第324話

ごんちゃんを先に好きになったのは吉野ちゃんだった。



私の前で気丈な態度で必死に涙を堪える吉野ちゃんに胸が苦しい。恋をした順番は恋に反映はされないからだ。

恋はいきなり発展したり、後からきた人に意中の人を取られることなんて当たり前で、だからこそ好きな人と両思いになれるよう必死に頑張るしかない。





ごんちゃん達との練習を終え、芽衣を迎え行くため廊下を歩いていると吉野ちゃんに呼び止められた。真剣な顔をした吉野ちゃんにお話がありますと言われ緊張する。

ドキドキしながら向かい合わせに立つと、吉野ちゃんが優しい顔でごんちゃんのことを諦めますと言ってきた。


目には涙が溜め、無理しているのが分かる。だけど、私は話を聞くことしか出来なかった。吉野ちゃんはごんちゃんとひかるの仲に気づき、「お似合いですね」ってもうこれ以上無理しなくてもいいのに…言葉にした。

私は何て声を掛ければいいの分からず言葉が出てこなくて先輩なのに情けない。


急展開したごんちゃんとひかるの恋はみんな驚いた。きっと、本人達もだと思う。

2人は小さなきっかけで互いに意識し始め、恋に発展した。吉野ちゃんとごんちゃんが付き合う確率は低くはなかった。

タイミングときっかけがごんちゃんとひかるの恋を結んだ。紙一重の差だった。


めちゃくちゃ悔しいよね。ごめんね、私のせいだ。私が動かなかった。

恋は本人次第の所もあるけど、私がアシストをしなかった。私の身勝手な理由で動かなくて本当にごめんなさい。



「先輩、ありがとうございました」


「ごめんなさい…」


「何で先輩が謝るんですか…先輩は悪くないです」


「私がアシストをしなかったから」


「関係ないです。だから、顔を上げて下さい。先輩に頭を下げられると泣いちゃいそうです」



最後の最後まで後輩の吉野ちゃんに気を使わせてしまった。涙目の吉野ちゃんが優しい顔で笑う。苦しいすぎる、自分がムカつく。

だから必死に涙を堪えた。私まで泣いたらダメだ。私のせいで気を使わせてしまう。



「高瀬先輩は優しいですね」


「そんなことないよ…私なんて」


「実は私、高瀬先輩に憧れて陸上部に入部して短距離を選んだんです。だからこうやって私を気にかけてくれるだけで嬉しいです」


「私も嬉しいよ」



きっと、吉野ちゃんに良い人が現れるよ。こんなに良い子いないもん。

きっと、ごんちゃんを越える人と出会える。



「はい、元気が出る飴玉あげる」


「あっ、いちご練乳飴」


「私の元気の素なんだ」


「ありがとうございます。嬉しいです」



明日になれば、ごんちゃんへの思い過去になるよ。もし、過去を何度も思い出し辛い気持ちになってもいつか新しい未来が勝つ日が来る。だから、無理せずにゆっくり進もう。



「あっ、ダンスどう?順調に進んでる?」


「なんとか…ダンスって大変ですね。それに、みんなの前で踊るので恥ずかしくて」


「頑張ってね。必ず見に行くから」


「はい、頑張ります」



吉野ちゃんは芽衣と同じ曲を踊るから楽しみだ。お姉ちゃんの独断で、チーム分けをしさわちんはひかるがセンターの曲に参加することになり発狂していた。

ぷっ、さわちんがノリノリで踊るの…笑う。



「あの…私も軽音部のライブ、必ず見に行きますから」


「うん、ありがとう。私も頑張るね」


「楽しみです。先輩の歌声好きなので」


「吉野ちゃんに褒められて嬉しいから、ジュース奢ってあげる」


「やったー。コーラが飲みたいです」



恭子先輩が私からよく話し掛けてくるから嬉しかったと言っていた。私にも後輩ができ恭子先輩の気持ちがよく分かった。

吉野ちゃんが懐いてくれて、沢山話し掛けてくれて嬉しい。吉野ちゃんといると楽しいし、先輩として頑張ろうと思える。


吉野ちゃんと自販機でジュースを買っているとさわちんとひかると芽衣が来てなぜか全員分を奢らされた(さわちんの一言で!)

みんなで冷たいジュースを飲みながら、話しているとひかると吉野ちゃんが楽しそうに会話をしている。これも青春だね。


私は青春映画や青春漫画(恋愛系)が大好きだ。昔から憧れが強く、こんな青春をしてみたいとずっと思っていた。

今、映画や漫画みたいな青春を感じている。高校生活が楽しくて、恋もして、最高だ。

わちゃわちゃして、、楽しすぎる。永遠に続いてほしいと胸が熱くなり叫びたくなるよ。

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