第332話
HRが終わり、放送部がアナウンスをする。みんなが持ち場に行き、校門の前にはチケットを持った生徒の家族などが並んでいる。
私はエプロンをつけてクレープの生地を作っていく。生地から甘い良い香りがしてきた。さっそく、ホットプレートで自分の分を焼こうとしたらお客さんが来た。早すぎる…。
「あっ、お客さん来たよー」
「いらっしゃいませー」
次々に来るお客さん。私の分のクレープは結局焼くことが出来ず、私は注文を受けたクレープをひたすら作っていく。
お客さんは私が作ったクレープを美味しそうに食べている。私はひたすら焼き続け、当番が変わる時間まで忙しかった。甘い匂いだけを嗅ぐなんて地獄だ。
「はーい、交代の時間だよー」
やっと、甘い匂い地獄から解放される。エプロンをクラスメイトに渡しバトンタッチだ。
ごんちゃんと芽衣と廊下を歩き、私は目を輝かせる。甘い匂いや美味しそうな匂いがそこらじゅうに漂い涎が出そうだ。
「2人とも、早くひかるちゃんのクラスに行こう」
「先に真里ちゃん達のクラスに行こうよ。たこ焼き食べたい」
「じゃ、先にジュースだけでも買おう。一緒に飲めるじゃん」
ごんちゃんは早くひかるに会いたくて仕方ないらしい。無理やり腕を引っ張られて、ひかるのクラスの模擬店に行くとひかるが可愛い格好をしてジュースを売っていた。
この衣装、お姉ちゃんがライブで着ろと言った熊の着ぐるみだ。まさか、ひかるが犠牲者になっているなんて知らなかった。
「ひかるちゃん、可愛い///」
「まーちゃん、ありがとう///」
「ひかる…お姉ちゃんに渡されたの?」
「うん…この熊の着ぐるみ着たらジュースが売れるからと言われて」
ごめんね、私が拒否をしたばっかりに。でも、お姉ちゃんはあっさり引き下がったから想定内だったに違いない。
私が断ったら誰に着させるか決めていたはずだ。じゃ、コスプレ衣装は・・・。
「ひかる、さわちんはいる?」
「爽子は中で果物を切ってるよ」
「中で?じゃ、コスプレしてないの?」
「してないよ。制服を着てる」
お姉ちゃんは一体誰にコスプレ衣装を渡したのだろう。賭けグルう赤色の制服をアニメ部に作らせ、、いや違う。自発的に作ったに違いない。その制服は誰の手に渡ったの?
私はひかるからジュースを買い、駄々を捏ねるごんちゃんを引っ張りジュースを飲みながら真里ちゃんのクラスへ向かった。
真里ちゃん、似合ってるよ。真里ちゃんがお姉ちゃん+松村先輩の犠牲者なんだね。
アニメ部め、真里ちゃんのことやっと諦めたと思ったらお姉ちゃんと手を組み念願のコスプレ衣装を着させている。
髪をポニーテールにし、あのキャラに似てる〜と感心してしまった。私のお気に入りのアニメだからちょっと嬉しい。
性格が真面目で努力家で純粋で、容姿とキャラが被りまくっている。アニメ部がなかなか諦めなかったのがよく分かる。
私はニヤニヤしながらたこ焼きを注文した。真里ちゃんは切なそうな声で「先輩…」と助けを求めてくる。でも、真里ちゃん効果でお客さんが凄いことになっている。
「真里ちゃん、似合ってるよ」
「嬉しくないです」
「お姉ちゃんに渡されたの?」
「松村先輩です…」
可哀想な真里ちゃん。松村先輩はバレー部の先輩であり、恋人の朱音ちゃんの姉だ。
逆らうことが出来ず、真里ちゃんは無言で渡されても着る以外選択肢はないだろう。
「大変だね」
「恥ずかしいです…あっ、高瀬先輩、300円になります」
「ファイト。そのうち慣れるって〜」
「高瀬先輩、熱いうちに食べて下さいね。6個中2個が激辛なのでお気をつけて」
えっ?6個中2個が激辛ってどういう意味?私は普通のたこ焼きを頼んだ。激辛なんて聞いてない。
真里ちゃんがニヤッと笑い、この衣装のお陰でロシアンたこ焼きを思いつきましたと言われた。確かにメニューにはあるけど、私は激辛が苦手だから頼んでない。酷いよ。
「みんなさんで、楽しんで下さいね」
真里ちゃんが恐ろしい。お姉ちゃんや松村先輩に影響受けて私をいじめてくる。
ごんちゃんと芽衣は笑っているけど、大好きな後輩ちゃんにいじられている。
非常にまずい、私の威厳がなくなってる。
「高瀬先輩、私は許しませんからね」
「えっ…朱音ちゃんどういうこと?」
「お姉ちゃんから聞きました。高瀬先輩がこの衣装を着てライブで歌うのを拒んだせいで、勿体無いからという理由で真里が着ることになったことを」
違う、、全てはお姉ちゃんと松村先輩の策略だ。私が絶対に拒むのは分かっていたはず。
どう考えても衣装は真里ちゃんが着るのを想定して作られている。
怒りの矛先を私に向けさせるなんて酷すぎる。私は何も悪くないのにあんまりだ。
「辛いー!!!」
「美味しい〜」
「芽衣、美味しいね」
私はとことんついていない。6個中2個の激辛たこ焼きに2回当選した。
なんで私ばっかり、、みんなに私は弄ばれている。生徒会長なのに…。
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