第372話
Nao side.04
佐々木さんと松村さんはもうすぐ付き合って約1年になる。中学生時代からの両思いで2人は高校生になりお付き合いを始めた。
大人っぽい佐々木さんと可愛い松村さん。お似合いのカップルであり、微笑ましいカップル。アニメにいるような美男美女だ。
そんな佐々木さんの悩みはなかなかデリケートでディープな相談内容だった。
話の流れは
①1ヶ月前に…結ばれた(随分遅いわね)
②二度目がなかなか出来なくて悩んでいる
③そのせいで一度浮気を疑われたけど、ちゃんと誤解は解けた
④どうやったらそんな雰囲気を作り、勇気を持てるかを知りたい
⑤あと、彼女側の意見を聞きたい
佐々木さんは思っていた通りピュアな子だ。だからこそ、二度目がなかなか出来ず悩んでいる。頭を撫でてあげたくなってきた。
でも、経験者の芽衣ちゃんと未来ちゃんは真剣な顔で「勢い」「迫る」「押し倒す」など佐々木さんを困惑させる言葉を言う。
正解ではあるけど、アドバイスされたことをできるなら悩んではいないと思う。
「あの!そういう雰囲気って…どうやったらできますか?それとも、水希先輩や田村先輩がグイグイとくる感じですか?」
私以外のみんなの顔が笑っている。笑顔とかではなく、口角だけが上がっている。
誰よりも真剣に佐々木さんの話を聞くひかるちゃんは今日の話を今後の参考にしようと目をギラギラさせている。
みんな、この場に水希の姉がいることを忘れているようだ。まさか、妹の性事情を聞くことになるとは、、心のスイッチを切ろう。
「爽子はグイグイとくるよ。キスも付き合った日にされたし、毎日キスされて喧嘩した」
あの時の話ね。家の前で田村さんと水希が喧嘩し、未来ちゃんに激怒されていた。あれは、確実に田村さんが悪いから仕方ない。
「田村先輩、凄いです…でも、なぜ喧嘩を」
「だって、初めての交際なのに毎日キスなんて戸惑うし、心が追いつかないよ」
「そうですよね…気持ち分かります」
女の子は基本、恋愛的行為は受身になるゆえ相手側は自分の気持ちをぶつける際、相手をちゃんと理解しないと喧嘩になる。
その点、水希は大丈夫そうだ。芽衣ちゃんが軽い感じで「大変だね〜」と言っている。
って、心のスイッチを切ったはずなのについ聞き入ってしまった。野次馬感情ではないけど、あの件は私も関わっているからこそあの時のことを思い出し、話に取り込まれる。
「佐々木さん、ムードづくりは大事だよ。あと、ガッツいたらダメ。それで、爽子に怒ったことがあるから」
「でも、さっき…押し倒すって」
「ムードがあっての話だよ」
はい、ごめんなさい。これ以上私には語れません!心のスイッチを切れない私は、水希が前に壁に張り付き体育座りしていた時と同じ格好をし壁に張り付いている。
芽衣ちゃんの話を聞くわけにはいかず、私は壁を見つめ…いつのまにか寝ていた。日々の受験勉強疲れもあるけど、今までの人生の中で一番疲れた日だ。初めて現実逃避をした。
恭子に体を揺らされ、私は目を覚ます。みんな、ホクホクした顔で楽しそうだ。
佐々木さんもタメになる話が聞けたのか、もう情けない顔をしてない。ひかるちゃんは真剣に携帯に今日のことをメモっている。
「話は終わったの?」
「うん、菜穂…寝てて正解だよ」
恭子が真剣な顔で言うから芽衣ちゃんの口からリアルな話が出たのだろう。
芽衣ちゃんと目が合うと、顔を赤くされ私は苦笑いする。聞かなくてよかった…
私はヨタヨタと家路を目指す。家に着くと鞄を床に置き、ソファーで横になりながら携帯を触っている水希の上に乗っかった。
疲れた…水希が下で何か言ってるけど無視をする。もう一歩たりとも動けない。
しばらく語り手はお休み。そして、水希にこれからは今よりも優しく接しよう。
みんなをちゃんと見て、優しさを振りまく水希は凄い。改めて色んなことに巻き込まれる水希の大変さと優しさに感心する。
水希が女の子にモテる理由がやっと分かった気がした。女の子が抱く理想の優しさを持ち、怒らないし、男気もあり、大きな器を持っている。水希が妹で良かった…初めて誇らしい気持ちなれたよ。
今日、【リアルは小説より奇なり〜なぜモテ街道を爆進する妹の青春日記〜】に一言書かないといけないことがある。
妹は危険分子だと。水希の優しさに改めて気づき、恭子同様私の恋までも難解にさせる。
やっと気づいた、私が元彼と別れた本当の理由。水希の優しさが当たり前の私は裏のある優しさにウンザリし、器の小さな心にゲンナリした。水希と比べてしまったんだ。
非常にまずい。私の下で諦めて携帯を触る水希の上が居心地がいい。
高瀬水希に一番毒されていたのは私だった。そんな私は18年目にして、重度のシスコンであることに気づかされる。
マジか…
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