第228話
壁をね、ずっと見ているとね…無の境地に達しそうになるよ。恭子先輩とお姉ちゃんが私のベッドの上に座り、芽衣とひかるとさわちんが床に座り5人で盛り上がってるけど、私の存在を忘れているよね。
これって天罰なのかな。芽衣を苦しめた罰。
せっかく芽衣とずっと一緒にいれると思ったのに、バイトが休みの日なのに、私は芽衣ではなく壁ばかり見ている。
今度、壁を磨こうかな。少しだけ汚れてる。今、、何時だろ。いつまで話すの…お腹が空いたよ。マジでお腹の音が鳴りそうだ。
みんな、何でいつも私の話で盛り上がれるのかな?何もないよ、、平凡だし話のネタになるのが不思議でたまらないよ。
暇だな、、話に入れないし聞き耳を立てることしか出来ない。本当だったら、久しぶりに芽衣の家に泊まりラブラブな展開になるはずだったのに芽衣は話に夢中だ。
「水希の優しさは罪よ。重罪よ」
「恭子先輩、同感です!」
「芽衣ちゃんが一番の犠牲者よね、、よく頑張ってるわ」
恭子先輩と芽衣がお互い共感しながら話を進める。優しさが罪って何…意味分かんない。
ひかるは頷いているし、さわちんに至っては眉間に皺を寄せている。
「みんな犠牲者なのよ。水希と仲良くなって、水希の優しさが当たり前になって、優しさの普通が分からなくなる」
「そうなの?普通じゃない…?」
「だから、菜穂は姉だからよ!」
恭子先輩がお姉ちゃんに食ってかかっている。お姉ちゃんとしては訳が分からない状態だろうね。だって、ずっと女王様だもん。
恭子先輩は未だに引きずりすぎだよ。私のせいで恋が上手くいかなかったって言ったけど、私は関係ないからね!擦りつけだよ。
「水希は人の彼女に手を出すから特にタチが悪いです。未来や未来のお婆ちゃんにも手を出して…芽衣!このタラシをどうにかしてよ」
「もう私は諦めたから無理。水希のタラシは一生治らないもん」
「田村さん、諦めた方がいいわよ」
「高瀬先輩まで…そんな、、」
あっ、嫌な予感がする。お姉ちゃんが私をチラリと見て、何かを言うつもりだって分かった。何を言うつもりなの!?冤罪が怖い!
「田村さん、水希が今年チョコを何個貰ったと思う?」
「えっ…10個ですか?」
「32個よ」
「マジですか!」
お姉ちゃん…何を言ってるの!芽衣の目が怖い。正確な数を芽衣には内緒にしてたのに。
最悪だ…殆どハピチョコだし、、理由は分からないけどチョコが好きなのが伝わってお恵みをくれたのかなって思っているのに。
「まぁ、今年の数は人気を見てたら何となく納得はするでしょ」
「はい」
「じゃ、田村さん。去年、水希はチョコをいくつ貰ったと思う?」
「中学生の時だから…5個ぐらいですか?」
「12個よ」
「えぇー!」
何でバラしたの!違うよ、去年は私がチョコが大好きだから友達が沢山くれただけだよ。
知らない子からも貰ったけど、、誤解を生むから勘弁して!ひかるは呆れた顔してるし、恭子先輩は眉間に皺を寄せてるし最悪じゃん。
「分かったでしょ。昔からだから変わらないの。友達も多かったし、全てが普通だけどなぜかモテるのよ」
これ以上、小さく丸く体育座りなんて出来ないから勘弁して。私は絶対にモテたことないし、ただチョコを少しだけ多く貰っただけ。
だけど、弁解しても言い訳だと言われそうだし…友チョコなんだから許してよ。
どうにかして壁に埋まらないかな。このまま壁と同化したい。無になりたい。
みんなの目線が怖いし痛いし、デジャブなんていらないから…しんどいよ。
この前より人数増えてるし、みんなもしかして泊まりつもりなの?絶対嫌だからね!
「田村さん…未来ちゃんにもっと自分だけを見て欲しくない?」
「それは勿論」
「未来ちゃんが水希にキャーキャー言うの腹が立つよね」
「はい!ムカつきます」
あれ、お姉ちゃんがニヤって笑った。絶対に何かを企んでいる!あの顔をした時はヤバいよ。絶対によからぬことを考えてるもん。
「5月に生徒会選挙があるんだけど、水希は生徒会長に立候補することになってるの」
「「「「えー」」」」
お姉ちゃん!何で今言うの!?みんな驚いているじゃん。芽衣も目を大きくしてるし、、それに立候補はするけど絶対に落ちるからそんなに驚かないでよ。
「田村さん、もしもよ、もし、水希が生徒会長に選ばれた時、未来ちゃんはどんな反応すると思う?」
「・・・水希!ふざけんなよ!未来を完璧に落とすつもりだろ!」
「痛いー、、意味分かんないこと言わないで。それに、一応立候補はするけど生徒会長なんてどうせ落ちるよ」
あれ…みんなの目が呆れている。お姉ちゃんは今にも高笑いしそうな感じで私を見てる。
えっ、どう言うこと…みんなは私が受かるとでも思ってるの?いや、いや、いや、、やめてよ、受かるはずないじゃん、、
「お姉ちゃん!やっぱり立候補辞める!」
「無理でーす。一度言ったことは拒否できません!絶対に立候補してもらうから」
「そんな、、酷いよー」
嫌だ、嫌だ、絶対に嫌だ!生徒会長なんてやりたくない!だけど、お姉ちゃんは絶対に私に立候補させるだろう。
私は神に願掛けするしかない。《落としてください!》と。マジで嫌だ!
「田村さん、水希に負けたくないでしょ?」
「絶対に負けたくないです!」
「だよね〜、こんな普通で平凡で笑顔しか褒める所がない水希に負けたくないよね」
「まぁ…」
さわちんが引いてるじゃん。どれだけ妹のことをボロクソ言うのよ。
我が姉ながら酷くない?そんな妹と付き合ってる可愛い芽衣に失礼だよ。芽衣も苦笑いしてるし。
「田村さん、生徒会の副会長に立候補しない?未来ちゃん、更に惚れ直すと思うよ」
「でも…」
「ほら、受かるか受からないとかなんて分からないし。それに、この前未来ちゃんと田村さんが家に来たとき助けてあげたよね?」
あっ、さわちんが悩んでいる。頭を抱えながら、ブツブツと何かを言っている。
あの日の2人の喧嘩はさわちんにとってトラウマ級に凹んだ日で、私は巻き込まれ大変な目にあった。私はいつも被害者だ。
「立候補だけでもいいですよね…?」
「勿論!私が水希と田村さんの推薦者になるわね!」
まずい!かなりまずい状況だよ!勘のいいひかるは怯えている。恭子先輩はニヤニヤして、芽衣は戸惑っている。
不穏な感じがありありとし、私とさわちんはお姉ちゃんに捕まった。怖い、、それにまだ犠牲者が出そうで怖い!
いつのまにか目に見えない蜘蛛の巣が張られ、、喰われはしないけど下僕が1人増えた。さわちんはお姉ちゃんに喧嘩の仲裁に入って貰ったから逆らうことは出来ない。
一体、あと何人犠牲者が出るの?ひかるも芽衣もお姉ちゃんには逆らえないしマジで最強の女王様すぎる。
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