第354話

二学期の中間試験が終わった。晴菜さんのお陰で今回も試験の結果は上々で、中学時代の成績から考えるとあり得ないほど上がった。

芽衣は相変わらず成績が良く、ごんちゃんが1人打ちひしがれている。

赤点ではないけど、いつも同じぐらいの成績だった私が抜けて、芽衣と並んだ。


ひかるも頭が良いし、私に負けたことが相当ショックで悔しいらしい。

ごんちゃんは今も私をライバル視する。でも、悪い意味ではなくひかるに対して自信を持つためのライバル心だ。

だから、私もごんちゃんに負けない。ひかるのためであり、ごんちゃんのためだからだ。


平均点が80点オーバーの私はニンマリする。10月に入り、中間試験を終え私はやっと久々にゆっくり出来る。

文化祭が終わったあと、中間試験があったせいで毎日が忙しかった。ごんちゃんのせいで恋のトライアングルに巻き込まれたりして、やっと色々なものが終わった。


だけど、進路希望ガイダンスがあるからまだ機は抜けない。先生と希望する大学に向けて話し合わないといけない。

一応、成績は上がってはきているけどまだまだ東條大学に行くには不安要素が強い。

今の成績よりもっと上を目指さないといけないから頑張らないと。てっぺんが高すぎる。



「どうしよ、、このままだと…ひかるちゃんと同じ大学に行けない」


「ひかるは頭が良いからね、ごんちゃんは今より50倍頑張らないと無理だよ」


「分かってるよー、東條大学が遠い…」


「えっ、ひかるって東條大学を目指してるの?」


「そうだよ…めちゃくちゃ偏差値の高い大学で、私も行きたいけど成績が」


「私も芽衣も東條大学を目指してるよ」



うぇ、、首が苦しい。ごんちゃんに制服の襟を掴まれ体を揺らされる。「ひかるちゃんと同じ大学なんてずるいー」と言われ、泣きべそをかかれた。



「ごんちゃんも勉強頑張ればいいじゃん」


「頑張ってるけど、頭が追いつかないし成績が伸びないの!」


「ごんちゃん、水希が苦しそうだからそろそろ離してあげて」



芽衣のお陰でごんちゃんから解放され、私は大きく息を吸う。私も勉強は苦手だったけど晴菜さんのお陰で勉強のやり方が分かり好きになれた。だから、変われると思っている。



「ごんちゃん、塾に通ったら?」


「来年から通う予定だよ…」


「じゃ、もうごんちゃんの頑張り次第だね。大学は共学だから気をつけないと、ひかるはきっと今の倍はモテるよ」


「やだー!私が絶対に蹴散らす!」



私達が行きたい大学は共学だ。だから私も頑張らないといけない。可愛くて、小さくて、こんなにも魅力的な芽衣は必ずモテる。

特にサークルなどは狼が多いから絶対に蹴散らさないと。狼を芽衣に近づけさせない。



「あー、何で東條大学は女子大じゃないんだ。ひかるちゃんを狼の群れに入れたくない」


「私は共学で良かったと思ってるよ」


「えー、芽衣。何でー!」


「だって、女子大だったら水希は今以上にモテて今以上にヤキモチ妬くことになるから」



まさかの発言に私は口から大事な唐揚げを出しそうになった。芽衣はすました顔で、黙々とお弁当を食べ、ごんちゃんは「ここに敵がいたー!」と訳の分からないことを言う。

みんな、私を何だと思ってるの?平々凡々の普通の女の子だよ。敵だ敵だと騒ぐごんちゃんの相手をしていたら私の大好物の甘い卵焼きが芽衣の口に入っていく。


なぜゆえに最後に食べようとしていた大好物の玉子焼きが芽衣の口の中に。

笑顔で「甘い卵焼き、美味しい〜」と言われても私は食べれてないから悲しい。

芽衣が卵焼きの代わりにプチトマトをくれたけど、私は甘い卵焼きを食べたかった。好物で最後締めたかったのに。



「水希、お弁当食べないの?お昼休み終わっちゃうよ」


「卵焼き…」


「大学のことを考えたらイライラしちゃって。つい、食べちゃった」


「そっか…」



口の中でプチっと弾けるプチトマトの酸味と甘味が広がって…美味しい。マヨネーズも何もないけど、さっぱりで美味しかったからいいか。芽衣も満足してるみたいだし。



「水希って、本当優しいね」


「何…急に。褒めてもおかずはあげないからね(梅干しと白ご飯しかないけど)」


「違うよー。芽衣は幸せ者だよねってこと。だけど、水希の優しさに甘えていたらダメだよって言ってるの。水希って常に優しいからこの優しさが当たり前になって失った時、大変なことになりそうだなって」


「ごんちゃん、変なこと言わないでよ」



ごんちゃんが急に変なことを言うから芽衣が黙り込んでしまった。ごんちゃんの言い方じゃ、いつか私と芽衣が別れるみたいだ。

絶対にあり得ないし、芽衣を失うなんて私にとっては死んだも同然なのに。



「水希…ごめん」


「えー、芽衣泣かないで。ごんちゃんのせいだ!よくも芽衣を泣かせたなー」


「あー、芽衣ごめん!あのね、、違うよ。あー、ごめんなさい。私がひかるちゃんとの関係で自分の甘さに実感したから…つい」



大好物の甘い卵焼きを食べれなかったのは悲しいけど、そんなことで芽衣に怒ったりしないし、イラつくこともない。

確かに不満などは積み重ねで爆発するとは聞くけど私は好物の甘い卵焼きを食べられたからって、不満などない。その代わり、芽衣は沢山の愛情をくれる。



「芽衣、私は全く気にしてないからね」


「今度、甘い卵焼き作ってくる…」


「やった、芽衣ありがとう。ごんちゃんが後でジュース奢ってくれるからね」


「うん、オレンジジュースがいい」



くるくると表情が変わる可愛い彼女を私が絶対に離すわけがない。こんなにも可愛くて、私を虜にし、芽衣に振られないように必死に頑張っている私なんだから。

芽衣は世界一可愛い私の彼女だ。ごんちゃんは芽衣の涙に悔しがっているけどほっとく。

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