第344話
もうすぐ文化祭が終わる。終了の合図を伝える音楽が寂しさを伝染させる。
みんな、夕日をバックに黄昏ていた。お客さんが帰り、生徒は片付けを始めた。
ある程度片付けが終わったら後夜祭だ。みんながグラウンドに一斉に集まり私が挨拶をすることになっている。
芽衣はクラスの片付けに行き、私は生徒会として手伝いするため模擬店の撤収を始めた。
ごんちゃんやさわちんが小物の片付けをし、私は必死に重たい機材を運んでいく。
一番身長が高いからって言うけど、真里ちゃんの方が高いし、ごんちゃんとは2センチしか変わらない。いつも酷い扱いばかりだ。
「水希、手伝うわよ」
「いいの?」
「これは1人じゃ大変でしょ」
「お姉ちゃん、ありがとう〜」
お姉ちゃんと必死に重い機材を運んでいく。こうやって姉妹で作業が出来るってなんか嬉しい。何組かはいるけど姉妹で同じ学校に入学する人は少なく結構稀だ。
最初はお姉ちゃんと同じ学校なんてと思っていたけどお姉ちゃんのお陰で色んな体験が出来た。生徒会や部活など強制だけどね。
「もう秋ね」
「1年が早いね」
「もうすぐ卒業か。あっという間の3年間だわ。学校生活が楽しいと一日がすぎるのが早く感じる」
「寂しいな…お姉ちゃんも先輩達も卒業だなんて」
「水希が東條大学に受かったら私も恭子がいるからすぐにまた同じ学校に通うことになるわよ」
「そっか、、うん!絶対に東條大学に受かってみせる!みんなと同じ大学に通いたいし」
もしお姉ちゃんとの歳の差が3歳差だった私とお姉ちゃんは同じ学校に通えなかった。
1歳差だから同じ学校に通え、2年間も一緒に過ごせた。お姉ちゃんに振り回されることが多かったけど楽しかった。
お姉ちゃんがいなければ私は平凡な毎日を過ごしていたと思う。
「青春って楽しいね〜」
「10代の青春は貴重で、一番思い出に残りやすいの。あの頃はって語れる青春は最高の思い出を作れたってことで、自分の人生の財産になる。だから、学生生活を思いっきり楽しまないとね」
「お姉ちゃんと同じ学校に入学出来て良かった」
「ふふん、言ったわね。今日は最後まで頑張ってもらうからね」
えっ…どういうこと?最後まで頑張ってもらうって意味が分からない。
この後は後夜祭で私が挨拶をして、、あとはフリータイムだったはず。確かに後夜祭なのにフリータイムって思ったけど、全てのイベントが終了しているから何もすることがない。
あれ?何でフリータイムなんてあるの?普通は後夜祭で出来るイベントがあるはずだ。
私は何でフリータイムを受け入れているの?あれ?何で?誰がフリータイムって言った?
確か後夜祭の打ち合わせをしている時、紙に私の挨拶の後はフリータイムって書いてあったから何も考えずスルーしてしまった。
初めての文化祭で、部の模擬店やイベントに頭を悩ませていたから私はきちんと全てを把握していない。
思い出せ、、誰がフリータイムを決めたの。あの文字は誰の文字?何で生徒会の会議用の用紙にフリータイムって書いてあったの?
もし、書けるとしたら生徒会のメンバーだ。
だけど、生徒会のメンバーで書きそうなメンバーなんていない。みんな初めての文化祭でてんてこ舞いになっていた。
だからあり得なくて、生徒会の目をくぐり抜けて書ける人なんて…1人いる!私の姉であり、元生徒会長であり、女王様。
お姉ちゃんがいつのまにか書いた。そして、まだ何かを企んでいる。
佐藤優希・高瀬水希・佐々木真里は今年の文化祭のモテ女コンテストのグランプリ者。
お姉ちゃんと機材を片付け終え、私が最後の挨拶するステージに戻るとグランプリを受賞した3人の名前の紙が大きく飾ってあった。
嫌な予感がする。嫌な予感しかしない。お姉ちゃんは何をするつもりなのだろう。
横を向いたらすでにいないし、真里ちゃん・佐藤先輩も自分達の名前を見つけ口をポカーンとしている。
お姉ちゃんがまた秘密裡に進められていた企画が発動する。私は何度犠牲になればいいのだろう。妹だからって扱いが酷すぎる。
みんな、何が起きるの?とざわざわしてるなか、もうすぐ文化祭が終わる合図の音楽がストップする。
みんながセンチメンタルな気分でいたのにいきなりノリノリの音楽が流れ、みんなのテンションが大爆発だ。
私はこれから起こることにビビり、芽衣達を見つけ合流する。みんなにこれからお姉ちゃんが何かをするみたいだと伝えると、みんなに可哀想な目で慰められる。
嫌だ、お姉ちゃんのおもちゃになりたくない。ステージに貼られた名前の意味を知りたくない。みんなが盛り上がっているのに私と真里ちゃんと佐藤先輩だけ苦笑いをした。
ハイテンションの司会の子を誰か止めてほしい。無理!無理だから!
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