第371話

Nao side.03



「さわちんが浮気するなんてありえないよ。さわちんと未来ちゃんが喧嘩した時、未来ちゃんに土下座をして許してもらおうとしたのを私が止めたもん。それに、さわちんってヘタレだよ。ごんちゃん並みにヘタレで、クールぶってるけど未来ちゃんが拗ねたりするだけで私に相談してくるし、未来ちゃんにキスを拒否された日なんて泣きながら電話してくるぐらいなんだよ」



この言葉には私の口が開いた。みんなポカーンと口を開き、呆気に取られている。

そして、また芽衣ちゃんは顔を赤くする。自分の発言にやってしまったと反省をしている。まさかの暴露話にビックリした。



「爽子が…芽衣ちゃんに相談していたなんて意外だった。そっか、ふふ。泣きながら相談なんて笑っちゃう。芽衣ちゃん、爽子の相談に乗ってくれてありがとう」


「うん…さわちんには内緒ね」



今日の相談会は思わぬ方向に行くから私はビクビクしないといけない。ただ、その度に芽衣ちゃんのビックリ発言があり面白い。

ずっと、水希にこんなに可愛い女の子が恋人だなんてって思っていたけど芽衣ちゃんと水希だから合うのかもしれない。



「はぁ、スッキリしました。ただ、爽子の優しさが水希ちゃんみたいで違和感があったんです。無理してる感じがあって」


「そりゃ、そうだよね〜。水希の行動は全て天然だし、今だからこそ慣れたけどあの優しさを急にされたら戸惑うよ。菜穂ぐらいだよ、水希の優しさに鈍感なのは」


「失礼ね。一応、水希の長所は優しさだって分かってるわよ。だけど、水希は妹なの。姉妹だと関係性が変わるのよ。未来ちゃん、きっと田村さんは遅刻して喧嘩をした事で反省したのよ。だから、気にしなくていいと思う」


「はい、ありがとうございます」



今日の会合は疲れる日だ。可愛い後輩のために相談に乗っているけど、改めて恋は難しいと感じた。なかなか思い通りに行かない。



「あの…朝倉先輩のことなんですけど。これ言ってもいいか分からなくて黙っていて。その、、」


「佐々木さん、大丈夫。朝倉さんには言わないから話してみて。ひかるちゃんもいい?」


「はい」



佐々木さんが口をモゴモゴさせて、私達を見る。決心した佐々木さんは朝倉さんの秘密を話し出した。それも可愛い秘密を。



「朝倉先輩はその、、竹本先輩とのキスはクリスマスの日に初めてしたいと言ってました。前、竹本先輩がクリスマスに恋人と初めてのキスをするのを憧れてるって植村先輩に聞いたからそうなんです。だから、我慢の日々で大変だって悶えてました」


「あー、、ひかるちゃん…ごめん。私、前にごんちゃんに言ったの思い出した」


「えっ…じゃ、まーちゃんは私のために。そっか、我慢してくれてたんだ///」



なんだ、朝倉さん男気あるじゃない。好きな人の願望を叶えたくて自分の欲望を我慢する。でも、逆にひかるちゃんは不安になってしまったから逆効果だけどね。

でも、理由が分かりひかるちゃんの顔が晴れやかな表情になった。とても嬉しそうだ。



「ひかるちゃん、朝倉さんを襲っちゃえ。不意打ちのキスも思い出になるよ」


「えっ///あの…」


「恭子、ひかるちゃんに無理言わないの」


「でも…クリスマスまで我慢できないので頑張ってみます」



ふふふ、我慢できないなんてひかるちゃんは朝倉さんが大好きなのね。

おっとりタイプのひかるちゃんは芽衣ちゃんと似ている。おっとりだけど芯が強く、実は小悪魔。キスが我慢できないなんて小悪魔の資質がある証拠だ。



「ひかるちゃん…(ごにょごにょ)」



芽衣ちゃんがひかるちゃんの耳元で何かを話している。でも、声が小さく聞こえない。

何となくだけど、きっとキスより先のことを教えているに違いない。だって、ひかるちゃんの顔が真っ赤だ。耳まで赤い。



「ひかるちゃん、、(ごにょごにょ)」



未来ちゃんまでひかるちゃんの耳元で何かを話している。でも、下着って言葉が聞こえ…きっと下着の色のアドバイスだろう。白か黒とも聞こえたから、清純系でいくか小悪魔系でいくのかを薦めていたはずだ。


経験者2人に挟まれたひかるちゃんは、ずっと顔を赤らめたままで、きっと凄いアドバイスを受けたのだろう。

経験談ほど生々しい話はないから盛り上がるけど、ちょっとだけ佐々木さんが可哀想だ。


佐々木さんが3人の話に入れていない。でも、きっと入らない方がいい。

佐々木さんは唯一の彼氏側の人間。きっと芽衣ちゃんと未来ちゃんの生々しい話を聞いたら大変なことになる。面白そうだけど。



「あっ、そうだ。佐々木さんは松村さんとは順調?」


「はい、上手くいってます」


「じゃ、悩みとかは」


「あります!ぜひとも相談に乗って下さい!お願いします!」



勢いよく私に頭を下げ、潤んだ目で懇願するいつもはクール風美女の佐々木さん。

もしかしたら、一番悩みが根深いのは佐々木さんなのかもしれない。

ただ、ここはファミレス。開口一番に出てきた言葉を聞き、私達は慌ててお店を出た。


みんな、ウキウキした顔をしている。みんなを連れ、芽衣ちゃんの家に雨のなか急ぐ。

誰の家にしようか話し合っていると、芽衣ちゃんが手を挙げ話す場の提供をしてくれた。

恋愛での彼女側の5人に囲まれる彼氏側の佐々木さん。手取り足取りの教授が始まる。

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