第369話

Nao side.01



11月になり季節は秋真っ盛り。受験生の私は日々勉強の毎日で大学の図書館に行き、みっちり勉強をしている。

そんな私はなぜかまたファミレスにいる。勿論、一緒に図書館で勉強をしていた恭子も。


前回は私の妹【高瀬水希について集まる会】に強制参加させられた。この時は妹の水希についてだから渋々参加をした。

だけど、今回はお気に入りの後輩達に頼まれてファミレスにいる。今日も外は大雨だ。この前より酷い天気で家に帰れるだろうか。


私の目の前に座っているのは、芽衣ちゃん・ひかるちゃん・未来ちゃん・佐々木さん。

このメンバーは…前回の水希の被害者の会の恋人達である。これは偶然か必然か。それとも神様のイタズラかもしれない。隣にいる恭子は今日も笑顔で楽しそうだ。



「先輩方、受験で忙しいなか来て頂いてありがとうございます」


「ひかるちゃん、何か悩みでもあるの?」


「はい…悩みを相談したくて」



私はお気に入りの後輩のためならいくらでも時間を作る。それに、みんな苦しそうな顔をしている。きっと何かあったに違いない。

でも、芽衣ちゃんはいつもと変わらないからみんなの付き添いだろう。周りのみんなを心配そうな顔をして見ている。



「まずは私から…あの、私…まーちゃん、、えっと、朝倉さんと付き合って3ヶ月になるのですが進展がなくて不安なんです。この前、朝倉さんの誕生日だったので手作りケーキと誕生日プレゼントを渡して一緒に過ごしました。手を握ったり、お泊りも…しました。でも、キスとか何もなくて、、私に魅力がないのかなって落ち込んじゃって」


「えー!朝倉さんって変わってる。普通、誕生日などのイベントって関係が進める最大のチャンスなのに。よく我慢できるね〜」


「ひかるちゃん…辛かったね」



芽衣ちゃんが恋の先輩としてひかるちゃんを慰めている。恭子は朝倉さんの純真無垢というか余りのスローペースに驚き呆れている。

これは私も同感だ。付き合って3ヶ月にもなるのにキスもされないなんて自分に魅力がないのかと不安になってしまう。


水希なんて手が早かったから、私は必死に3ヶ月と言う期間を守らせた。私がいない隙に何度も破ろうとしたいけどね!

でも、流石にキスをしていないのは異常だ。ひかるちゃんが落ち込むのも仕方ない。

それに誕生日に恋人とお泊まりして手しか繋がないなんて朝倉さんって…変わってる。


この前、朝倉さんに水希に勝ちたいなら頑張りなさい・存在のアピールをしなさいと言ったのに何をしているのだろう。

ひかるちゃんに目を向けさせるどころか不安にさせている。もしかして、不安にさせることがアピールだと勘違いしてる?



「私…水希に朝倉さんとの関係を相談した時、恋の3秒ルールを教えてもらって朝倉さんを3秒間見つめたんですけど、朝倉さんに目を逸らされてショックでした。私と見つめ合うのが嫌なのかなって」


「あの…恋の3秒ルールって」


「佐々木さん、私が教えてあげるね〜。水希がひかるちゃんに教えた恋の3秒ルールは、互いに好き同士が3秒間見つめあったらキスをしたくなる魔法的なものだよ」


「井上先輩、ありがとうございます!そんな素敵な魔法があると初めて知りました!」



このやり方は私は有効的だと思っている。ひかるちゃんはきっと朝倉さんにキスをされたい側だと思うから水希の教えたやり方は正しいし、ひかるちゃんのことを考えている。

問題なのは朝倉さんだ。いくら何でも動かなすぎる。3秒間も見つめ合えないなんて…。


きっと朝倉さん的にはひかるちゃんを大事にしているとは思うけど限度はある。

ナイーブで気が小さいのかもしれないけど、余りにも待たせるとひかるちゃんが可哀想だ。

みんな、ひかるちゃんを心配そうな顔で見ている。こんなにも可愛い彼女に手を出さないなんてある意味変態ね。



「ひかるちゃん。こうなれば引いてダメなら押してみろよ。もう待つのはやめるの。朝倉さんは極度の奥手よ。キスは迫らなくていいから抱きついてみたらどうかしら?互いの心臓の音を感じたら動くかもしれない」



本当は水希にヒール役になってもらい、ひかるちゃんが水希に甘える仕草をすれば関係が進むと思ったけど(ショック療法)朝倉さんが水希に挑まず、身をひきそうで怖いからこの発案を飲み込んだ。

ドッキリ的なものは極度の奥手で自信がない人には使えない。勝負に挑まず負けを認めて逃げ出すパターンがあるから危険だ。



「ひかるちゃん、ガンガン押していこう。私もね、水希にガンガン押したよ。ごんちゃんの理性を崩せばイケるよ。ごんちゃんと制服デートする時はボタンを二つほど開けるのも手だよ。上手くごんちゃんを誘惑するの」



私はひかるちゃんに助言をした後、一息つきつけるために紅茶を飲もうとした。けど…芽衣ちゃんの言葉に手が止まる。みんなも驚き、手が止まっている。

ボタンを二つ開ける?誘惑?理性を崩す?驚いた私は芽衣ちゃんを二度見をした。


もしかして、私の勘違い?水希は手が早いと思っていたけど…芽衣ちゃんから上手く誘惑をされ狼になっていた。

芽衣ちゃんは自分の発言に気づき、顔を真っ赤にさせている。水希の姉として私はどんな顔をしたらいいのだろう。上手く笑えない。

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