第227話

あぁ、部室のドアの鍵が締められた。芽衣に低い声で「正座」と言われ急いで正座をする。何で私が怒られているんだろう…。



「水希、もう我慢の限界」


「えっ…」


「もう待たないから」


「あの、、」



痛い、、頬を芽衣の両手でパンっと叩かれグニグニとされる。顔が壊れる…力が強いよ。



「私が昨日泣いた理由を知りたい?」


「はい…」


「水希のせいでしょ!いつもと変わらない優しさで期待させて、いつまでも待たせるから」


「ごめんなさい、、」


「だから、今日で強制終了させる」



えっ、これはダメだって!私の着ているジャージを脱がそうとしてくる。ここ、部室だし無理やりジャージを引っ張らないで伸びちゃうよ。それに恥ずかしい!



「水希、動くな」


「無理だって!ここ部室だよ」


「うるさい!ジッとしろー。水希のせいじゃん。どれだけ辛かったか…」



あぁ、、芽衣が泣いている。抱きしめていいのか悩み、オロオロしていると芽衣からギュッと抱きついてきた。

やっと、私が抱きしめると芽衣が大泣きして体が震えている。ごめん…私のせいだ。



「芽衣…ごめんね」


「もう、我慢しないから…」


「うん、、」



私がまだ成長できていない、お金が溜まっていない、バイトが楽しいなど、、全て自分のことしか考えず芽衣を苦しめていた。

最低だ、大好きな彼女を泣かせて。私は馬鹿だ、大馬鹿だよ。後悔しないってあれほど思っていたのに結局後悔をしている。



「水希、、バイトが終わったら家に来て…」


「今日はバイト休みだよ」


「本当?」


「うん」



芽衣の涙で私のTシャツが濡れてる。頭を私の胸にグリグリし、甘えているのは分かるけど少し痛いかな。発展途上の胸が潰れる。



「芽衣、そろそろ戻ろうか」


「まだ、やだ」


「先輩達に怒られちゃうよ。それにもうすぐ部活が終わるし」


「うー、、離れたくない」



仕方ない。こうなったら芽衣を抱っこし、グラウンドに行こうと思った。別に見られてもいいし、このままだと恭子先輩に怒られる。

私が芽衣の腰に手を回すと、芽衣が恥ずかしながら「部室だから///」と言う。


ふふ、この感じが懐かしい。芽衣の勘違いが可愛くて、せめてキスぐらいはしたいなって思ったけどぐっと堪える。

我慢しなきゃ。こういう時、大抵お姉ちゃんにドアをドンドンと叩かれる。



「今日、芽衣の家に泊まってもいい?」


「うん、、///」



芽衣と距離を取り始めて約2週間。長いようで短い、、十分長いね。芽衣がめちゃくちゃ長かったって言ってるし。

今日、芽衣が怒ってくれなかったらきっとまだ距離をとっていた。芽衣の心の内を知らずまた苦しめることになるとこだった。


これぐらいだったらいいよねってもう一度、芽衣を抱きしめる。芽衣の体が柔らかくて、大好きな匂いが私を包む。あー、幸せだ。

今日の芽衣はいつもより小さく感じる。痩せたせいもあるけど、久しぶりだから余計に小さく感じるのかも。



「芽衣、筒井から守れなくてごめん…」


「本当だよ、、でも、私もごめん」


「それにしても筒井の奴、しつこいね」


「うん、何度も断ったのに…学校にも来ないで言ったけどまた来たからブチ切れた」


「あいつ、優しそう顔しながら中身はクズだよ。芽衣の気持ち、何も考えてない」



あー、ムカつく。自分勝手な気持ちの押し付けなんて迷惑でしか無いのに、少しでも真面目で良い奴なのかな?って思った私が馬鹿だった。一途と迷惑を履き違えている。

一途な想いは相手が嫌がったら迷惑でしか無く、自分勝手な行動なる。


だからこそ両思いはとてつもなく幸せなことで、大事にしないといけない想いだ。

好きな人が自分を好きになってくれる確率なんて低い。だから相手を大切にしないと。

私は何度もまた芽衣を泣かせてしまって、、恋人失格だけど絶対に挽回する!



「芽衣、戻ろうか」


「うん」



私達は久しぶりに笑顔で一緒に歩く。部活終わり、帰る時はいつも一緒に歩いていたけど会話や笑顔が殆どなかった。

あっ、私達に気づいたさわちんとひかるが寄ってきた。どこかホッとした顔をしている。

2人ともごめんね、ずっと心配させて。



「水希達、仲直りしたの…?」


「うん。さわちん、背中を押してくれてありがとう」


「芽衣ちゃん、良かったね」


「ひかるちゃん…ありがとう」



あぁ、また芽衣が泣き出した。2人の会話を聞いて、ひかるが芽衣にずっとアドバイスをしていたのを知った。

ダイエットや運動、バイトなど自分磨きをしたらどうかとアドバイスしていたらしい。

もう一度、私を芽衣に夢中にさせようって。



「ちょっと!水希と芽衣ちゃん…仲直りしたの?」


「うわぁ、、お姉ちゃん。ビックリした」


「どうなの!?」


「したよ」



お姉ちゃんがホッとしてる。散々迷惑を掛けちゃったから申し訳ないよ。ただ、、小声で作戦変更しなくっちゃって聞こえてきた。

どういう意味なんだろう…?水希は確保済みだし、先ずは田村さん(さわちん)で、その後は、、って何かぶつぶつと言っている。


あっ、恭子先輩も来て嬉しそうにしてる。一度も私と芽衣のことを言ってこなかったけど、私達の関係を気づてたみたい…。

みんな、優しいな。そっと見守ってくれた。話の流れで芽衣が筒井にブチ切れた話をしたらお姉ちゃんも恭子先輩も怒っていた。


そして、恋愛とは優しさとはなど哲学的な話になりなぜか私の話に移行する。マジで何で私の話になるの?

おかしいよって思っていたら、みんな私のせいで迷惑被っていると言い出し、あの優しいひかるまでもがずっと頷いている。


急に私は加害者みたいな扱いになり、みんなから責め立てられた。おかしくない?私は無罪だ!何もしていない。

冤罪で捕まった私は部活が終わった後、私の家にみんなが来て、部屋がぎゅうぎゅうで狭いのに2時間も話すことになる。



何だろ…このデジャブ。壁に寄り掛かりながら、体育座りするの久しぶりだ。

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