第329話
次は私の番だ。軽音部のメンバーがぞろぞろと体育館に楽器を持って集まる。
私達も体育館で最終音合わせと音響のチェックをする。本当は野外ライブだから外でした方がいいけど、外だと初めて歌う曲がみんなにバレてしまう。別に隠しているわけじゃないけどこっそり音合わせをしたかった。
だけど、陸上部のメンバーがみんな体育館に残る。早く着替えに行ってほしいのに軽音部の最終音合わせを見るつもりらしい。
散々、逃亡者として扱われてきた私としては緊張が走るからやめて欲しい。
それに明日になれば聞けるのに、、お姉ちゃんなんてカメラを持ってるし、、怖い。
「ねぇ、水希。ギャラリー多くない…」
「陸上部は全員残ってるし、他の部の人達も見に来たみたい…」
ごんちゃんと急に増えたギャラリーに驚く。みんな文化祭は明日なんだよ、準備しようよ。それに、明日になれば曲は聴けるよ。
「2人とも、準備出来た?」
「あっ、はい」
軽音部の先輩がギターを鳴らし、一気に私の緊張が走る。本番は明日なのに、みんなの視線が壇上にいる私達に集まり吐きそうだ。
先輩がカウントをとり、楽器が一斉に鳴る。ひかるが見てるのに楽器を弾きだすとカッコよくなるごんちゃんは凄い。
私も必死にキーボードを弾いた。出来るだけ本番と一緒の声を出し、ごんちゃんが作った曲を歌う。
みんなの前で初めて歌う「ミルクとマシュマロは合うのかな?」を披露し一気に疲れた。私と芽衣の思い出を綴った曲で恥ずかしい。
そして、次の曲が一番緊張する。ごんちゃんがひかるへの気持ちを綴ったラブソング。
「花に例えると君はブルスター」はキーボードを弾かない。私はスタンドマイクの前に立ち緊張で吐きそうになりながら頑張って歌った。少しでもひかるにごんちゃんの気持ちが伝わるように。
(キャー)
みんなが拍手をしてくれた。私の心臓はバクバクと鳴り、額に汗をかいている。
今日は知った人ばかりの前で歌い、少しだけ緊張が抑えられたけど明日は生徒の家族などが来る。そんな中で歌わなければいけないなんて地獄でしかない。
「水希!カッコ良かった///」
「芽衣、ありがとう〜」
芽衣と陸上部の部員が褒めてくれる。ずっと逃亡者と言われ続けたけど、何とか私の頑張りが認められたみたいだ。
お姉ちゃんも褒めてくれて、明日に向けて安心感が出てきた。でも、疲れたよ。
「水希、明日は私がヘアセットしてあげるわね」
「えっ…お姉ちゃんが」
「私がカッコよくしてあげる」
お姉ちゃんの優しさには常に裏がある。私のヘアセットをするなんてきっと変な髪型にするはずだ。私は騙されない。
16年間、私は下僕としてお姉ちゃんに仕えてきた。お姉ちゃんの考えなんて手に取るように分かる。
「ヘアセットは自分で・・」
「よし、決まりね。私に任せない」
「いやだから…」
「水希、ライブをするステージを見に行くわよ。モテ女コンテストの打ち合わせは私も参加するからついでにしましょ」
おかしい。お姉ちゃんが勝手に進めて行く。芽衣と話したいのに首根っこを掴まれ、連行される。私は必死にごんちゃんの腕を掴み、ひかると楽しそうに話すごんちゃんを道連れにした。そして、未来ちゃんと楽しそうに話すさわちんに大きな声で行くよーと言った。
私だけが犠牲になんてならない。ごんちゃんもさわちんも道連れにしてやる。
明日は文化祭。ここまで来たらとことんやってやる。2人のうるさい小言なんて聞こえない。明日のためだ、今日の幸せは二の次。
学生としてのイベントは体育祭や修学旅行などがあるけど、文化祭は高校生ならではだ。
大学に行ったら更に凄い文化祭があるけど、今は高校生で出来るの文化祭が楽しみたい。
私にとって高校での最初で最後の文化祭をめちゃくちゃ楽しみたいし、最高の文化祭にしたい。明日の天気は晴れで空が綺麗だ。
やっと頑張ろうと決めたのに、ステージを見た途端お腹が痛くなってきた。
野外のステージが昨日見たのと違い、なぜかキラキラとしている。
誰がこんな飾り付けをしたの?って思っているとお姉ちゃんが放送部にもっと派手にしてと指示をしている。犯人が近くにいた。
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