第322話
今日はお昼まで眠るつもりだった。旅行から帰ってきて、部活も休みで芽衣はお婆ちゃんの家に行っているので完璧なフリーの日でゴロゴロすると決めていた。
なのに、お母さんが私を起こしにくる。朝倉さんが来たわよと言われ渋々起きた。
昨日、旅行から帰ってきた後ごんちゃんにおめでとうと電話をした。ひかるとの惚気話を1時間以上聞かされて疲れたけど、幸せそうだったから仕方ないと思っている。
だけど、何で今日もなのとごんちゃんに言いたい。昨日、沢山話したのに部屋に入ってくるなり朝から文句を言われた。
「この寝坊助、起きろ」
「ごんちゃんのせいで起きたよ!」
ベッドの上でパジャマ姿の私をごんちゃんが呆れ顔で見下ろし、早く着替えて来いと部屋から追い出す。朝から酷い扱いだ。
仕方なく急いで顔を洗い、洋服に着替えパンを一枚頬張り牛乳を飲む。ハムエッグを一口で食べ、無理やり朝食を済ました。
「はぁ…朝から疲れた」
「水希、遅い」
「無理言わないでよ!今、何時だと思ってるの。普通、朝の8時に約束もしてないのに来る方がおかしいでしょ」
「いいじゃん。話を聞いて欲しいの」
「まぁ、、おめでとう」
「へへへ、へへへ、幸せ〜」
心底嬉しそうな顔とデレた顔。好きな人と両思いになれた時の気持ちは分かるけど、デレデレすぎだし顔が気持ち悪い。
ふにゃけた顔が寝起きの私には癪に触り、無理やり起こされた腹いせにごんちゃんの顔を思いっきり抓った。
「痛いー!」
「顔がだらしないことになってるよ」
「それはね、仕方ないよね。へへ」
ひかるへの気持ちが顔に出ており、ひかるの恋人がごんちゃんで良かったって思えるけど…これから2人がイチャイチャする姿を見るのかと考えると体が痒くなる。
「昨日もさ、ひかるちゃんとデートしてね…手を繋いだ///。ふふふ、へへへ」
「良かったね(以外にウブなんだな)」
「家まで送った時にずっと手を振ってくれてね、、その姿が可愛いの。もうね、一生手を振り続けたかった」
「へぇ、ラブラブじゃん(純粋…)」
「名前もね、朝倉さんからまーちゃんになってね。まーちゃん…ふふふ///でへへ」
「へー(顔が崩れてきた…)」
「あー、可愛い!めちゃくちゃ可愛い!世界一可愛い!可愛いよー、、はぁ、好き///」
床に悶えるようにひかるへの気持ちを叫ぶ私の友達を私はどのような感情で見ればいいのだろう。壊れたロボットみたいだ。
でも、うん…お似合いだよ。ひかるのことを大事にしてるって分かるもん。
「あっ、そうだ。写真送るね」
「えっ、何?」
「今送るから待って」
少し前に学校でこっそり撮った2人の写真をごんちゃんの携帯に送る。いつか2人が付き合ったら送ろうと決めていた写真だ。
「えっ、いつ撮ったの!?」
「こっそり撮ってみた」
「ありがとうー!へへ、嬉しい」
私からのプレゼントが出来て良かった。友達の時の写真はないはずだから良い思い出の写真になったと思うし、時が経ったとき懐かしいねと笑い合ってくれたら嬉しい。
「はぁ…ひかるちゃんに会いたいな」
「ねぇ、まだちゃん付けなの?」
「えっ…」
「付き合ってるならひかるって呼べばいいのに」
「バカ、、それは…緊張するじゃん。まだ、付き合って3日目だし、、」
「さわちんなんか付き合った日にキスして、毎日キスしてたよ(そして、後に暴走して大喧嘩して泣いていた)」
「私は私のスピードで行くの…ひかるちゃんを大切にしたいし、、初めての交際だし」
ついニヤニヤししてしまう。初々しい交際をするごんちゃんが可愛くてほっこりした。
顔を赤くしたごんちゃんがモジモジして、目が合うだけでドキドキするから暫くは無理だなーって更に純粋な部分を見れて可愛い!
私はごんちゃんの純粋さにキュンとなり、私のとっておきのお菓子を出した。
2人で横浜で買ったチョコレートを紅茶と一緒に食する。最上の甘さに笑顔になる。
ごんちゃんも喜んでくれて、横浜旅行のお土産も渡せたし丁度良かった。
「横浜いいなー」
「いつか、ひかると行けるといいね」
「うん///。あっ、でも来年も海に行く約束した。へへ、楽しみだな」
「あれ?でも、ごんちゃんって泳げないよね」
「それは、、今から泳ぐ練習するし」
ごんちゃんは運動神経がいいけど実はカナヅチだ。だから、入学当初プールのない高校で良かったと喜んでいた。
「今は泳げないけど…海は好きだから頑張る!」
「頑張ってね。ひかるは泳げるのにごんちゃんがカナヅチだとひかるが海に行けなくなるよ」
「プレッシャー与えないでよ…頑張るし」
みるみる落ち込んでいく友に恋の先輩としてアドバイスをすることにした。海は危険がつきものだ。そして、ひかるはモテる!
「海に行ったらナンパに気をつけてね」
「えっ!ナンパ!」
「うん、去年ナンパされたし」
「マジ!?許せない!相手誰!」
「知らないよ。だから、気をつけてねって言ってるの。ひかるを守ってね」
「絶対に泳げるようにならなきゃ。それに…水着姿のひかるちゃんなんて絶対ナンパされるよ。めちゃくちゃ可愛い子もん、あー、水着…水着姿を誰にも見せたくない。うん?水着…水希はひかるちゃんの水着姿を見た?」
「まぁ、、」
「ふざけるなよー、私も見てないのに!ひかるちゃんの可愛いワンピースの水着を見て興奮したなんて許せない!」
「興奮なんてしてないし!それに、ビ・・何でもない、、」
「何!?ハッキリ言ってよ」
「いや、、水着はビキニだったから」
「ビキニ…えっ?ビキニ?ビキニ!?いやー!ビキニ、、ビキニ…」
ごんちゃんがのたうち回ってビキニの呪いにかかったみたいに死んだ顔をしている。かなりの衝撃だったみたいだ。
「芽衣もビキニだったし、お姉ちゃんも恭子先輩もだし、普通なんだから気にしなくていいと思うよ」
「そうだけど…」
「ひかるがビキニを着たのがショックなの?それとも他の人にビキニ姿を見られたのが嫌なの?」
「分かんない…感情がグチャグチャすぎて」
ウブすぎるとこんな弊害が出るみたいだ。ひかるも大変だね、きっとキスなんて当分出来ないよ。その先も。
「ごんちゃん、ひかるの恋人して強くなれ。これから色んな経験をするんだよ」
「うん…頑張る!」
ごんちゃんにとってひかるは純粋でウブで清楚で水着なんてワンピースしか着ないタイプと思っていたのだろう。
自分にとって意外な恋人の一面を知った時、全てを受け入れる器の大きさは大事だ。
それが恋。恋は人を成長させる。
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