第260話

昨日は芽衣とずっと話をしていて寝不足だ。でも、目の下にクマはできていない。

晴菜さんへの気持ちや距離感にまだ悩んでいるけど、晴菜さんが前を向いて歩いていると分かり、私もぐちぐちと悩むのを抑える。


この情緒不安定な気持ちって、思春期特有なの?それとも、私がフラフラしてるだけ…?

きっと、後者だろうな。全て私が悪い。だから、芽衣を不安にさせてしまう。

【夢】が欲しいな。私はまだ何になりたいのか、やりたいのか全然分からない。


お姉ちゃんは夢はあるのかな。きっとあるよね。学校も部活も生徒会も自分から目指して頑張って行動している。

私とは大違いだ。私が何もないから、お姉ちゃんが私の代わりに道標を作ってくれた。

お姉ちゃんがいなかったら私はもっとフラフラしたままで途方に暮れていた。



「水希、おはよう。今日は早いわね」


「お姉ちゃん、おはよう」


「寝癖、酷いからちゃんと治しなさいね」


「うん」



お姉ちゃんは寝起きでもあまり寝癖がない。きちんと髪を乾かして手入れしているからで、私はいつも髪を乾かさずそのまま寝るから朝起きたとき寝癖が酷い。

相変わらずの女子力の無さ。自分自身を見つめ直し、中身を作らないとダメだ。



「あっ、お姉ちゃん。お姉ちゃんって…将来の夢とかある?やりたい仕事とか、、」


「ないわよ。それを見つけたいから何が向いているか何を頑張ればいいのか探してる」


「そうなの?」


「夢を早めに持てたらいいけど、なかなか見つからない人の方が多いの。だから、みんな色んなことを学びながら夢ややりたいことを見つけるのよ」



そうなんだ…お姉ちゃんの言葉にホッとする。自分だけが夢もなくて、やりたいこともなくて情けなくて悔しかった。

だったら、私も学びながら見つけよう。お陰でさっきまで消えていた道がまた復活した。

お姉ちゃんには感謝しかないよ。いつもサポートしてくれて助けてくれる。


学校に行くと、芽衣が可愛い笑顔で挨拶してくれて朝から元気が出た。ごんちゃんは相変わらずうるさくていつもと変わらない日常を感じる。

昨日、ごんちゃんに5ミリほどカッコよくなったと言われ、生徒会長になって注目度が上がったお陰で背筋が伸び、気づいていないだけで少しは成長できたのかもしれない。


私の悪い癖で考え込むととことん考え込み迷路に迷い込んでしまう。そんな時、お姉ちゃんがいつも助けてくれる。

ゴールを教えてくれて私は必死に走り、迷路から抜け出せるんだ。今回も助けられ、前を向け自分を作っていくと決めた。中身がないなら中身のある人間になってやる。


東條大学に受かり、絶対やりたいことを見つけると決めた。まだ時間はある。

これから成長していけばいいと思えたよ。

ごんちゃんに頼まれた作詞も頑張らないと。この前、思い浮かべた歌詞はボツにした。余りにも切ないし…ラブソングではないから。







ドキドキする。部活が終わった後、生徒会室に行きソファに座る。もうすぐしたら真里ちゃんが来るだろう。

だけど、朱音ちゃんになんて言ってここに来るのかな?部活も一緒だし、一緒に帰っていたら言い訳を考える大変そうだ。



「はぁ、はぁ、すみません。お待たせしました」


「走ってきたの?大丈夫…?」


「朱音がなかなか帰ってくれなくて、、」


「やっぱり…大変だね」



真里ちゃんはなんて言って誤魔化したのだろう?もしかして私に呼び出されたとかじゃないよね…?

もしそうだったら、私は明日大変なことになる。呼び出されて、問い詰められるかもしれない。嫌だ、、真里ちゃんのことになるとマジで朱音ちゃんは怖いから。



「紅茶、入れるね」


「ありがとうございます」



生徒会室に置いてある紅茶のティーパックで私の分の紅茶も作り真里ちゃんに渡した。

これで一息つけたかな?だけど、真里ちゃんの顔が暗い。一体、どんな相談事なのだろう。



「あの、、相談事なんですけど」


「そんなに固くならなくていいよ。ラフに話をしよう」


「はい。あの…タラシってどうしたら治りますか!!!」


「えっ…タラシ?」


「はい、朱音は言わないですけど…周りの友達からずっと言われていて。あの、、高瀬先輩もタラシって皆さんが言っていたので」


「ごめん…私も分からない(私が治し方を教えてほしいぐらいだ)」


「そうなんですね…」



きっと真里ちゃんは意識的にタラシを発動していないはず…だから、天然のタラシ。

可哀想に天然だと自分が分かってないから無意識だし、周りの人に怒られて可哀想なんだよね。冤罪をよく掛けられるし。

治したい気持ちがよく分かるよ。私も分からないもん。私がいつタラシを発動したのか分からなくていつも怒られる。



「可愛いって言葉は小さい子全員に言うの?」


「はい…」


「それは女の子限定?」


「そうです、、あっ、でも小さい犬とか猫とかにも」


「それは別の意味の可愛いだから問題ないよ」


「そうですよね…」



真里ちゃんって面白い。だけど、真里ちゃんの【可愛い】って言葉は危険だ。気をつけないとホストの手口にと一緒でキュンとした女の子が落ちてしまう。

真里ちゃん、朱音ちゃんがぞっこんになるぐらい綺麗だしスタイルもいいし、性格も良い。中学生時代モテただろうな。


きっと高校でもモテるだろう。それに女子校だし、うわー考えただけで朱音ちゃんが大変だなって思っちゃうよ。

生徒会に入ったし、注目度がかなり上がった。人気のあるバレー部だし、うん…確実にすでにファンがいそうだ。



「真里ちゃん、来年のバレンタイン大変なことになりそうだね」


「えっ、、」


「きっと、大量のチョコが机の上に置かれてると思うよ」


「困ります!朱音が、、怒ると思うので」


「まぁ、食べ物に罪はないから素直に受け取った方がいいよ」



私はチョコが大好きだから有り難く頂いた。どれだけ芽衣に怖い顔をされようがチョコに罪はない。

食べ物を粗末にするとバチが当たるし、、うん、仕方がないことだ。そうだよね!

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