第255話
恋は人として成長させる。だけど、愛が強いと盲目になるから気をつけないといけない。
私はさわちんのお陰で耳が痛くて堪らない。未来ちゃんへの愛が強いのはいい。だけど今も真里ちゃんのことを水希2号だと言うのは勘弁して欲しい。何で私を巻き込むの!
「さわちん、眠たいから明日でいい…?」
「水希は生徒会長でしょ!どうにかしてよ」
「真里ちゃんは女癖が悪いわけでなくて、可愛いが口癖だって言ってたじゃん」
「未来をナンパしようとした!」
「真里ちゃんと朱音ちゃんは恋人同士なんだよ。それはないって」
もういい加減にして欲しい。今、夜の1時だよ。明日も学校なんだから寝かせてよ。
「さわちん、あんまり騒ぐとまた未来ちゃんが怒るよ」
「えっ…」
「私と喧嘩した時と一緒だし。また、重いと思われてもいいの?」
「嫌だー!無理!死ぬ!馬鹿!」
最後に暴言を入れたの気づいているからね。何で相談に乗ってあげているのに馬鹿と言われないといけないの。流石に怒るぞ。
「さわちんは不安になりすぎ」
「だって…未来、可愛いから不安になるよ」
「未来ちゃんは大丈夫だよ。それに真里ちゃんも真面目だし、良い子だよ」
「そうだね、水希と比べたら」
もう、さわちんの相談に乗るのやめた。寝る!私は眠いの!もう知らない!
「寝る!」
「うん、おやすみ」
くそ、安心した途端あっさり引いて「おやすみ」って言われた。眠たいのを我慢して相談に乗ってあげたのに酷い友達だ。
未だに信用されてないし、私が未来ちゃんをいつナンパした?冤罪がすぎるぞ。
出来るなら私の方から電話を切りたかったのにさわちんから先に切られ、子供みたいにベッドで暴れる。
生徒会長になったのに、友達からも威厳がないし舐められてる。お姉ちゃんはちゃんと威厳があったのに何で私にはないの。
心を落ち着かせるため、インスタを開くとHさんが久しぶりに写真をアップしていた。
空の写真に《久しぶりのデート楽しかった》と書かれていて、えっ?と驚く。晴菜さん…彼氏が出来たの?
新しい恋が、晴菜さんにとって良い恋だったら嬉しいけど…なんて考えても意味はない。
それに楽しかったと書いてある。やっと良い人に出会えたんだ。良かったよ。
私はそっと携帯をベッドに置き、電気を消して目を閉じる。年下の私なんかが大人の恋に介入してはいけない。どうしても心配で不安だけど、きっと大丈夫なはずだ。
だけど、もう晴菜さんの涙は見たくない。
朝起きた時、目の下にクマができていた。ちゃんと寝たはずなのに、体がフラフラする。
学校に行くと芽衣に心配をされ、自分が情けないよ。恋人に心配かけちゃった。
「水希、大丈夫?」
「うん、昨日はさわちんの愚痴の電話が長くて寝させてくれなかった」
「さわちん、未来ちゃんのことになると変わっちゃうよね」
さわちんを上手く使って目の下のクマの理由を誤魔化せて良かった。半分本当だし、芽衣に心配をかけたくない。
私のせいで、芽衣は晴菜さんの名前を出すと体が硬直する。私のせいで、芽衣が苦しむ。
だから、早く晴菜さんの新たな恋に祝福出来る様にならないといけない。
恋は人を成長させる。でも、恋は盲目にもさせる。もしもが怖くて、でも…岩本さんが晴菜さんの彼氏を見て判断をしてくれたら大丈夫なはずだ。同じような人は選ばないはず。
だから、私は心配しなくてもいいのにモヤモヤが消えないのはなぜ?晴菜さんが男の人とデートする姿を想像したくない。
そんな考えが頭から離れず、私はボーッとした1日を過ごした。芽衣との会話もあんまり覚えてない。最低だよ、恋人として。
今日は家庭教師の日だ。晴菜さんと顔を合わせる日で普通に接する事が出来るだろうか。
シャワーを浴びながら、頭のモヤモヤ消えろと何度も念じる。もうすぐ晴菜さんが来る。
私は逃げ出さない自信がない。
「水希、髪が濡れてるわよ。ちゃんと拭きなさい、風邪を引くわよ」
「はい…」
「あっ、水希出て。晴菜ちゃんが来たから」
玄関のインターホンが鳴り、私はドキドキしながらドアに向かう。何て話そうかと必死に考えていたら二階からお姉ちゃんが降りてきて私が出るからいいと言われ、リビングに行くことになった。
ちゃんと新たな恋を応援すれば良いだけの話なのに、それが出来そうにない私はどうしたらいいの?子供すぎるよ。
「水希、ご飯出来たわよー」
「はい…」
「さっきから元気ないわね、どうしたの?」
「何でもないよ」
黙々とご飯を食べ、自分の部屋に行きベッドにうつ伏せになる。もうすぐ2年になって初めての試験だから勉強しないといけないのに何もする気が起きない。
私はひたすら、無になろうと努力する。他の人の恋を邪魔してはいけない。って必死に考えていたら、いつのまにか寝ていた。
体を揺さぶられ、ビックリして起きるとお姉ちゃんがいて起きろーと怒られた。
慌てて体を起こすと晴菜さんはいなくて、えって焦っているとお母さんと話をしているとお姉ちゃんが教えてくれた。
「あっ、水希起きたの」
「うん」
「今ね、晴菜ちゃんにまた水希の家庭教師お願いしたから」
「えっ?お母さん…急に」
もうすぐ試験で、、生徒会長として赤点を取るわけにもいかない。それに、私の偏差値ではまだまだ無理な東條大学に行きたいと思っている。だから、、試験の時に晴菜さんに教わる事が出来たらありがたい事だ。
だけど…今の心理状態で私は勉強出来るのだろうか。晴菜さんの顔を見た時、胸が苦しくなった。嫌だ!って叫びたくなった。
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