第334話

松村先輩に連行された私は真里ちゃんにバトンタッチされ無理やり着替えされる。真里ちゃんは私のこと慕ってくれていたのに嬉しそうにこれを着て下さいと言ってきた。

私が執事服を着ても佐藤先輩や真里ちゃんみたいにカッコよく着こなせない。なのに、似合うって褒めてくる。絶対に嘘だ。



「高瀬先輩、笑顔を作って下さい」


「やだー」


「これは仕事です。お金が発生するんです、ちゃんとしないとダメですよ」


「私は陸上部だし関係ないもん。だから帰らせて」


「駄々をこねないで下さい。終わったらお菓子を用意してますからお願いします。高瀬先輩の大好きなガトーショコラです」


「えっ、ガトーショコラ?」


「はい、松村先輩の手作りです」


「帰る!」



芽衣やひかるの手作りガトーショコラだったら嬉しいけど松村先輩の手作りだときっと悪巧みで塩とか入ってそうだから嫌だ。



「こら、水希。私が頑張って作ったケーキに対して失礼だぞ」


「塩入りのガトーショコラなんて食べたくありません」


「入ってるわけないでしょ。これでも、私はお菓子作りが好きで将来はパティシエを目指してるの。真里、私の作ったお菓子美味しいよね?」


「はい、めちゃくちゃ美味しいです」


「パティシエ…分かりました、、」



結局ガトーショコラに負けて、真里ちゃんに髪のセットをされる。髪を後ろで結び、なぜか眼鏡をはめて下さいと言われた。



「松村先輩、何で眼鏡なんですか?」


「水希は眼鏡をかけると2割増になるから」


「でも…芽衣が、、」


「芽衣ちゃんが嫌がるの?相変わらず尻に轢かれているわね。でも、これは先輩命令よ」


「はい…分かりました」



さっきから、芽衣のLINEが来ていて私はバスケ部とバレー部の男装喫茶にいると送る。

きっとこの姿を見たら怒られる、どうせ怒られるなら早いうちに怒られたい。



「さぁ、行くわよー。お客さんが待ってるからね。ちゃんと笑顔を作ってね」


「高瀬先輩、頑張って下さい」



松村先輩に背中を押され、お客さんの前に行くと私を指名した生徒が私を取り囲む。

写真を撮るため、私は隅に行きピースするけど笑顔が引き攣る。私には普通に笑えない。



「水希、笑顔が硬い」


「だって…」


「ちゃんと笑いなさい」


「松村先輩、、上手く笑えないですよ」


「水希、ほらリラックス」



執事服を着た佐藤先輩が優しく声を掛けてくれた。これは、、凄い。今日は髪もセットしてありイケメン度が半端ない。

佐藤先輩に頭を撫でられ、やっと普通に笑えそうだ。リラックスできた。



「おぉ、いい笑顔だよ。はーい、撮りますよ」



私はガトーショコラのために頑張った。何枚か撮り、ホッとしていると後ろから黒いオーラを感じる。そっと振り向くと可愛らしい顔をした芽衣が暗黒の煙を纏っていた。

頭に角が見える。怖い、、顔とのギャップが恐ろしすぎる。



「芽衣、、」


「水希、何をやってるの?」


「松村先輩に連行されて…」


「ふーん、そうなんだ」


「水希、次のお客様お願い。あっ、文化祭が終わってからガトーショコラ渡すから」



タイミングが悪すぎる。私はまたお菓子に釣られ芽衣を怒らせた。芽衣の目がギラリと光り、怒りが頂点に達したようだ。



「水希、後でお仕置きね」


「そんな…」



楽しい文化祭が一気に恐怖に変わる。後ろにいた早川先輩が笑っている。

何で早川先輩がここに…と思い嫌な予感がした。早川先輩もお姉ちゃんと結託している。



「水希、執事服似合ってるよ〜」


「早川先輩…ありがとうございます」


「写真を撮り終わったらこの後いい?付き合ってほしいことがあるの」


「何ですか…」


「まだ内緒」



内緒が一番怖い。私は芽衣と文化祭を楽しみたいのにお姉ちゃんの策略で楽しめていない。また連行されるなんて嫌だ。



「芽衣ちゃんも来てね」


「私もですか?」


「水希の応援をしてほしいの」



早川先輩は美人で、綺麗で、超美人だ。私は綺麗な人に弱い。これはみんなもだと思う。

他のお客様と写真を撮った後、早川先輩に着いて行く。芽衣も先輩のお願いを断れず一緒に行くと、野外のライブ会場に着いた。


放送部がマイクを持っている。めちゃくちゃイベントをする気満々だ。

生徒会に内緒にしてこっそり進んでいたイベント企画。私は早川先輩に図られた。

お姉ちゃんに呼ばれても駄々をこねて着いていかないのを見越して早川先輩に誘導させた。私の大馬鹿…お姉ちゃんと早川先輩は結託していると分かっていたのに。


私は何も聞いてない。提出されてない企画なんてルール違反だ。

生徒会長の私を欺く行為は重大なルール違反だけど、きちんと用意された食材を見ると元よりルール違反する気満々で私なんて怖くないと言う判断なのだろう。


私はお姉ちゃんに敵わない。早川先輩にも弱い。怖くもない生徒会長の承諾なんて意味がないのだろう。泣きそうだ、、何で私がゲテモノを食べないといけないの。

無理だ、コオロギなんて食べれない。それに、この虫達はどこから買ってきたの…気持ち悪すぎる。



「さぁ、皆さん今からゲテモノ選手権を行います。皆さんはどの選手が勝つか予想して応援して下さい。選手は生徒会メンバーの生徒会長の高瀬水希、副会長の田村爽子、書記の朝倉まどかが挑戦します」


「さわちん、ごんちゃんも捕まったの…?」


「高瀬先輩に逆らえなくて…くそ、、」


「私は早川先輩に、、」



私達は前生徒会にいつもおもちゃにされる。みんな、前生徒会に弱く逆らえない。

私達の目の前には恐ろしい物があり、、虫嫌いのさわちんは顔が青い。

私は虫は平気だけど食べるのは無理だ。無理すぎて泣きそうだ。ごんちゃんはすでに泣いている。ごんちゃんも虫が苦手みたいだ。


えっ、えっ、、文化祭って楽しいイベントだよね!?

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