第244話

可愛い女の子の周りを男の人が囲むなんて最低な行為だし、何で振られたら次に行こうとする努力をしないの?

恋は本人の問題であり、周りは相談に乗ることは良いとして、相手に暴力を振るったらそれは友情ではない。自己満足な正義だ。



「水希!大丈夫、、」



痛過ぎて泣きそうだよ。でも、絶対に泣かない。芽衣が余計に心配するし、悔しいから。

筒井の友達が芽衣を囲み、こんな良い奴を傷つけたと難癖付ける時点で、筒井は私の中で最低な奴でしかない。

友達を暴走させるなよ、、あんたの好きな子が怪我をしていたかもしれないんだよ!


後ろに隠れるな。あわあわして僕は別に…って言いたいの?あんたの友達が芽衣の腕を掴み、芽衣が嫌がった時点でこれは無理やりの会話だし暴力なんだよ。

野生の勘なのか、愛の力なのか、校門に探しに行って良かった。お陰で芽衣を守れた。



「違っ、、春人とちゃんと話をして欲しくて」


「ふざけないで!何で好きでもない人と話さないといけないの!絶対に許さないから!」



あー、芽衣が切れちゃった。芽衣は意外に気が強いし、短気だから怒ったら大変なのに。

それに鉄拳、ものすごく痛いからな。



「あんた達…私の妹に何をしたの、、?」


「あっ、お姉ちゃん」



あー、騒ぎを聞いたお姉ちゃんや恭子先輩達がいつのまにか校門に来ていて、お姉ちゃんがめちゃくちゃ怒っている。

こんなに怒ったお姉ちゃん、久しぶり見たしドスの効いた声の迫力が凄い。


この後が…大変だった。陸上部の部員や他の部活の部員が筒井達を取り囲み、先生も来て話し合いになり…私の左手には包帯が巻かれている。手首の捻挫をし、曲げると痛い。



「水希…ごめんね」


「気にしなくていいよ。芽衣を守れたから良かった」



本当は守ったとは少しだけ違う。芽衣が腕を掴まれているのを目撃し、急いで駆けつけて芽衣を掴んでいる手を離そうとした。

その時、「手を離せ!」って言い合いになって揉めていたら芽衣の腕を掴んでいた奴が芽衣を突き飛ばすような形になった。


きっとそんなつもりは無かったとは思う。あいつ、驚いていたし…でも、最低な奴。

私は咄嗟に芽衣を抱き寄せた。だけど、支え切れなくて一緒に倒れ込んだとき左手が芽衣とコンクリートの間に挟まれ強打した。

お陰で捻挫と肌が擦りむけ血が出たことで大ごとになり今に至る。



「あー、あいつらにも同じ制裁をしたい」


「お姉ちゃん、落ち着いてよ」


「謝罪だけじゃ許さないわ。あっちの学校に乗り込んでやりたい」



お姉ちゃんが保健室でぐるぐる回りながら怒っている。さっき、筒井達は先生達から厳重注意をされた。

他校の生徒を傷つけ、それも私の学校の校門の前だから余計に大変なことになりあっちの親がもうすぐ来るらしい。


私も大ごとになり驚いている。捻挫は痛いけど骨折はしてないし、謝罪と芽衣に二度と近づかない約束さえ出来たらと思っていた。

はぁ、、それにしても頭を悩ますことが多すぎる。筒井の下の名前を初めて知り…お陰で春が苦手になりそうだ。春が私を翻弄する。



「あー、ムカつく!ムカつく!」


「菜穂、あいつら殴りに行く?」


「恭子先輩まで、やめて下さいよ」


「可愛い後輩を傷つけられたら怒るでしょ」



2人が怪我をした私より怒っている。芽衣は私の右手を握りしめずっと心配そうな顔をする。私は意外に冷静だ、芽衣を守れたことにホッとしているのかもしれない。



「あっ、芽衣の腕…怪我してる!」


「えっ?あっ、でも小さな擦り傷だし」


「お姉ちゃん、恭子先輩、あいつらを殴りに行こう!!!」


「水希、、だ、、大丈夫だから」



芽衣の肌が傷つくなんて絶対に許せない。私の怪我の結果を他の先生達に報告しにいって、保健室の先生がいなかったからお姉ちゃんが芽衣の腕を消毒し絆創膏を貼る。

綺麗な肌が赤くなってたよ…マジで最悪だ、これじゃ全然守れてない。



「芽衣、ごめんね、、」


「気にしないで」


「守れなかった…」


「こら、水希。めそめそするな」


「だって、、」


「菜穂の言う通りよ。水希がめそめそすると芽衣ちゃんが困るでしょ」



お姉ちゃんと恭子先輩にお叱りを受け、気を引き締める。芽衣が困るのは嫌だし、情けない姿をこれ以上見せられない。

早く帰りたい。芽衣をちゃんと家まで送りたいし、怪我が治ったら筋トレの量を増やすと決めた。芽衣を支え切れなかったのが悔しいくて…体を鍛え直さないといけない。



「水希…ありがとう」


「うん、、へへ」



芽衣が横から私を抱きしめてくれて、やっと幸せを噛み締める。芽衣の温もりを感じられ、守れて良かったと心から思った。

春は暖かいな。こんな春なら大歓迎だよ。

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