第333話
もうすぐ、陸上部のアイドル曲ダンス完コピのステージの時間だ。陸上部の生徒の親子さんや生徒がぞろぞろと体育館に移動している。
お姉ちゃんの策略は凄い。さっきからひかるや芽衣がセンターを務めるアイドルグループの曲が何度も流れるなって思っていた。
靴箱の所には私が撮った陸上部のみんなの写真が沢山貼ってある。写真のお陰でみんなの興味をそそり上手く誘導している。
でも、陸上部のみんなは逆にお客さんの多さに怯えている。さわちんには緊張のせいで石のように固まり動かない。
「さわちん、大丈夫?」
「無理…」
「手のひらに人って書いて飲んでみたら?」
「そんなんじゃ、無理だよー。やだ、踊りたくない!」
みんなが深呼吸をし、私にもみんなのドキドキが伝わってくる。体育館にはアイドル曲のBGMが流れ、放送部のアナウンス待ちだ。
私はさっき、ビデオカメラを設置した。映像は学校のホームページに載せる予定でステージを観に来れなかった人達のためである。
「皆さん、陸上部のアイドル曲ダンス完コピステージにお越し頂きありがとうございます。陸上部はこの日のためにダンスを頑張ってきました。衣装も曲に合わせたデザインなのでぜひ注目していただきたいと思います。まずはチームWhiteが激しく軽やかに踊ります。それではどうぞ」
BGMが止まり、放送部がアナウンスをする。アナウンスが終わったあと緞帳が上がり、ひかるがセンターのチームが踊る。
チームWhiteが壇上の上でポーズを取る。もうすぐ音楽が鳴りパフォーマンスが始まる。
♪〜♫〜
チームWhite、めちゃくちゃカッコいい。ひかるのあんな眼差し初めてだ。
音楽が鳴った瞬間、みんな踊りだす。クールでカッコよくて、何よりダンスが素晴らしい。バキバキに踊るひかるにごんちゃんが口を開けて感動している。
最終チェックの練習の時よりレベルアップしていて、私も感動している。
さわちんもカッコいいよ。きっと未来ちゃんが惚れなおすと思う。
お姉ちゃんも恭子先輩も満足そうだ。これは良い思い出になる。私も少し羨ましい。
踊り終わった後、盛大な拍手がきてチームWhiteのメンバーはホッとした顔をしている。やりきったね、みんな素晴らしかったよ。
「皆さん、拍手ありがとうございます。激しいダンスで素晴らしかったですね。次はチームPurpleが踊ります。可愛い曲で、手の振りが覚えやすいので一緒に踊って頂けるとより楽しめます。それでは、どうぞ」
心の中で芽衣ー!と叫びながら応援する。音楽が鳴り、チームPurpleが踊り出す。
ノリの良い曲で可愛くて、芽衣にぴったりの曲だ。衣装も可愛いし、手の振りを真似したくなる。見ていた小さな子供がぴょんぴょんと一緒に飛び、みんな笑顔に溢れる。
吉野ちゃんも良い笑顔で踊っている。みんな素敵だよ。泣きそうだ、感動が止まらない。
恭子先輩達もみんなの頑張りに感動している。全てお姉ちゃんが勝手に決め、よくやり遂げたよ。最初は無茶振りすぎると思ったけどやり遂げた後の達成感が凄そうだ。
「皆さん、拍手ありがとうございます。陸上部のダンス完璧でしたね。とても素晴らしかったです。同じ陸上部で生徒会長を務めます高瀬水希が15時頃野外ステージで軽音部とライブをします。そのあと、モテ女コンテストもありますのでよろしくお願いします」
お姉ちゃんが放送部に根回しし、私の野外ライブとモテ女コンテストを宣伝をぶち込んできた。みんな、ガヤガヤし行ってみようかと聞こえてきてため息しか出ない。
何で私の緊張を煽るの、勘弁してほしい。
「あっ、芽衣!お疲れ様」
「疲れたけど、楽しかった」
「めちゃくちゃ良かったよ」
「水希が見てるから頑張ったよ」
芽衣の頭を撫で疲れを労う。芽衣のお母さんがやってきて「良かったよー」と喜んでいる。頑張りが報われた瞬間だね。
さわちんもひかるも恋人の未来ちゃんとごんちゃんに褒められていて嬉しそうだ。
次は私の番だ。まだ時間はあるけど緊張する。ドキドキしながら時計を見ていると私は松村先輩に連行される。嫌だ、、離して。
「お客さんがね、水希と写真を撮りたいって言ってるから協力してね」
「嫌ですー。離して下さい!」
「お菓子あげるから」
「嫌です、、」
私の悲痛な叫びがこだまする。だけど、誰も助けてくれない。芽衣は服を着替えに行ったし、お姉ちゃんは放送部と何か打ち合わせをしている(気づいても助けてくれない)
私はこれから視察にいかないといけないし、ライブまでに気持ちを整えたかった。それに芽衣にもっと労いの言葉を言いたかったのに非情すぎる。私の言葉はいつも無視される。
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