第325話

今年の夏休みが終わった。これから3年生は本格的な受験モードに入り、1・2年の私達は文化祭に向けて日々頑張っている。

私のクラスでやる模擬店の準備は順調に進んでいる。率先して味見役に立候補し、より良い最高のクレープ開発と腕を磨いている。


陸上部でやるアイドル曲の完コピダンスは部長のさわちんがこんな難しいダンス出来ないと騒いだり、みんなで必死に衣装作りをし毎日が大変だ。そんな私はみんなのサポートをしつつ小間使いに徹している。

2年生は今年の文化祭が最初で最後の文化祭になる。だからこそ、頑張りたい。


最近、客観的にみんなのダンスを見てて気づいたことがある。運動神経とダンスの上手さは比例をしない。運動神経が良いさわちんがカチカチのダンスをし、運動神経が悪い芽衣がダンスの才能を花開かせている。

ひかるは何でもこなせるタイプで順調にダンスを頑張っている。一番羨ましい才能だ。


そして私は必死に歌の練習とピアノの練習をして悩んでいる。今回、軽音部のライブは野外でやることになっている。

なのでキーボードで弾くことになっており、お客さんの方を向いて歌うことになり想像するだけで吐きそうだ。「花に例えると〜」はキーボードなしで歌うし最悪すぎる。


目立つことが嫌いな私は高校に入学して以来ずっと人前に立つ羽目になり、この運命から逃れられないと最近気づいた。

きっと、お姉ちゃんがいる限り無理で全てはお姉ちゃんから始まりずっと続いている。



「ねぇ、ごんちゃん。この服どうしたの…」


「あー、高瀬先輩が持ってきた。水希の服だって。これを着て歌うようにって言われて」


「何で断らなかったの!」


「無理だよ!怖いもん」



お姉ちゃんがどこで用意したのか分からない服、、熊の着ぐるみ。それも私の分だけ。

絶対にふざけている。これを着てキーボードなんて弾けないし、これじゃコントだ。私で遊びすぎであり断固拒否する。



「絶対に着ないからね!」


「まぁ、無理だよね。着ぐるみじゃキーボード弾けないし。じゃ、これを着てね。実はもう一着渡されていたんだ」


「えっ?どんな服…」


「これ」



これもあり得ない。お姉ちゃんは妹をおもちゃとして遊びすぎだ。このコスプレ衣装をどこで手に入れたのか知りたいけど、怖いから聞かない。それにコスプレなんて絶対に嫌だからこれも断固拒否する。



「はぁ、、、、ため息しか出ないよ」


「まぁ…大変だね」



私を一番悩ますのはお姉ちゃんだ。実は見てしまった…お姉ちゃんがアニメ部と話しているのを。きっとこの衣装も…だと思うけど確信がない。まだ何かしそうで怖すぎる。



「じゃ、私は行くね…」


「えっ、どこ行くの?」


「他の部活の出し物や模擬店のチェックしないといけないの」


「生徒会長は大変だね」



みんな部活を終えた後に、クラス・部活動での出し物や模擬店の準備を進めている。

生徒会長である私は進み具合やおかしなことになってないかチェックする役割がある。

これはとても大事な仕事で、暴走しやすい部(特に運動部)を見張るためだ。


まずは一番要注意のバスケ・バレー部からチェックをしにいかないといけない。この2つの部は危険だ…きっと暴走する。

特に松村先輩はお姉ちゃんと同じ香りがする。佐藤先輩と真里ちゃんが犠牲になるのが目に見えているから怖い。


今日は軽音部との練習を早く終わらせ、私は体育館に向かった。そして、ドアを開け絶句しそっとドアを閉める。

スーツを着た執事?みたいな格好をする佐藤先輩に見つけ、私は踵を返した。嫌な予感がしたからだ。でも、走ってきた真里ちゃんに捕まり体育館に引き込まれてしまった。



「先輩、逃げないで下さい」


「逃げてないよー。様子を見にきただけだし、もうチェック出来たから…」


「あー、水希!遊びに来たの〜?」


「佐藤先輩…その格好は」


「あー…男装喫茶だからさ」



私は知っている。松村先輩が佐藤先輩と真里ちゃんを出しに使いバスケ部とバレー部の部員に男装喫茶を仕向けたことを(朱音ちゃんから聞いた)

でも、私も佐藤先輩の男装が見たくて承認した。うん、承認して正解だった。


それはさておき、もう確認をしたから帰りたい。でも、真里ちゃんが私を逃がさないよう腕組みし離してくれない。

朱音ちゃんが怖い目で私を見ているからそろそろ離してほしい。本気で怖いから。

それに、松村先輩が近づいてくる。先輩から早く離れないと危険すぎる。



「み〜ず〜き〜ちゃん」


「真里ちゃん、腕を離して…」


「えっ?」


「水希、捕まえた〜」



最悪だ、松村先輩に捕まった。後ろから確保され、急に引きずられる。

嫌だ、、何かを企んでいるのが分かる。でも、力が強く先輩だから暴れられない。



「松村先輩、離して下さいー」


「水希も衣装着てみてよー」


「嫌です!」



文化祭は基本、受験生の3年生はお客さんの立場になって楽しむ。

勿論、3年生でも参加する人達はいるけど、基本1年生と2年生が主戦として動く。

だけど、陸上部みたいに参加はしないけど女王様として部下(部員)に命令したり、バレー部みたいに周りの部員を操り3年生(佐藤先輩)を文化祭に強制参加させる人もいる。

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