第245話

怪我をしてこんなに緊張した形で謝られたのは初めてだ。中学生と違い高校生だと責任感や大人としての求められ方が違う。

先生や筒井達の親がいる中での空間に、芽衣も横で恐縮していて凄く居心地が悪かった。

横にお姉ちゃんがいて良かった。元生徒会長てして話を進めてくれたし、どぎつい話をして筒井達を撃沈させていた。


上品な口調で我が校って言葉を使う姉が凛々しく私の腕を掴み手首の包帯を見せ、落ち込んでいる筒井達を更に追い込み、怒るのではなく逆に丁寧な言葉が怖かった。

そして、バレンタインのことも話し…親の前でバレンタインの日に恋人がいる好きな子に振られたことをバラされ、筒井は泣きそうになっていた。まぁ、自業自得だよね。


本当に馬鹿だよ…もっと違う形があったはずなのに、あのやり方じゃ嫌われるって分からなかったのかな。まず、一対多数の時点でアウトだって分からないとダメだ。

恋愛は苦い経験をして色々と学ぶ。色々後悔をして、次の恋に生かせるから次は良い恋が出来るって思える。


もちろん、同じことを繰り返す人もいる。ダメ男を何度も好きになったり、貢ぐ体質で悲しい恋愛をする人もいる。

でも、それは本人が分かってて好きになっている。しつこく迷惑だと思われているのに追い詰めるのはクズのやり方だ。

晴菜さんの元彼クソ野郎みたいな奴ね。


自分でダメな恋を選んだら、沢山後悔して次に良い恋をって思えるように私はなりたい。

ダラダラと思いを残して、愚痴を吐き、好きな人に嫌な思いをさせたらそれはもう恋ではない。自分勝手な思いであり、恋を履き違えている。自分が好きなだけだ。恋はちゃんと相手を思える心を持たないとダメなんだよ。



「あー、疲れた。お姉ちゃん、ありがとう。助かったよ」


「もっと懲らしめてやりたかったわ」


「先輩、ありがとうございます」


「芽衣ちゃん、今度からは誰かに呼ばれても1人で校門などに行っちゃダメよ」


「はい、気をつけます」



今日は部活が全然できなかった。でも、明日からの部活は無理をしない程度ならOKと言われ良かった。

あと、怪我をしたのが利き手じゃなくてホッとしている。利き手を怪我したら色々と不便だし、芽衣が余計に心配をする。



「芽衣、今日は家まで送るね」


「いいよ…怪我してるし」


「ダメだよ。送り届けないと気になるから」


「分かった…ごめんね」



芽衣が私の手首をチラチラと見るたび落ち込む。私としては芽衣を守れた名誉の負傷だから気にしないで欲しいけど、逆の立場だったら私も沢山落ち込むと思うし出来るだけ芽衣を安心させたい。



「芽衣…明日さ、泊まりに来ない?」


「行く!」


「バイト終わったら、一緒にご飯を食べに行こう」


「うん」



良かった。芽衣がやっと笑顔になってくれた。図書館で私のバイトする姿を見ながら待つねって言ってくれて私も笑顔になる。

ただ、お姉ちゃんからは隣の部屋には私がいるのを忘れるなよオーラが凄い。

分かってるよ…流石に明日はプラトニックラブを貫くつもりだ。キスは絶対にするけど。



「さて、帰る準備しましょ」


「あっ、お姉ちゃん。時間は大丈夫?今日、晴菜さんが来る日でしょ」


「急いで帰らなきゃ!先に行くね」



お姉ちゃんがバタバタと帰り、芽衣が手をギュッと握ってきた。きっと、晴菜さんの名前を出したからだろう。

芽衣は私のせいで晴菜の名前が出るたび、私のせいで、、不安な気持ちになるだろう。

私も…最低野郎だ。恋人の不安を取り除いてあげれない。こんなにも芽衣が好きなのに。



「水希…キスしたい」


「えっ?でも、、ここはまずいよ」


「だったら、早く帰ろう。私の家に少しだけ寄って」



私達は制服に着替え、急いでバスに乗った。つり革に掴まり立っている私の手を椅子に座っている芽衣が優しく握ってくる。

芽衣の家に着き、挨拶をしたあと強い力で引っ張られ階段を上がり部屋に入った。

芽衣は限界だっだみたいだ。鞄を置いた後、背伸びをして芽衣が私にキスをする。


嬉しいけど濃厚なキスに頭がクラクラする。襲いたくなるけど、泊まることは出来ないしこの時間に芽衣を襲うのはリスクが高い。

仕方なく、芽衣とのキスを堪能しているとお母さんから電話が掛かってきてキスが中断した。きっと、お姉ちゃんに聞いて怪我を心配して電話をしてきたのだろう。



「そろそろ、帰らないとね…」


「家に帰ったら電話する」


「うん…」


「芽衣、、明日…声我慢できる?」


「えっ…///。頑張る…意地悪はしないでね」


「ふふ、それは約束できない」



芽衣が「もう///!」と言いながら腕を叩いてくる。私も今、必死に我慢をしている。芽衣が欲しくて堪らないよ。



「好きだよ」


「私も好き」



なかなか離れることのできない私達はおでこを合わせ、見つめ合い、また唇を重ねる。

芽衣の色付きリップが全部私の唇に移るまでキスをした。

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