第335話
無理、無理だ。コオロギちゃんと目が合った。だけど、まだコオロギちゃんはいい。
一番の問題はタガメちゃんだ。黒光して虫の形がモロすぎる。フォルムが無理すぎる。
みんな手が動かない。声援が凄くイベントを盛り上げるために食べないといけないって分かってるけど無理だ、泣きたい。
ムカつくぐらい放送部が煽ってくる。さぁ、さぁとうるさいよ。分かってると言いたい。
私達の恋人達が心配そうに見つめてくる。あっ、違う。芽衣以外ね。
未来ちゃん、ひかるがさわちんとごんちゃんを心配そうに見つめていて羨ましい。
芽衣は頑張れーしか言わない。いくら恋人の応援でも無理だ。さっき、タガメちゃんに挑戦したけど歯が当たった瞬間口が拒否した。
お姉ちゃん達も煽ってくる。早く食べろーと連呼し、犠牲者の私達に人権はないのかと言いたい。これは本当に無理だって!
「さぁ、3人の手がなかなか動きません。これではゲテモノ選手権が盛り上がりませんね。生徒会の皆さん頑張りましょう!」
「水希、頑張れ〜。コオロギは桜エビみたいで美味しいから大丈夫だよ」
芽衣がコオロギちゃんの味を教えてくれるけど、なぜ知ってるの?蜂の子も美味しいよってなぜ知ってるのって何度でも言いたい。
「水希、早く食べなさい」
「お姉ちゃん、、無理だよー」
「ほら、田村さんも朝倉さんも食べないとイベントが盛り上がらないでしょ」
お姉ちゃんは非情で後輩の私達を無理やり参加させて無理やりゲテモノを食べさせる。
さわちんは首をこれでもかと振り、ごんちゃんは泣きながらひかるに助けを求めている。
「これではイベントが進みませんねー。どなたか勇気ある方はいらっしゃいませんか?もし、食べきった方には高級プリンを贈呈します。その代わり、全部食べて頂きます」
1個なら平気って言う人もいるだろう。でも、放送部が全部と言ったから誰も手をあげない。そんな中、ボソッと「美味しいのに…」と芽衣が呟いた。
芽衣の言葉を聞き逃さなかった放送部が芽衣をステージにあげる。芽衣は恥ずかしそうに私の横に座った。
「芽衣、、食べれるの?」
「うん、よくお婆ちゃん家で食べてたから」
「マジで…」
芽衣が普通の食事をするかのようにコオロギちゃんや蜂の子を食べて行く。美味しいって言いながら笑顔で食べるからみんな驚愕している。
お姉ちゃん達も驚いて口が開いている。みんなが一番無理だって言っていたタガメちゃんも平気で食べており私は芽衣のことをまだまだ全然知らないと思い知った。
「おぉ!植村選手が食べ終わりました!大変素晴らしい!それでは高級プリンを贈呈します」
「ありがとうございます///」
「それでは全く食べれなかった3選手には罰ゲームを発動しましょう。苦い飲み物を飲んでもらいます。食べれなかったからこれぐらいはしないと盛り上がりませんよね〜」
放送部め、、いつか覚えていろよ心に誓う。私達の前には苦いであろう飲み物が置かれ、お姉ちゃんは私達が食べれないことを見越していた。全てにおいて用意周到すぎる。
「さぁ、皆さんは乾杯して飲み干して下さい。ここで生徒会の意地を見せましょ」
生徒会の意地。ここで拒否をしたら生徒の前でも恋人の前でも情けない姿を晒す事になる。さっきまで暴れていた虫嫌いの2人も決心をし深呼吸している。
私も深呼吸して乾杯をし一気に飲み干した。苦い、苦い、苦い!!!私はもうすぐライブで歌うのに喉が大変なことになっている。
「苦いー!!!」
「水希、大丈夫…」
3人とも苦さで暴れ回り、お客さん達が笑っている。確かに盛り上がっているけど、生徒会の私達は基本裏方に徹するものだ。なのに、表に出されてお姉ちゃん達に遊ばれる。
前生徒会で唯一私の味方は佐藤先輩だけだ。そんな優しい佐藤先輩は松村先輩に遊ばれている。執事服を着させられ、、でも、似合ってました。
「さぁ、皆さん。あと、30分後に軽音部のライブがこのステージで行われます。皆さん、今ここにいる生徒会長の高瀬水希がボーカルを務め、書記の朝倉まどかがギターを弾きます。とても素晴らしいライブになるので乞うご期待です!私も大変楽しみにしています。特にミクロモザイクが好きで高瀬さんの歌声が素晴らしいので聴いた事ない方も期待して下さい。朝倉さんのギターも素晴らしく、全ての曲を作曲しています。本当に凄いです。とてもいい曲ばかりで、今日は新曲を二曲、他二曲を歌う予定となっております。これは大変楽しみだ。さぁ、今のうちにお手洗いに行って下さいね。私は今から飲み物を買い準備万端にします。それではまた後ほど会いましょう」
勢いよく捲し立てるように軽音部のライブについて話す放送部の女の子。目がキラキラしてみんなライブへの熱量に圧倒されている。
なぜ、放送部がお姉ちゃんと手を組んだか分かった気がする。ライブのファンみたいだ。
私は恥ずかしくなり急いでステージを降りた。甘いジュースを飲みたくて、ひかるのクラスにみんなで向かう。
みんなで喉が苦いと言い合っていると、アナウンスが入る。さっきの子で、もうすぐ始まるライブについてまた熱く語っている。
ミクロモザイクとThe Ghost on the Shoreを流し、ライブ会場で是非生演奏での歌声を聴いてくださいと言ってきた。
帰りたい…ごんちゃんも緊張で震えている。まさかこんなことになるなんて、、全てはお姉ちゃんの策略で全て順調に進んでいる。
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