第373話
11月半ば。秋真っ盛りの季節で、お腹が空きやすい季節だ。私はお菓子をポリポリと食べながら漫画本を読む。
部活で運動をしているから今はいくら食べても太らないが、寝たままお菓子を食べることを習慣づけてしまうと運動をしなくなった途端太るから気をつけないといけない。
それでも、スナック棒をポリポリと食べることがやめられずお気に入りのチーズ味の袋を開け、またポリポリと食べ続ける。
最後にもう一つと手を伸ばし、今日はここまでと決めて袋を開けようとすると、部屋のドアが開きお姉ちゃんが入ってくる。
最近のお姉ちゃんは勉強の合間の休憩の度に私の部屋に入ってきて私の背中の上で寝ようとする。私はマット代わりで、何度も文句を言ったけどやめようとしないから諦めた。
私はなすがままにマットになり、漫画本を読み続ける。私がずっとポリポリと食べていたスナック棒はお姉ちゃんに貰ったものだ。
きっと、交換条件で渡してきたに違いない。スナック棒の魅惑に負けた私は下僕化する。
いつまで経っても下僕から抜け出せない私は諦めが早い。それにお恵みがあるならと受け入れも早い。スナック棒の呪縛だ。
そう言えば、最近のごんちゃんの機嫌がすこぶる良い。ひかるとの関係が上手くいっているみたいで、もしかしたらと思っている。
友達の恋路を温かい目で見守りつつ私は真剣に漫画を読み耽る。勉強の合間の漫画は私に最高の息抜きを与えてくれる。
それにしてもいつまでお姉ちゃんは私の上で寝るつもりなんだ。最近のお姉ちゃんはおかしい。こうやって…スキンシップっといっていいか分からないけど距離が近い。
女王様であることは変わらないけど、違和感を感じる。この近い距離感は小さい頃以来だからか体と心がむず痒い。
お姉ちゃんが高校卒業するまで後4ヶ月。もう半年を切った。大学生になっても実家通いだけど、学校にお姉ちゃんがいないのは寂しい。そんなことをさわちんに言ったらシスコンか!ってツッコまれた。
幼稚園からお姉ちゃんが同じ学校にいる生活を送ると、そう思ってしまうのは仕方ないと思うけど…シスコンって言われるなんて心外だ。女王様と下僕の関係なのに。
今もこうやって私はお姉ちゃんのマット状態だ。じっと我慢の時間が続く。
私の上で眠るお姉ちゃんから寝息が聞こえる。本気で寝ているから全体重が私にかかり私はこのままでは一反木綿みたいにひらひらになるかもしれない。
このまま宙に飛べたらお姉ちゃんをベッドまで運べるのに私はなすすべもなく寝た。
私は寝付きがよく、小さい頃からどこでも寝るタイプで横になり目を瞑るとすぐに眠気がきて寝てしまう。だから、小さい頃から親に手のかからない子だと言われてきた。
普通、このパターンの寝方だとお姉ちゃんが途中で起き自室で寝るだろう。
でも、お姉ちゃんは朝まで起きず私は朝まで私はマットになっまま朝を迎える。
一反木綿にならなかった私は体がバキバキになり全身筋肉痛で朝食を食べる。
今日は芽衣と外デートなのに体が痛すぎる。何度も肩を回しながらもそもそと朝食を食べ、熱いお茶を飲み天を見上げた。
首が痛い、肩が痛い、背中が痛い、お姉ちゃんは今も私のベッドで眠り続け、今日はお昼まで起きないだろう。女王様すぎるぞ。
朝ご飯を食べ終わった後、私は入念にストレッチをする。やっと体がほぐれてきて頭もスッキリしてきた。
お気に入りの洋服に着替え、私は髪を整える。鏡を見ながら、髪が伸びたなって髪をくるくると指に巻きつける。
ボブより少しだけ長くなった髪型を見ながら、女子力ってどうやったら上がるのだろうと考えたけど一瞬で諦めた。
やばい、約束の時間の1時間前だ。早く行かないと30分前に着かなくなってしまう。
芽衣より先に着き、行く予定のカフェの下調べをしないといけない。
靴を慌てて履き、私は空を見上げ首を回す。首が、肩が、背中がやっぱりまだ痛い。
気を紛らわすため耳にイヤホンを付け、私は鼻歌を歌いながら待ち合わせ場所まで急いだ。
ふん〜ふん〜ふん。携帯でカフェのインスタを見ながら芽衣が来るのを待つ。あと、10分ぐらいで可愛い姿をした芽衣が来る。
ノリのいい音楽が私の心を弾ませる。伸びた髪を耳にかけ、私はふと顔を上げると知らない男の子と目が合った。
目が合ったのは2秒程ですぐに目が逸らされ、私も携帯にまた目を向ける。
でも、10秒後に私の前に影ができる。また顔を上げると、さっき目が合った男の子が立っており、声を掛けられた。
何だろうと思っていると「高瀬…?」と私の名字を呼ばれ私は男の子の顔をじっと見る。
何で私の名字をって思っていると、私は5秒考えてハッとした。中学の時、同じクラスだった高山君だ。席が近くてよく話していた。
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