのでって朱音ちゃんの腕を引っ張って急いで帰ったよ」


「松村さんは水希のこと待ってるって言ったけど佐々木さんが強引に松村さんを連れて帰ろうとしてた」



やっぱり、真里ちゃんの様子がおかしい。ごんちゃんもさわちんも真里ちゃんの様子がおかしいのに気づいており、どうしたんだろうと不思議がっている。



「私、真里ちゃんに何かしたかな?」


「水希は無意識に何かしでかしてるからね」


「さわちんには言われたくない」



真里ちゃんに対しての何かをやったかなんて心当たりなんてなくて私は首を捻る。



「水希、早く帰ろうよー。ひかるちゃん、待ってるから」


「分かったよ」



ひかるに早く会いたくて駄々をこねるごんちゃんに急かされ私は考えるのを中断した。

もしかしたら本当に急ぎの用事があったのかもしれない。きっと、明日には元に戻っていると安易な考えをしながら。


でも、私の安易な考えは打ち崩された。交流会の日、生徒会は一度集まり最終打ち合わせをする。その際、一度も真里ちゃんは目を合わせてくれず代わりに朱音ちゃんが率先して私の所に来てくれて交流会を進めた。

守田さんのサポートをしながら私は東條大学の話に胸を躍らせる。学科やサークルなど高校とは全然違う華やかさにワクワクした。


芽衣と絶対に東條大学に行きたいと心に決め、もっと勉強を頑張らないとと思った。

特にごんちゃんは守田さんの話を聞きながら奮起している。ひかるも東條大学を目指しており、私も絶対に行く!と鼻息が荒い。



「守田さん、今日はありがとうございます」


「いえ、こちらこそ楽しかったです」



今までだったらここで何か波乱が起きるだろう。でも、今回も何も起きない。

ごんちゃんが抜け目なく、守田に恋人がいるのを聞いているから当たり前だけど何も起きなかった。今は…の話だ。


交流会が終わり、後は終業式を迎えたらクリスマスがやってくる。

私は何事もなく終業式を迎えると思っていた。でも、真里ちゃんのことを放置していた罰なのか今になって色々と動き出した。


真里ちゃんは真面目な子だ。真面目すぎて色々と悩むタイプで、とうとう爆発したみたいだ。私からしたらなぜ?だけど、真里ちゃんは大真面目な顔をして終業式のクラスのHRが終わり私は芽衣と帰ろうとした。

だけど、靴箱に真里ちゃんがおり私は対決を申し込まれる。いわゆる、決闘だ。


真里ちゃんの後ろで心配そうに見つめる朱音ちゃん。何の対決なのか分からないけど嫌な予感はする。きっと、面倒くさいことだ。

私はとりあえず他で話そうと提案をした。他の生徒にジロジロと見られるのが嫌で恥ずかしかった。私は目立つことが嫌いなのに…いつも何かしらに巻き込まれる。

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