第343話

大体、水希は…と何回言われただろう。ひかると距離が近すぎると言われ、タラシを発動させているなど散々の言われようだ。

私がごんちゃんに酷い言葉を言われるたびに隣にいるひかるが悲しい顔をする。ひかるは優しいから私のせいでと落ち込んでいる。



「大体、水希は」


「まーちゃん…もうやめて」


「えっ…ひかるちゃん」



私さえ我慢したらと思っていたら、ひかるが泣いてしまった。この涙は私のせいでもある。私がごんちゃんに何も言い返さないから、ごんちゃんが一方的になってしまった。



「ひかる、大丈夫…?」


「こら、ひかるちゃんに触るな!」


「ごんちゃん、私は友達としてひかるを心配してるの。いい加減にして」


「うるさい!ひかるちゃんから離れろ」


「まーちゃん!いい加減にして」



ひかるの怒った所を初めて見た。いつも穏やかで優しいひかるが声を荒げた。

私もごんちゃんもひかるの怒った姿にビックリし固まる。そして、ごんちゃんが落ち込んでいく。ひかるが私の事をこれ以上傷つけるなら許さないと言ったからだ。



「ごめんなさい…」


「まーちゃん…何でそんなに水希に対して敵対心を持つの」


「・・・周りの人が2人をお似合いって言うし、ひかるちゃんの初恋の相手だから」



私がごんちゃんの立場だったら私もごんちゃんみたいにヤキモチを焼くかもしれない。初恋ってワードが余りにも強すぎる。



「私が好きなのはまーちゃんだよ…」


「うん…だけど、水希は生徒会長だし、歌が上手いし、人気者だし、、私なんかでいいのかなって。いつも自信が持てなくて」


「ごんちゃん、大好きなひかるに好きって言われてるんだから自惚れていいし、その自惚れを自信に変えてやればいいよ。ごんちゃんも知ってるけどひかるはモテるからね。早く自信をつけないとひかるに猛アタックしてくる人が出てくるかもよ」


「やだ!絶対に阻止する!私の彼女だもん」



ごんちゃんの目に力が漲っている。絶対にひかるを渡さないって意思を強く感じる。



「少しは自信がついたみたいだね」


「水希、ありがとう…酷いことばかり言ってごめんなさい」


「大丈夫だよ。さわちんで慣れてるから」


「まーちゃん…私もごめんね」


「ひかるちゃん、、ごめん。ヤキモチ焼いて勝手に拗ねちゃった」



なんとかこの場が収まってよかった。さっきまで怒っていたごんちゃんはひかるにデレてるし、ひかるも嬉しそうだ。

そうだ、最後にちゃんと言わないと。ごんちゃんがひかるに対して無自覚にやってしまったことを自覚させないといけない。



「ごんちゃん、今日みたいにひかるを蔑ろにしたらダメだからね」


「蔑ろって…そんなことしてないし」


「ライブが終わった後、すぐにひかるの所に行かなかったじゃん。それに、電話もLINEもせずにずっと女の子と話したり。最後はニヤけた顔で手を振ったりして、ひかるからしたら傷つくに決まってるでしょ」


「あっ、、ごめんなさい。褒められたことが嬉しくて舞い上がってた」



ちょっとだけ優越感に浸れる。いつもはお姉ちゃんに言われる側で、私も言う側になれたことが自分自身の成長を感じた。



「あっ、でもずっと話していた子は水希のファンだよ。曲の趣味があったからつい話が盛り上がったけど、その子は水希の笑顔と歌声が好きなんだって。ライブの時、目が合って笑ってくれたことが嬉しかったって喜んでた」



ごんちゃん、別に今言わなくてもいいのに…後ろから黒い威圧感を感じる。

私はその子と目が合ったのを覚えていない。歌うことに必死だったし、でも本当のことを言っても言い訳にしか取られないのが辛い。


後ろから出てきた芽衣のお顔を見るのが怖い。小さい体から黒いオーラを出している。

ただでさえ、お仕置きが決定してるのに更にキツいお仕置きをされそうだ。

さわちんは呆れ顔をしているし、楽しい文化祭なのに私は冷や汗をかく。



「あっ、音楽が流れ始めたよ!そろそろ、グラウンドに行こうか!最後の打ち上げが待ってるよ…」


「みんな、先に行っててもらってもいい?私と水希は少し話してから行くから」


「水希はモテるよね〜」


「水希は自分のタラシぶりを自覚しろ」



ごんちゃんとさわちんが私に余計な一言を言い私を置いて恋人とグラウンドに行ってしまった。取り残された私はひたすら怯える。



「芽衣…」


「水希、お仕置きするから屈んで」


「えっ、屈むの?」


「生徒会は後夜祭の準備もあるでしょ。だから、早くお仕置きを済ますから屈んで」



早くお仕置きを済ますと言われ、私は心を決めて屈んだ。どんなに痛いお仕置きでも芽衣のお仕置きなら耐えてみせる。

そんな風に思っていたけど、私の彼女は優しく最高の彼女だ。芽衣との熱いキスは疲れを吹っ飛ばしてくれて力を漲らせる。



「芽衣、大好き〜」


「私も水希が大好き」



恋人と笑い合えるって最高に幸せなことで、こうやって芽衣と一緒にいられる日々に感謝しないといけない。

芽衣に私が恋人で良かった思われるように頑張り、芽衣に後悔してほしくない。

だから、私の側にずっといて下さい。

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