第323話

お盆休みも終わり、夏休みがもうすぐ終わる。去年は夏休みは部活漬けだった。

でも、今年は文化祭がある。まだまだ先だと思っていたらあっという間にやってくる。

9月に行われる文化祭まで約1ヶ月。夏休みが終わったらクラスごとの出し物や模擬店などの準備をしなくてはいけない。


そして、部の出し物や模擬店などがある人は二つ掛け持ちになりやることが多い。

私のクラスは模擬店をやる予定で、クレープ屋さんに決まった。これは私の発案だ。

決して練習用のクレープを食べたいからではない。ちゃんと人気の統計を調べたんだ。

ただ、交代制でやることになっているけど、時間配分が大変だ。部の出し物や模擬店に行く人などの時間を考えないといけない。


そんな色々大変な文化祭を夏休み返上で陸上部のダンスの練習が始まった。

いつも通り部活をやった後、お姉ちゃんが決めた曲のダンスの練習をする。

ひかるがセンターの曲は激しいダンスナンバーで振り付けが難しい。芽衣がセンターを務める曲は手の振りが特徴的な可愛い曲だ。


みんな必死に踊りの練習をしているのをよそに私は片付けをする。1人だけ参加しないことになっている私はみんなの分まで片付けをすることになった(さわちんの命令)

みんなが振りを必死に覚えている横で黙々と片付けていく。散々、みんなに恨まれたけど私も文化祭で4曲歌うから許してほしい。



そう言えば、今日ひかるに会った時おめでとうと言った。照れながら「ありがとう///」と言うひかるを見て本気で嬉しかった。ごんちゃんへの気持ちが凄く伝わってきたからだ。

あとは…吉野ちゃんだ。ごんちゃんとひかるが付き合いだしたことで吉野ちゃんの恋は実らなくなってしまった。だから今、非常に悩んでいる。どう伝えるかを。



「ふぅ、やっと終わった」


「おーい、水希。片付け終わった?」


「終わったよー。ごんちゃん、着替えたら行くから待ってて」


「分かった」



わざわざごんちゃんがグラウンドまで私を呼びに来た。きっと恋人のひかるを見にきたのだろう。言葉は私に言ってるけど目線はひかるを見ている。

デレた顔で、必死に振りの練習をしているひかるを見て幸せそうだ。ひかるが気づいて手を小さく振るとごんちゃんは嬉しそうに手を振り返し、更に顔がデレていく。


これ以上、2人のイチャイチャを見なくて済むようにごんちゃんの首根っこを捕まえて校舎に行く。

ごんちゃんが「横暴だー」と言いながら暴れるけど知らない。それに吉野ちゃんと目が合い辛かった。本当は逃げ出したと言った方がいいかもしれない…顔を合わせるのが苦しかった。



「はぁ…」


「水希、ため息ついてどうしたの?」


「ごんちゃんのせいだよ!」


「えー、なんで私のせいなの」


「うるさい、早く行くよ」



恋が難しい!友達と後輩の恋なのに私が一番悩んでいる。ごんちゃんが書いた「花に例えると君はブルースター」がひかるへの気持ちで胸が痛くなる。

ノリノリでギターを弾くごんちゃんに対して私の気持ちは弾まなかった。お陰で、ごんちゃんにダメ出しをされ最悪だ。


早く吉野ちゃんに言わなきゃいけない。そんな焦りに追われる。それに、黙っているのは吉野ちゃんに失礼だし、きっといつか吉野ちゃん自身が2人の関係に気づくはずだ。

吉野ちゃんにきっといい恋が訪れますようにと願う。ひかるやごんちゃんも二度目の恋で恋が叶ったし、きっと大丈夫だと。



「水希、休憩しようか」


「はーい」


「あっ、この曲って芽衣がセンターの曲だよね」


「うん、振り付け可愛いよね」


「この曲好きなんだ〜。でも、ひかるちゃんがセンターの曲も大好き///」


「惚気はもういいよ。でも、この曲いいよね」



窓を開けるとグラウンドから曲が聞こえてきて楽しい気持ちになった。この曲は明るく可愛い曲で芽衣にぴったりだ。

みんな、必死に慣れないダンスを頑張っている。だからこそ、私はみんなのためにサポートし文化祭を成功させなきゃいけない。



「ごんちゃん、このあとブルースターをもう一回やろう」


「ちゃんとタイトルを最後まで言ってよー」


「長いからいいの」



文化祭まで時間はない。3年生が受験前に学校の思い出を作れる一大イベントだ。

気持ちを切り替えた私は窓の外から聞こえてくる曲を口ずさむ。ノリのいい曲は心が明るくなりお陰で元気が出てきた。

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