第314話

ごんちゃんがギターをかき鳴らす。今弾いている曲は新曲の「花に例えると君はブルースター」。私が書いた「恋のABC」の歌詞が実はボツになり…ごんちゃんが新たに歌詞を書きタイトルも考えた。

まぁ…それで良かったと思う。あの曲は恋の応援歌だったから、ある意味良かった。


それに今回、ごんちゃんが書いた歌詞はラブソングで…きっと、ひかるを思いながら書いたであろうピュアな歌詞だ。

もうすぐ昼休みが終わる。ごんちゃんに試しで軽く歌わされ疲れた。ごんちゃんは芽衣に歌詞を褒められ照れるし、呑気なものだよ。


いきなり昨日、ごめんなさいと謝罪のLINEが来て自分が歌詞を書いていい?と言われて、朝いきなり歌詞を書いたから歌ってほしいと言われ、私は振り回されっぱなしだ。

でも、良い歌詞だから許してあげよう。歌ってて気持ちよかったし、ごんちゃんも笑顔で文句なんて言えない。



「ねぇ、ごんちゃん。ブルースターって何?」


「花の名前だよ。小さい星形の青い花なんだ。ほら、写真。可愛いよね」



芽衣がごんちゃんに私も気になっていたことを聞いてくれた。写真を見た時、ひかるに似合いそうな花だなと思い苦笑いする。

星形の花。ひかる=星ってイメージなのかな。こっそり花言葉を調べると〈幸福な愛〉と書いてある。ごんちゃんにとってひかるは幸福な愛をもたらす人なんだね。


イケメン!イケメンすぎる。タイトルも凄くいいし私の考えた恋のABCより何倍もいい。

今考えると可愛いけどマシュマロホイップアイスクリームは少しだけダサいかな。

ミルマロラブストーリーよりは断然マシだけど「花に例えると君はブルースター」には完璧に負けを認める。



「ねぇ、ねぇ、もしかしてごんちゃん…好きな人いるの?」



芽衣がごんちゃんに直球で私が聞くに聞けなかったことを聞く。ごんちゃんは顔を赤くしながら頷き私は後ろに倒れそうになった。



「えー!誰?誰?」


「芽衣、落ち着いて…ほら、ごんちゃんも戸惑ってるし」


「名前は言えないかな、、振られた時、辛いから」



ごんちゃんは一度好きな人に振られているから恋に奥手になっている。あと、ひかるの名前を出して振られたとき私達が仲の良いひかると微妙な感じになるのが嫌なのだろう。



「告白するの?」


「いつかはしたいと思ってるよ」


「頑張って」


「ありがとう」



いつもだったらベラベラと喋るタイプなのに私はずっと黙り込んだままだ。

2人の会話をずっと聞き、親心に似た感情でごんちゃんを見つめた。



「水希」


「何?」


「水希を後悔させてやるから」


「何それー」



ごんちゃんに宣戦布告みたいな言葉を言われ笑った。私に宣戦布告ということは…ひかるのことか。なかなかやるね、男前じゃん。

新たな恋をしたごんちゃんは輝いている。前の恋は最初から悲しい恋だった。

恋は人を輝かす。キラキラして眩しい。


教室に帰る時、ごんちゃんがひかるを見つけ走っていく。照れながら嬉しそうに声を掛け、ひかるも嬉しそうに話している。

そんな2人を見た芽衣は驚いていた。吉野ちゃんのことがあるから戸惑っており、芽衣が私の方を向いたとき私は苦笑いした。


私も芽衣も難しい立ち位置にいる。誰を応援したらいいのか分からない立ち位置。

これが漫画だったら○○派とかに別れるのだろうか?こっちと付き合って欲しかったと思う人もいるかもしれない。だけど、現実はそんな風には思えない。



「水希…あの2人」


「想い合ってる感じかな」


「そうなんだ」


「恋って難しいね」


「難しいね…」



鈍感な私でも2人から互いに想い合う雰囲気が出ており、前までは少し距離をとって話していたのに今は距離が近い。

まさかの2人がふとしたきっかけに距離が縮まり幸せそうな顔で笑い合う。まるで少女漫画みたいなワンシーンだ。


こっそり2人の写真を撮り、私はスカートの中に携帯を入れた。いつか、この写真をプレゼントする日が来るかもしれない。

芽衣にさっき撮った写真を見せてと言われ、見せると芽衣が優しい顔で微笑む。

芽衣とひかるは一時期ライバルであり今は親友であり、、だからこそ嬉しいのだろう。


後で、ごんちゃんにさりげなくひかるの誕生日が8月だと教えてあげよう。私はこれぐらいしかできなくてごめん。

あっ、でも文化祭のライブは頑張るよ。ごんちゃんの作った曲を誠心誠意込めて歌う。

「花に例えると君はブルースター」が相手に届きますようにと心を込めて。

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